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【バーゼルワールド2010】「メッセージ」を持つ時計

2010年3月31日

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写真拡大1)セイコーの出展ブース外観=佐田美津也撮影

写真拡大2)セイコー「ガランテ」“鉄腕アトム”限定モデル。自動巻き。ケース径45ミリ、ステンレススチール。限定150本。47万2500円(税込み)。6月25日発売予定

写真拡大3)シチズンの出展ブース外観=佐田美津也撮影

写真拡大4)シチズン「エコ・ドライブ ドーム」。エコ・ドライブ電波時計。ケース径49ミリ、チタン。世界限定500本(ブラックとホワイト2モデル各250本)。26万2500円(税込み予価)。6月10日発売予定

写真拡大5)ボール・ウォッチ「エンジニア ハイドロカーボン スペースマスター オービタル」。自動巻き。ケース径45ミリ、チタン。世界限定999本。44万5200円(税込み予価)。7月発売予定

写真拡大6)フレデリック・コンスタント「ジュニア」。自動巻き。ケース径38ミリ、ステンレススチール。8万4000円〜(税込み予価、文字の刻印込み)。6月発売予定

写真拡大7)腕時計のメーン会場、ホール1のエントランス付近。クローズする午後6時頃には、このように人だかりで一杯となる=佐田美津也撮影

 ウンチクといえばいささか語弊があるのだが、時計には背後に物語を持つものが少なくない。老舗(しにせ)ブランドでは必ずといっていいほど歴史的な伝説やロングセラーにまつわるエピソード、時計づくりにおける確固たる思想・哲学などがあり、時計好きからビギナーまで、機能や品質、デザインもさることながら、そうした物語と重ね合わせて時計を判断・評価しているといっていい。

〈バーゼルワールド2010〉フォトギャラリーはこちら

 若いブランドや新作にしても、この物語性は斬新なコンセプトや「メッセージ」という形で表現されていたりする。高級時計は価格も高額になるだけに、カタチやファッション性といった感性、あるいは機能性だけでは購買意欲につながりにくい。そこに人間を感じさせる物語や思想・哲学、さらには「メッセージ」があって初めて時計の魅力が重奏的に響くのである。

 だからこそ老舗ブランドは、自社の歴史を大切にしているわけだ。今速報のエンディングとして、そんな視点から新作をピックアップしてみた。

◆[セイコー]日本の男性よ、もっと元気に!

 1960年に誕生した「グランドセイコー」は世界トップクラスといえる高精度を実現。それが輝かしい伝説となったが、今年は発売50周年。これを記念して、スプリングドライブ、クオーツ、メカニカル2タイプ(ハイビート10振動と8振動)、合計4タイプの限定記念モデルが登場した。

 いずれもダイヤルにイエローゴールドによる獅子のエンブレムと50周年記念の英文が施されている。改めて見直しても時計としての完成度は極めて高く、世界に誇れる国産時計ではないだろうか。

 加えて、日本の男性をもっと元気にしたいというコンセプトの新作も登場した。モデルはエッジの効いた独創的なスタイルのラージウオッチ「ガランテ」。これまではスプリングドライブだったが、初めてメカニカル・ムーブメントを搭載。テンプの「鼓動」がダイヤルから見られるだけでなく、右下に大きく鉄腕アトムが描かれている。日本を覆う不景気風も「十万馬力でぶっ飛ばせ」というセイコーからの「メッセージ」である。

◆[シチズン]チャレンジ・マインドを忘れるな!

 シチズンも、世界に先駆けて電波時計を実用化。さらに、いち早くケースのフルメタル化を行った。伝説というにはまだ早いかも知れないが、金字塔と呼ぶべき実績だろう。近年はアナログ感覚の優れた操作性を備えたワールドタイマーの「ダイレクトフライト」機構が人気を集めており、新たな代表作に急成長してきた。そこで、この機構を搭載した「アテッサ ジェットセッター」でニューモデルを発表。メンズの高級コレクション「エクシード」にもダイレクトフライトが3モデル追加された。

 特に注目したいのは、昨年に発表されたコンセプトモデルをわずか1年間で「エコ・ドライブ ドーム」として実現したことだ。未来を感じさせる流線形の独創的な外観だけでなく、ダイヤル内部も極めて立体的で複雑な重層構造。時計の概念を変えてしまうような先進性が感じられる。

 今年も同様のコンセプトモデルを2タイプ発表しており、来年も最先端の時計づくりが期待できるようだ。「チャレンジ・マインドを忘れるな!」が、シチズンからの「メッセージ」といえるかもしれない。

◆[ボール・ウォッチ]宇宙に飛び、深海に潜る!

 4WDの腰高クルマを購入しても山岳ではなく街乗りするように、オトコは機能とスペックで夢を見られる生き物である。アメリカの鉄道時計をルーツとするボール・ウオッチの新作は、そんな思いに応えるように、宇宙と深海を「メッセージ」としたタフでヘビーデューティなモデルだ。

 まず、宇宙では「エンジニア ハイドロカーボン スペースマスター オービタル」。民間企業による有人宇宙飛行を世界で初めて成功させた宇宙船のパイロット、ブライアン・ビニー氏をたたえたモデルであり、新開発の耐衝撃システムが組み込まれている。ケースバックのプロペラ型のネジを回転させると自動巻きローターががっちりロックされ、衝撃からムーブメントを保護。宇宙船が地球外に飛び出す時の強力な振動とG(重力)にも耐えられるメカニズムだ。

 もう1本は、過去4度世界記録を塗り替えた若きフリーダイバー、ギョーム・ネリーに敬意を表した「エンジニア マスターII ダイバー ワールドタイム」。300メートル防水のタイバーズだが、世界24都市の時間も分かるワールドタイマーも搭載。夜光用マイクロ・ガスライトによって海中での視認性も極めて高い。

◆[フレデリック・コンストタント]父親から息子にメッセージを!

 1988年にジュネーブで創業した若いブランドだが、1994年にダイヤルからテンプの動きが見られる「ハートビート」で広く知られるようになった。近年はオースチン・ヒーリーとのコラボモデルや、木製のクラシックボート「ランナバウト」をイメージしたモデルなど、クラシカルな「乗り物」をテーマにした時計が目立つ。昨年発表した「ランナバウト」が好評だったため、今年もその新作が登場した。ボートの模型付きで1888本の限定。シリアルナンバー付き。

 ユニークなコンセプトの時計として「ジュニア」にも注目したい。これは12〜16歳の息子に贈るための機械式時計という。子供の頃からオモチャでなく本格的な時計を身に着けて欲しいということだが、帰宅がいつも遅く息子との触れ合いに乏しい父親の心理(負い目かな)に迫ってくるコンセプトだ。

 ケースバックに好きな文字を「メッセージ」として刻印できるので、高校への入学記念などにいかがだろうか。ダイヤルやストラップの種類を自由に組み合わせられるセミ・オーダー。このクオリティーにしては価格も手頃なのがうれしい。(ライター 笠木恵司)

◆アエラ・スタイル・マガジン 山本晃弘編集長から

 リーマンショック直後に開催された昨年のジュネーブサロン、そしてバーゼルワールドでは、時計業界も不況の荒波に放り出されたように見えました。約1年半が経過し、今年のバーゼルワールドの盛況ぶりをみていると、時計業界は確実に息を吹き返しつつあります。また、そうした厳しい状況を経たことで、複雑機構への過剰な傾倒や宝飾による高価格競争は一段落し、各ブランドは本来のアイデンティティーに立ち戻ろうとしています。そういった意味において、バーゼルワールドは「興奮と熱気」から脱却し、今年また仕切り直しのスタートを切ったように感じました。

 そうしたなか、我が日本のブランド、セイコーとシチズンが発表したモデルには胸を打たれました。鉄腕アトムを文字盤に配した「セイコー ガランテ」の限定モデルには、ニッポンの男性を元気づけたいというメッセージが込められています。手塚プロダクションの監修で新たに書き起こされたアトムがファイティングポーズをとる姿は、日本を代表する時計ブランドとして世界に挑むセイコーの精神とも重なって見えます。

 かたやシチズンは、今年もフューチャリスティックなデザインのコンセプトウオッチを発表。加えて、2009年のバーゼルで注目を集めた「エコ・ドライブ ドーム」を世界限定500個で商品化しました。シチズンは、COOL TOKYOが発信するデザインコンシャスな腕時計ブランドという独自のポジションを確立しつつあります。

 男性にどんな腕時計を選ぶかを問うことは、どんな男性になりたいかを問うことと、ほぼ同義だといってよいでしょう。どんな腕時計に、どんなメッセージを込めるのか……。各ブランドがそれぞれの立ち位置を明確にした2010年、今年は選びがいのある年だと思うのです。(AERA STYLE MAGAZINE)

【バーゼルワールド2010】開幕 

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