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ロンドン・ファッション通信4 宝石か骨董芸術か 

2011年3月3日18時31分

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写真:クリストファー・ケイン(Christopher Kane)。素材も手法も繊細なドレス(写真はすべて大原広和氏の撮影)拡大クリストファー・ケイン(Christopher Kane)。素材も手法も繊細なドレス(写真はすべて大原広和氏の撮影)

写真:ジャイルズ(Giles)。ストイックさとボンデージを融合させたドレス拡大ジャイルズ(Giles)。ストイックさとボンデージを融合させたドレス

写真:ジャイルズ(Giles)。黒を揃えたフィナーレ拡大ジャイルズ(Giles)。黒を揃えたフィナーレ

写真:メアリー・カトランズ(Mary Katrantzou)。シノワズリを昇華させたデザインプリントに注目が集まった拡大メアリー・カトランズ(Mary Katrantzou)。シノワズリを昇華させたデザインプリントに注目が集まった

写真:メアリー・カトランズ(Mary Katrantzou)。こちらは柄を立体的に表現拡大メアリー・カトランズ(Mary Katrantzou)。こちらは柄を立体的に表現

写真:マシュー・ウィリアムソン(Matthew Williamson)。巧みな色遣いとパンチの効いたデザインが特徴拡大マシュー・ウィリアムソン(Matthew Williamson)。巧みな色遣いとパンチの効いたデザインが特徴

 ロンドン発の若手デザイナーが熱い!。2011年秋冬ロンドン・ファッション・ウイーク(LFW)は、そんな評判が今後しばらくファッションシーンを駆け巡るだろうとの印象を残して閉幕した。近年創造性が向上しているとの評判を聞き付け、取材に訪れたメディアは昨年より2割近く増えた。実際その予想は確信に変わったといえよう。(アサヒ・コム編集部 柏木友紀)

 LFWで今、最もショーのチケットが手に入れにくいともささやかれるジャイルズ。パリから再びロンドンに発表の場を移してのショーは、ゴシックのテーストを下敷きにした黒中心の荘厳なコレクション。そのコンセプトは会場として選んだヴィクトリアン・ゴシック様式の王立裁判所(1870年代の建築)と無縁ではあるまい。

 髪を大きなリボンできつく束ね、トレーンを引いて長い回廊を進む姿は修道女を彷彿(ほうふつ)とさせる。重厚なレースやファー、サテン、フェザーと素材違いで黒の魅力を引き出し、ともすればゴシックが陥りがちな古めかしさや重苦しさとは明らかに一線を画して、荘厳かつクチュール感漂うハイセンスなコレクションに仕立てた。

 「19世紀ヴィクトリア時代の厳格で禁欲的な女性像を表現したかった。一方でこの時期、フランスのサロンでは官能的な絵画も描かれていた。フェティッシュでボンデージ風の味付けはここから」とデザイナーのジャイルズ・ディーコン。19世紀イギリスの絵画『レディー ジェーン・グレイの処刑』から、純粋な乙女=正義の女神を連想し、公正を旨とする裁判所をショーの場所に選んだともいう。

 優美という言葉がふさわしかったのはメアリー・カトランズ。「生きるアート作品」とのコンセプトのもと、中国王朝の絵画やびょうぶ、ロシア帝政時代の宝石箱、マイセンの陶磁器といった古美術品の数々をびっしりとプリントに詰め込んだ。前シーズンはシャンデリアの下がった瀟洒(しょうしゃ)な邸宅を描き、スイス・テキスタイル・アワードを獲得するなど好評を得たが、今回はその邸宅内部を切り取ったという趣向だ。

 中でも乾隆帝時代の優雅な宮廷絵巻を、中国風の陶磁器模様と組みあわせたシノワズリ(中国趣味)のピースは出色。深皿や花瓶をイメージしたシェイプはドレスに程よいボリューム感を与えており、戦後すぐのオートクチュールの香りも漂う。

 英国ファッション協会などが主宰するデザイナーファッション賞を受けたクリストファー・ケインも、注目の的。透け感のあるごく薄い素材にスパンコールをつなぎ合わせた「すだれ」をかぶせ、ジュエリーのような繊細なドレスが目を引いた。

 ニューヨークから、やはりロンドンへと戻ってきたマシュー・ウィリアムソン。色を効果的に用いる得意の手法は健在で、ファーやレザーを現代的にアレンジしてパンチの効いた都会的な女性の装いを提案した。

 クチュール仕立ての構築的でエレガントなデザイン、または絵画的手法を採り入れた独創的な趣向。同じ若手の台頭といっても、リアルクローズを中心としたNYとは異なり、エッジィながらデコラティブで独創的な意匠は、モード感や職人技が光るパリ、ミラノとも趣を異にする。こんなクリエーティブ性に出会えるなら、今後またロンドンを目指すのも悪くない。

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