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2011年10月24日10時11分
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12年春夏パリ・コレ ロマンチック、時代に光

写真:ルイ・ヴィトン(いずれも大原広和氏撮影)拡大ルイ・ヴィトン(いずれも大原広和氏撮影)

写真:シャネル拡大シャネル

写真:コムデギャルソン拡大コムデギャルソン

写真:ドリス・ヴァン・ノッテン拡大ドリス・ヴァン・ノッテン

写真:セリーヌ拡大セリーヌ

写真:ヨウジヤマモト拡大ヨウジヤマモト

 ファッションに、新しい「優しさ」が加わった。10月初旬にかけて開かれた2012年春夏パリ・コレクションは、色や素材、形で現代性を加えた、ロマンチックな印象の服が主流になった。強くて楽観的だが、可愛らしい。暗い時代を、ほんのり照らすような、新女性像が浮かび上がる。

 開幕日の9月27日、欧州の通貨危機でユーロは対円で最安値を記録。パリの街には路上生活者の姿が増えている。そんな中、デザイナーたちは暗さに負けない、次の新しさを何とか差し出そうとしたようだ。

 幕が上がると、会場中央にゆっくりと回る白い回転木馬。ルイ・ヴィトンのショーでは、モデルたちが砂糖をまぶしたような可愛らしいレースのドレスを着て、馬の背から1人ずつ下りてきた。ふわふわの形と淡い色。前シーズンのハードなフェティッシュスタイルとは大違い。

 光を反射する薄いナイロンやコットン地を重ねて花飾りをちりばめた服は、夢心地な気分に誘う。意外性のある量感や手の込んだ刺繍(ししゅう)には工房の手技が光る。デザイナーのマーク・ジェイコブスは「ひと言でいえば、プリティー。靴の先以外はどこもハードじゃない。喜びと希望に満ちた服にしたかった」と語った。

 シャネルは会場のグラン・パレの床に白砂を敷き詰め、海底を演出。大きな貝のような口から出てくるモデルのドレスやスーツは、空気のように軽く、不思議な輝きを放つ。シリコンやセロハンといった特殊な素材のせいだ。「ウルトラ・フェミニン」がキーワードだという。

 アレキサンダー・マックイーンは、薄布を重ねてふくらませたピンクのバブルドレスがかれんだ。ジュンヤ・ワタナベも、花柄のレースのドレスを並べ、ニナ・リッチも花モチーフに徹した。

 東欧や南米の民族衣装の要素を取り入れたカルバンも愛らしかった。「不況や日本の震災など胸ふさぐことが多い。だからこそ、みずみずしい甘さをファッションに持ち込みたくて」とデザイナー。

 また、コムデギャルソンもウエディングドレスなど真っ白な作品だけを発表した。とはいっても、袖は大きな筒のように膨らみ、両手は前で縛られている。自由と不自由、純粋さと悲哀、少女と大人、強さとはかなさなど相反する要素が混在する。若手の現代美術家、名和晃平による白いヘッドドレスが時に顔全体までおおう。テーマは「白のドラマ」とデザイナーの川久保玲。喜びや悲しみなど様々あってこそ人生。それを白で表現したという。

 ドリス・ヴァン・ノッテンのおだやかな優しさが心にしみた。都会と田舎、昼と夜、具象と抽象など異なる印象の写真を組みあわせたプリントの作品群は、懐かしさと現代性のさじ加減がちょうどいい。エルメスのゆったりとした上質のスポーティースタイルは、このブランドならではの魅力だろう。

 一方、新しいシルエット作りに挑戦した例も多かった。セリーヌは肩や袖にステッチを入れて丸い曲線を作り、バレンシアガも大きな肩のボックスシルエットを見せた。「ブルジョア的な志向の再解釈」を掲げたイヴ・サンローランの、背中がふくらんだ絹のブラウスや、日本のサカイの大きく広がるAラインのコートドレスも印象的だった。

 イッセイミヤケは35歳の宮前義之による初のショー。若々しく軽やかなスポーツルックに満場の拍手が送られた。

 期間中に仏芸術文化勲章最高位のコマンドール勲章を受けた山本耀司は、彼一流のモノトーンのフォークロアスタイルを見せた。赤と白のステージ上の作品群の息をのむほど優美なラインに、改めて驚いた。

 山本の娘が手掛けるリミ・フゥは、世界の医師に向けて「日本の子供たちが助けを求めています」との旗を掲げ、放射能の影響への対応を求めた。(編集委員・高橋牧子)

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