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日常×華麗×アート、共演 11年春夏パリ・オートクチュールコレクション

2011年5月6日

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写真:シャネル拡大シャネル

写真:バレンティノ拡大バレンティノ

写真:グスタボ・リンス拡大グスタボ・リンス

写真:クリスチャン・ディオール拡大クリスチャン・ディオール

写真:ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェ拡大ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェ

写真:イリス・ヴァン・エルペン拡大イリス・ヴァン・エルペン

写真:マキシム・シモン拡大マキシム・シモン

 3本の矢は折れない。1月下旬に開催された2011年春夏パリ・オートクチュールコレクションは、そんな格言を思わせる三つの柱を示した。デイリー(日常的)な服、ドラマチックな晴れ着、オブジェとしてのアートな服。共存するその三つのバランスに、転換期を迎えたモードの今後が暗示されているようだ。

 まず一つ目の柱である「デイリー」。日常的に着られるシンプルな形だが、素材や細部は極めて上質な服だ。その筆頭がシャネルだった。

 いかにも肌触りが良さそうな手織り風ツイードの上着とミニ丈スカート、デニムなどの極細パンツの組み合わせ。派手さはないが、シフォンのパンツにはスパンコール刺繍(ししゅう)がちりばめられ、上着の小さく丸いパフスリーブがなんとも愛らしい。色は優しいパウダーピンクやグレー。小柄なモデルがぺたんこのバレエシューズに合わせても、極上の素材と仕立てのよさが伝わってくる。「時代に沿いながら、たとえ最後の一軒になってもオートクチュールを続ける」と公言。老舗メゾンの気迫を感じさせた。

 ヴァレンティノも「日常性」をアピールした。誰にでも似合いそうな繊細なレースのブラウスやひざ丈のプリーツスカート。とはいえ、端正なプリーツは工房内での手折り。世界で唯一という80代の女性職人によるかご状の花刺繍がドレスを飾る。同グループのステファノ・サッシ最高経営責任者は「ハイレベルな着やすさこそが、今日的なラグジュアリーの方向性では」と語った。

 ジャンポール・ゴルチエのショー冒頭の作品名は、フレンチカンカンならぬ「トレンチカンカン」。トレンチコートなどの定番を、手の込んだ刺繍で風格のある一品に昇華させた。

 今回から正式会員に迎えられたブラジル出身のグスタボ・リンスも、アートのような作風から一転、着やすそうでありながらも香り立つようなフェミニンな服を並べた。京都で買ったという古い着物地を素材にしたドレス群は、着物幅をそのまま生かして立体裁断したために、思いがけない布の流れが美しい。「テーマは軽さ。重さは女性を老けさせる」とリンス。

 二つ目の柱は、アカデミー賞授賞式の赤じゅうたんに映えそうな、豪華でドラマチックな服。クリスチャン・ディオールは、スカートが広がるクリノリンドレスをキャンバスに見立て、大胆な羽根柄の刺繍を施した。ファッションイラストで名高いルネ・グリュオーの絵から発想したという躍動感のある絵柄や立体的なフォルム。そのダイナミックな華やかさは、これぞファッションのだいご味とでもいいたげだった。

 ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェのドレスも比類なきデザインだ。光沢のある未来的な生地と有機的な流線形の極細シルエット、それに宝石のカットを模した幾何学的なモチーフが不思議にマッチする。

 圧巻は、ジバンシィ。着物やガンダム、昨年亡くなった大野一雄の舞踏など、日本文化からの要素をデフォルメしながら、オートクチュールの職人技により芸術性の高い服に仕立てた。

 三つ目の、新世代デザイナーによるオブジェのような服は、歌手レディー・ガガの過激な衣装を思わせる。オランダ生まれの26歳、イリス・ヴァン・エルペンは、実際にガガの注文も受けた。素材はポリアミドの粉状の層にレーザーを当てて固めた自作の生地。ミニドレスは、アンモナイト状の大きな装飾が鎮座し、新種の生物のよう。

 その毒気と奇妙さからか、口をぽかんと開けて見入る観客もいたほど。エルペンは「私自身、いつもはシンプルな服でも、特別な場ではシンガーのような変わった物が着たいから」と話した。

 同じく1984年生まれのマキシム・シモンは印象画を思わせる色彩をエッジの利いた若々しいフォルムにのせた。

 パリ・オートクチュール協会はここ数年、厳しかった入会規則を緩和して、若手や宝飾ブランドを招いて活性化を図っている。今回は4日間の会期で約30ブランドが正式に参加、他にアラブやアフリカの新進など約20ブランドが新作を発表した。そうした策や「モードの実験場」としての発展が、オートクチュールを新たな注目すべき場にしていることは確かだ。(編集委員・高橋牧子)

◆写真は大原広和氏撮影

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