現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. ファッション&スタイル
  4. ビューティー
  5. 記事

伊マルケ州の皮革製品の産地 職人魂 世界を駆ける

2011年2月14日12時6分

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:トッズでは厳選された革だけを使い製品が作られる=マルケ州・カゼッテ・デテ拡大トッズでは厳選された革だけを使い製品が作られる=マルケ州・カゼッテ・デテ

写真:「ラパーロ」の基礎を築いた父・フランチェスコ(右)と工場長を務める弟・パウロ=マルケ州・モンテグラナーロ拡大「ラパーロ」の基礎を築いた父・フランチェスコ(右)と工場長を務める弟・パウロ=マルケ州・モンテグラナーロ

写真:「ラパーロ」のロベルト・ラパーロ社長=フィレンツェ拡大「ラパーロ」のロベルト・ラパーロ社長=フィレンツェ

 靴やカバンなど、ラグジュアリーな皮革製品の産地として有名なイタリア。中でも、アドリア海に面し、豊かな田園風景が広がるマルケ州は、「トッズ」をはじめ、これまでに多くの高級靴・皮革ブランドを生んできた。そこには、よき伝統と高い品質を守るアルティジャーノ(職人)の精神が息づいている。

 イタリア・マルケ州のモンテグラナーロ。緑豊かな丘陵地帯の小さな町に、目指す靴メーカー「ラパーロ」の工場はあった。細い坂道を上った住宅街にある普通の一軒家だ。

 この小さな工場で産声を上げた新進ブランドが、日本はもちろん、ロシアや中東などの新興国・地域でも注目を浴びている。最大の特徴は、高い技術力をベースに生み出す独特のビンテージ感だ。

 社長のロベルト・ラパーロは「工芸品としての靴作りとファッション性を融合。高級感ある大人のカジュアルを目指している」と語る。

 ラパーロの歴史は65年前にさかのぼる。貧しい農家に生まれた父・フランチェスコが13歳で靴職人に弟子入り。1952年、地元で最も古い靴工場の共同経営者になる。ポリーニ、イヴ・サンローラン、ステファノブランキーニなど、高級ブランドのOEM(相手先ブランドによる生産)で高評価を獲得。経営は安定していたが、6年前、ロベルトが弟・パウロと共に自社ブランド生産に乗り出した。

 「ファッションビジネスの不況が言われているけど、僕らは10年前から感じていた」とロベルト。OEM先から価格交渉が相次ぎ「数年後に切られるかも」と危機感を抱いた。それならば自分たちの靴作りを、と挑戦を決めた。

 14歳で靴を作り始め、工場長を務めるパウロも「中国、インド、ルーマニアなど海外に生産拠点が移る中、従業員の生活を守るためにも、と踏み切った」と振り返る。

 伝統のグッドイヤー製法で縫った後でアッパーを裏返す「グッドイヤー・ア・ロベーショ」。アッパー縫製後に着色、収縮した革を伸ばすことで生まれるビンテージ感。「父から教わった技術から生まれた新製法」(パウロ)が世界で評価され始めた。

 従業員は家族も含め20人。生産量も1日100足だが、ミラノに直営店を出す計画も持ち上がっている。

◆輸出ブランドが集積

 マルケ州には、イタリアを代表するブランド「トッズ」の本社と工場もある。04年に完成した新工場の広さは1・6万平方メートル。1日に1万5千足を生産するイタリア最大の高級靴工場だ。

 ブランド誕生は79年。祖父が起こし、父が引き継いだ小さな靴工場を、会長兼CEOのディエゴ・デッラ・ヴァッレが一代で世界的ブランドに引き上げた。父の代には他社のOEMを請け負った時期もある。父の靴工場からブランドを立ち上げたラパーロの姿は、トッズの軌跡に重なる。

 マルケにはこの他、サントーニ、チェーザレパチョッティなど、多くの高級皮革ブランドが存在する。また、ラパーロがあるモンテグラナーロは人口1万3千人に対して、3千社もの靴関連企業があると言われる。

 州都アンコーナにあるマネジメントスクール、ISTAOのヴァレリアーノ・バッローニ副学長によると、マルケで靴作りが盛んになったのは1950年代以降。農業の自動化で人余りとなった農家の次男、三男が職人に弟子入りしたのが始まりだ。その靴をフィレンツェ商人がアメリカなどに輸出し始めた。今や輸出の7割がマルケ産という。

 なぜマルケに靴工場が集積したのか。バッローニ副学長は中世の小作制度に、その起源を求める。中部イタリアには貴族が小作人に土地を運営させ、作物を折半する分益小作制があった。そこで培われた農家の起業家精神が靴作りと結びついたという。

 「技術を持つ職人が上司に提言する伝統が生きている。これこそがイタリア人のDNA。ルネサンス期にフィレンツェで花開いた、美しさを求める伝統もマルケは受け継いだのです」(竹端直樹)

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介