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着物の入門に 「和のデニム」京都の染色業者らが着想

2010年7月26日11時8分

写真:京都紋付のジーンズ。左から「黒染め」「襲(かさね)」と「紋」2点=京都市中京区拡大京都紋付のジーンズ。左から「黒染め」「襲(かさね)」と「紋」2点=京都市中京区

写真:紋付きの黒染め=京都市の京都紋付拡大紋付きの黒染め=京都市の京都紋付

写真:ポケットやベルト部分に桜などの染めを施したジーンズ=京都市下京区、京都デニムのショップ拡大ポケットやベルト部分に桜などの染めを施したジーンズ=京都市下京区、京都デニムのショップ

写真:デザイナーの桑山豊章社長=京都市下京区、京都デニムのショップ拡大デザイナーの桑山豊章社長=京都市下京区、京都デニムのショップ

 京都の和装メーカーが、和服の製造技術を使った新しい「和のデニム」を生み出している。紋付きの黒染めを応用したブラックジーンズや、すその折り返しに桜の花を染めたレディース用など。日常着を入り口に、和服の世界に親しんでほしいというねらいがある。(安部美香子)

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 京都市中京区の黒紋付き専門の染色加工会社「京都紋付」は今年1月、京黒紋付き染めの技術を生かしたブラックジーンズのブランド「BL―WHY(ビーエルホワイ)」を始めた。BLはブラック、WHYは和装、発想、洋装の頭文字。現在はメンズのみ3種類、厚地でストレートの男っぽいデニムを作る。

 「紋付きには柄がないので黒さを究めるしかなかった。より黒くする技術を他の分野に生かそうと考えた」と、荒川徹社長(51)は話す。

 より黒くする技術とは、染め上がった生地に樹脂をかける方法で、約20年前からやっている。「染色で黒くするには限界がある。表面に樹脂の膜をつくると光を吸収し、真っ黒に見える」

 同社は1915(大正4)年創業。年間約3万5千反の黒紋付き用生地を染めているが「和装のマーケットは、30〜40年前に比べて1〜2割にまで縮小した。黒染めだけでは商売にならない時代」と荒川社長は言う。

 転機は2003年。市内のアパレル会社から、綿のかばんやTシャツの黒染めを依頼された。絹以外を染めるのは初めてだったが、その後も紳士服やスポーツ用品などのブランドから依頼が相次いだ。

 細かい分業制で成り立つ和装業界だが、一工程だけを担う会社で終わりたくなかった。加工技術をブランド化しようと「御黒染司(おんくろぞめし)」を名乗り、染めを手がけた他社製品にもロゴを入れてもらった。

 デニムブランドの設立にあたっては、国産デニムの産地、岡山に学んだ。生地は岡山から仕入れ、デザインは、岡山のジーンズメーカー出身の女性が手がけている。

 3種類のジーンズは、黒さを追求した「黒染め」、デザイン化した紋をあしらった「紋」、デニム地に黒を重ねる「襲(かさね)」で各2万円台。

 本社内の販売コーナーと、市内の和柄洋品メーカーの店のほか、百貨店でも期間限定で販売し、30代を中心に売れているという。秋からはスキニーのストレッチなどレディースも始める。糸から自社で染める「色落ちしないデニム」も計画中だ。

 最終目的は、若い世代を和装に回帰させること。いずれは「BL―WHY」ブランドの和服を出し、30〜40代の男性に着てほしいという。

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 JR京都駅烏丸中央口から徒歩約5分。「京都デニム」のショップには、ピンクや黄色、紫などの花柄をあしらったかわいらしいジーンズが並ぶ。

 ポケットやすその折り返しからのぞく桜花がトレードマーク。部分的に色を抜いて花を手描きしたものや、生地全体にピンクやブルーを重ねたものなど多彩だ。ほとんどを占めるレディースのジーンズは2万円弱〜3万円台。スカートや薄手のワンピースもある。

 呉服製造・小売りの有限会社「豊明」が08年に開いた店だ。もとは江戸時代中期創業の「桑山商店」。白生地商から染色業に転じ、京友禅などフォーマルな着物の染めを得意としてきたが、04年から小売りも始めた。

 デニム素材に注目したきっかけは、染色業界の深刻な人材不足だった。桑山豊章社長(32)が、染色の技術を継承する新しい分野として思いついた。「着物の形にとらわれる必要はないと思った。デニムなら現代人が日常的に楽しめるし、着物と同じように、時間がたつことで新たな美しさが生まれる」。後からの染め直しにも応じる。

 大阪芸大でデザインを学んだ桑山社長がデザインし、営業と広報は大学の後輩の宮本和友さん(30)が担当する。

 リーバイスの原形に近づけるほどよいとされる男性用に比べ、丸みのある女性の体に合わせるデニムは難しいという。でもレディースをメーンにするのは「女性の方が、染色による多彩な色柄を感じてもらいやすいから。立体的なパターンづくり、縫い幅や糸の張り具合にも気をつかう」。

 デニムを入り口にして、若い職人がこの世界に入ってきてくれることを期待する。

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