寒さは厳しいが、一部の店では早くも来春物が並び始めた。パリなど世界の主要5都市のコレクションを総括すると、13年春夏の注目トレンドは色と柄を満載した、まるで万華鏡かコラージュのようなスタイル。世界的に不安定な社会情勢や、どっちつかずの政治が続く中、せめてファッションだけでもハッピー&ポジティブに、という思いもあるようだ。
■花もヒョウも
多くのブランドが色や柄をメーンにしている背景には、流行の大きな流れも関係している。ここ数シーズン続くすっきりとしたシルエットのシンプルなスタイルに、去年秋から少しずつ色や柄がのってきて、今年春にはレースとニットなど異素材のミックスが加わった。レトロな色柄が取りえのクラシック調の復活も相まって、来春はかつてないほど新鮮な色と柄の組み合わせが目立つ。
その筆頭は、ひとつの服にチェックや花、ヒョウ、トロピカルなど多彩な柄を切り替える「コラージュ」調。ドレスやシャツ、パンツなど様々ある。エトロは東洋風の民族柄、マックスマーラは花やアニマル柄の組み合わせ。ツモリチサトやエルメス、ドルチェ&ガッバーナなどもこのタイプを手掛けている。
透けるチェックのネルシャツと厚地の花柄スカートなどを組み合わせたドリス・ヴァン・ノッテンは「色々とミックスすることで新しい何かがつかめると思った」と意図を明かした。
東京コレクションで、「1+1=3」をテーマにチェックと可愛らしい動物柄などを取り合わせたネ・ネット。デザイナーの高島一精も「去年の震災後に新しい価値観を模索する中、寄せ集めることで斬新なパワーが生まれるのではと考えた」。
J・クルーは華やかな鳥や花柄。デザイナーは「いまひとつ心が晴れない世界中の人たちを少しでも楽しませたい」。ジョルジオ・アルマーニは「万華鏡」をテーマに「様々なニュアンスが同時に存在する多面性こそ現代的」と訴えた。
■目がチカチカ
目がチカチカするような幾何学模様のオプアート柄も目立つ。四角や水玉、ストライプなどを微妙にずらすことで生まれる視覚的な錯覚を利用したスタイルで、1960年代に流行した。大胆な格子やストライプ柄を並べたルイ・ヴィトンやマーク・ジェイコブス、モスキーノやレ・コパン、イッセイミヤケなども。ボーダーの幅は太めで、水玉も大きめの方が今っぽい。
また、2色以上を合わせるカラーブロックは前季に続いて人気になりそう。青や黄、サンゴやネオンカラーなど鮮やかな色が中心だが、黒と白、黄と白など白を基調にする例も多い。
こうした色と柄は組み合わせ方が難しいのでは、との声もあるだろう。しかし、柄そのものはおなじみのものばかり。松屋銀座・東京生活研究所の関本美弥子ファッションディレクターは「トップが柄物なら、その中の明るめの1色をボトムに合わせるだけでもいい」と勧める。前から持っていたボーダーやストライプ柄の服に、同じ柄の傾き方や柄幅の違う服を合わせるだけでも新しく見えるという。(編集委員・高橋牧子)