女スパイあり、パリジェンヌあり――。カジュアルなストリート系が代名詞とも言われてきた東京コレクション。だが2日目は、フェミニンさをためらいなく前面に打ち出すブランドが目を引いた。フリルにレース、パールにリボンと、女性らしさを象徴するモチーフをあえて過剰に用い、「おしゃれ」の原点を思い出させる試みという。
東京コレクション2010年秋冬をフォトギャラリーでパリほかコレクションページはこちらソファやピアノを配した高級ホテルのロビーで、くつろぐパリジェンヌたち。「ケイタ・マルヤマ」のショーはそんな演出で始まった。幾重にも重ねたパールのネックレスに、レイヤードスカートを揺すって歩く姿は、華やかなりし頃のレディーライクな着こなしを彷彿(ほうふつ)とさせる。ラグジュアリーでどこかミステリアスな香りが漂うのは、裏テーマが「女スパイ」だからだ。
パリでの活動が長く、久しぶりの東京での発表となったデザイナーは「クラシックなエレガンスから、ファッション本来の華やかさ豪華さ、おしゃれをする楽しさを思い出してほしい」と話す。
「モトナリ・オノ」も負けてはいない。ラッフルを重ねたブラウスやドレス、ノーカラージャケットの裏地にのぞくレースとキュートなアイテム満載だが、スリットやカッティングで大人のエレガンスを提案した。デザイナーいわく「ある意味、僕の理想の女性像かな」。
「ザ・ドレスアンドコー・ヒデアキ・サカグチ」も、パリの女性をテーマに、ニュアンスある成熟した女性像を感じさせるピースを披露した。
一方、研ぎ澄まされたエレガンスを体現して見せたのは「アグリ・サギモリ」。蝶(チョウ)が飛び立つ瞬間の美しさを切り取りたいと、標本をプリントしたレザーのドレスやコートで「刹那(せつな)的な美」を表現。得意のダークでシャープなイメージと相まって、洗練を感じさせた。(アサヒ・コム編集部 柏木友紀 写真は大原広和氏)
【2010年秋冬 東京コレクション速報】