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2011春夏パリ・メンズコレクション 明確なテーマで説得力

2010年7月19日11時52分

写真:ディオール・オム拡大ディオール・オム

写真:ラフ・シモンズ拡大ラフ・シモンズ

写真:コムデギャルソン拡大コムデギャルソン

写真:ミハラヤスヒロ拡大ミハラヤスヒロ

写真:ヨウジヤマモト拡大ヨウジヤマモト

写真:トム・ブラウン=以上の写真はすべて大原広和氏撮影拡大トム・ブラウン=以上の写真はすべて大原広和氏撮影

写真:ヴィクター&ロルフ拡大ヴィクター&ロルフ

 6月下旬に開かれた2011年春夏のパリ・メンズコレクションは、直前のミラノのコレクションと同様、ビジネスを度外視した「作品」は影を潜めていた。だが、そこはパリ。「着られる服」の解釈の幅はミラノより多様で、ブランドの個性も浮かぶ。テーマや作り手のメッセージがはっきりした服ほど、引きつける力を持つ。

    ◇

 封筒の中で真っ白な布にくるまれていたディオール・オムの白い招待状には、かすかに「LESSNESS」というテーマがエンボス加工されていた。より少ないこと――。

 見せたのは、装飾を排した流れるようなラインのスーツの数々=写真[1]。身頃や袖は右側だけで、左側はマントのように長い布地がゆらめく上着など、アシンメトリー(非対称)な変化をつけながら、シンプルで軽やかな服に仕立てた。

 デザイナーのクリス・ヴァン・アッシュは「派手にすればゴージャスになるわけじゃない。上質な布地の美しさとカッティングに神経を集中して仕上げた」と、バックステージで息を弾ませた。名門メゾンに招かれ3年。当初は相当の重圧を感じたというが、「経済危機もあったし、僕もブランドも変わらなければならなかった。いまはいい方向に向かっている」。

 ラフ・シモンズ=写真[2]も、シンプルな意匠に意外なフォルムを与える技に切れ味を見せた。白を基調とし、袖無しの上着に極太のパンツ。上着の前後にあるファスナーについた大きな布の引き手が揺れて、効果的なアクセントになる。

 コムデギャルソン=写真[3]は、徹底してスカル(頭蓋骨(ずがいこつ))の柄を施した。その表情は花に埋もれたり、サングラスをかけたりと、実に多彩。デザイナーの川久保玲に、普通スカルには死のイメージを抱くがと聞くと、「むしろ逆です」。常に強いものを探しているという川久保は、「身体的にも、精神や気持ちの面でも、人間の体の中で一番強いところ。人生そのものでもある」と話した。

 安価で小ぎれいな服が容易に手に入るいま、こうした作り手のメッセージが一層、重要になる。ミハラヤスヒロ=写真[4]にもそれは感じた。テーマは米国の作家H・D・ソローの「森の生活」。会場には鳥の鳴き声が流れ、影絵のような森の映像が映し出される中からモデルが現れる。端正なジャケットに短丈のパーカとショートパンツを合わせるなど、「自然と現代社会を行き交う人々を描いた」という服。三原康裕は「不安や疑問を抱えて生きる現代人は多いが、豊かさとは個人の在り方次第だと伝えたかった」。

 パリ・メンズでは久しぶりにショーを開いたヨウジヤマモト=写真[5]が打ち出したのは、18世紀の紳士を思わせる着飾った男たち。メンズでは一貫してドレスダウンをテーマにしてきた山本耀司は、「今回はドレスアップにこだわった。どこでもTシャツに短パンというアメリカ的なファッションに異議を申し立てたかった」と力を込めた。

 パリ・メンズ初参加のトム・ブラウン=写真[6]の会場は、フランス共産党本部の未来的なホール。宇宙服姿で登場したモデルがその下に着ていたのはみな、着丈も袖も短い上着とショートパンツだ。トリコロールをはじめ、ブランドらしい色と柄をそろえた。

 ヴィクター&ロルフ=写真[7]は、1940年代、ハリウッドスターが休暇を過ごした頃のフランス南西部のリゾート地ビアリッツをテーマに、ショールカラーをビーズで飾ったガウンのようなジャケットをはじめ、あか抜けた雰囲気の服。また、淡く深い色調と柔らかい素材で、細かいバランスまで計算したランバンは、今季も完成度が高い。

 ほかに、喜劇王チャプリンの着こなしにエッジを利かせたジョン・ガリアーノや、明治期に来日したフランス人画家フェリックス・レガメらの旅から着想したケンゾーなど、語るべき物語がある服に、説得力があった。(菅野俊秀)

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