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10年春夏パリ・コレ 久々の活気 劇的な演出やウェブ実況

2009年10月26日

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写真拡大アレキサンダー・マックイーン

写真ルイ・ヴィトン

写真拡大シャネル

写真セリーヌ

写真ハイダー・アッカーマン

写真拡大ランバン

写真ジュンヤ・ワタナベ

 久々の明るい光。10月8日まで9日間の日程で開かれた10年春夏パリ・コレクションは、景気の底をいち早く見いだすような活力を見せた。ドラマチックなショー演出が復活、それを実況中継したりインターネット配信したりするブランドが目立った。作品は、シンプルで気取らない服を自由に組み合わせた、開放感のあるスタイルが中心。一部の顧客やプロのためだけではなく、世界中の人々に着やすくてなるべく買いやすい服を発信したい、そんな姿勢が感じ取れた。高級ファッション産業界も、大きな変革期を迎えている。

 「今回は、多くのブランドがショーの意味とファッションの役割を再考した特別のシーズンだった」と、パリ・コレを主催する協会のディディエ・グランバック会長は語った。その言葉通り、どきりとするような趣向や新しいスタイルが目立った。

 アレキサンダー・マックイーンのショーは、2台のクレーン式カメラによる実況と有名写真家が編集した映像を映す舞台上の巨大スクリーンを背景に繰り広げられた。映像はウェブで同時放映も。

 作品も劇的。ミニドレスは、コブラや蛾(が)、カマキリなどの写実的な柄が丸みのあるフォルムの上をはい回り、貝やエイを思わせるフリルのうねりも。靴はまるでアルマジロ。一見グロテスクだが細部まで作り込んだ造形と美しい映像は、生物の進化を示す哲学的な物語のよう。「もっと多くの人々に僕の世界観を知ってもらうために、ネット上でより映えるやり方を考えた」とマックイーン。

 ネット放映はネット販売拡大への道も開く。

 ルイ・ヴィトンも初めてネットで生中継。ぜいたくなお出かけ風から一転、街をふらつく少年のようなカジュアルなスタイルを並べた。アフロヘアにずた袋風の大きな肩掛けバッグ、ミニドレスにはブルマーや短パン、パーカの重ね着。ビニールやデニム、ニットなどの複雑な接ぎ合わせや、スポーツやランジェリーなど様々な要素の奔放な組み合わせが楽しい。デザイナーのマーク・ジェイコブスは「テーマはニューエージ・トラベラーズ(新世代の旅人)。彼らにはすべての要素がみな同等で自由なんです」と語った。

 シャネルは、ファンタジックな舞台演出で甘い少女スタイル。ベルサイユ宮殿の離宮トリアノンにあったような小屋を舞台に再現、その周りを、花カゴを手にしたモデルたちが楽しげに練り歩いた。素朴な手編みニットのドレス、ふくらんだバルーンスカートが可愛らしい。

 90年代風のミニマリズム調が復活。シンプルさを生かしながら、当時より軽やかな女っぽさが強調された。人気デザイナー、フィービー・フィロが復帰後初めて手がけたセリーヌが筆頭格。肩の力が抜けたシンプルドレスのステラ・マッカートニー、無地の布の流れだけで圧巻の美をみせたハイダー・アッカーマンも光った。ランバンはシンプルさと装飾性の二極で職人技を披露した。

 飾りを省いてテーラードスーツを突き詰めたジュンヤ・ワタナベ、コムデギャルソンとタオ・コムデギャルソンの3ブランドは、パリ・コレの中でも抜群に質の高い独創性を見せつけた。

 新進では、洗いざらした革製などのシンプルな服を初の展示会で見せたブルゾン・ノワールが目に付いた。デザイナーがいう「細部は凝っていてクールだけれど、頑張らなくても着られる」という服が、今まさに求められているのだろう。

 経営難からパリ・コレ後に民事再生法の適用を申請したヨウジヤマモトは、センチメンタル・ジャーニーやケ・セラ・セラなどの曲を流しながら、ボディコンのスーツやぼろぼろのグランジドレスを見せた。開き直ったかのような悪女風だが、卓抜したカッティングが生む独特の優雅さは誰にもまねはできない。舞台裏で山本耀司は「古くて有名な、成功したイイ女は僕から去ってしまったからね」とおどけてみせた。

 経営と創造性の両立、シンプルの中に際立つプロの技、古くささと新しさ。次代を開く様々なシーンが明確に映し出されたシーズンだった。(編集委員・高橋牧子 写真はすべて大原広和氏撮影)

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