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2011年12月12日10時26分
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和服の最高峰競う、高島屋「上品会」

:来春行われる上品会向けに、先月審査会が行われた=京都市中京区、伊藤菜々子撮影拡大来春行われる上品会向けに、先月審査会が行われた=京都市中京区、伊藤菜々子撮影

:1936年の上品会の写影帖(中央)。出品された留め袖「研庭」(左)と振り袖「錦繍載宝文」拡大1936年の上品会の写影帖(中央)。出品された留め袖「研庭」(左)と振り袖「錦繍載宝文」

:西村總左衛門・千總会長拡大西村總左衛門・千總会長

 近頃、街で着物姿の人を見かけることが増えた。和服といえば、老舗百貨店の高島屋。75年前から「上品会(じょうぼんかい)」という催しを続けてきた。最高級の着物や帯の買い付けでは「日本一」とも。「下品を切り捨て、上品の名を辱めざらむ」の精神で和服の伝統を支えている。

 「“あ”の17番、東京!」

 「“よ”の11番、大阪!」

 ピンと張りつめた空気の中、壇上の着物に向かって声がかかる。その度に、着物を作った老舗呉服会社の社員たちが「ありがとうございます」と頭を下げる。

 11月中旬、京都市内で上品会の審査会が開かれた。出品された着物や帯は、各社が1年以上、手塩にかけて作った名品ばかりだ。

 制作側が解説し、モデルが着装。高島屋各店の店長が競りのように買い付けていく。その間、1着につき5分足らず。高いもので着物は580万円、帯は380万円する高額商品の売買にしては短い。売る側も買う側も真剣勝負になる。

 「上品」とは上質なだけではなく、官の等級や種類の上下を表す。この名を冠した上品会は1936(昭和11)年に始まった。「同人(どうじん)」と呼ばれる老舗呉服業者が、織、染、繍(ぬい)、絞、絣(かすり)の染織五芸を競い合う。

 当初「染の千總(ちそう)」「帯の龍村(たつむら)」「織の矢代仁(やしろに)」の3軒が出品する会だったが、戦争を挟んで一時中断。53年の再開後、同人も増え、現在は8軒が参加する。

 上品会を上品たらしめているのは、入選作すべてを高島屋が買い取る制度だ。鈴木弘治社長は「私どもの意見を聞いて制作して頂いた着物は、最後まで責任を持つ。資金的に支援するからこそ、制作側も安心して挑戦ができる」と語る。

 大震災後の今回は「日本の歌、その心をかたちに」をテーマに腕を競い合った。紀友則(きのとものり)の和歌。坂本九の「上を向いて歩こう」や山口百恵の「いい日旅立ち」。歌詞に込められた日本人の心を、日の光が当たる雲の微妙な表情や散りゆく桜の花びらなどで表す。

 買い取られた着物や帯は4月に京都で開かれる上品会で招待客に販売される。出品図録「写影帖」を楽しみにする顧客も多い。「お客様、制作者、高島屋がお互いに信頼関係で結ばれているから、上品会は続いている」と鈴木社長。

 呉服業界を取り巻く環境は依然厳しい。長年上品会に携わる池田喜政・呉服ディビジョン長は言う。「着物はお客様が袖を通して初めて着物になる。良い物をつくれば必ず買ってくださる方はいる。結果としてお金が回ることが大切です」

■歴史語る逸品、史料館に眠る

 大阪・日本橋にある高島屋史料館には、1831(天保2)年の創業以来の歴史を物語る史料が展示されている。

 昭和初期に建てられた旧松坂屋大阪店で、外観はルネサンス様式。この一画に、かつて上品会に出品された着物や帯など約200点が眠る。

 「呉服商が前身だが、売り物はすべて無くなってしまい、現存する着物は意外に少ない。今ではできない技術も多く、極めて貴重なものばかり」(廣田元・副館長)という。

 1953(昭和28)年に再開された上品会に出品された着物を拝見した。保存状態も良く、あでやかな色が目に飛び込んできた。

 史料館では来年1月、「上品会の歩み」をテーマにした展覧会を予定している。貴重な着物や帯の数々が出展される予定だ。

■職人の技量高め合う場

 上品会について、創業1555年、友禅染の老舗・千總(ちそう)の西村總左衛門会長に話を聞いた。

 着物に関する催事として、高島屋さんの上品会が日本一であることは間違いがありません。参加する我々にも優越感があるし、お客様からの期待感もあります。

 上品会らしい着物を制作しようということで、職人たちの力の入れ方、神経の使いようも相当なもんです。図案、技術、技法。参加する同人側が頑張っても、お叱りを受けることがある。我々の腕も上がるし、業界全体が参考にする部分もある。

 「兼学向上」こそが上品会の柱。ずっと続けて頂きたいし、続けられることが高島屋さんのお力。我々も一緒に向上していければと思うております。(竹端直樹)

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