2012年10月29日10時23分
グローバル資本に染まるファッション界にあって、日本のデザイナーたちの心は内なるものに向かったのか。約50ブランドが参加した2013年春夏東京コレクション(9〜10月)は、和の伝統文化を見つめ直す姿勢が強い印象を残した。高級ブランドでもファストファッションでもない、ローカルな魅力がそこにあった。
13年春夏東京コレクション〈下〉の記事はこちら2013年春夏東京コレクション 写真特集はこちらビューティフルピープルは、映画「男はつらいよ」にひかれたというデザイナーの熊切秀典が、江戸の粋を得意のトラッドスタイルに落とし込んだ。スーツの中に祭り装束の「腹巻き」を着て、蛇革の雪駄(せった)。江戸切り子のバングルや、モダンにアレンジした「寅(とら)さんのダボシャツ」も登場した。
そこには、和をことさら強調してみせる「ジャポニスム」の趣味の悪さはみじんも感じられない。熊切は「江戸に見えなければ成功」と語った。
上着にもタイツにも曲線的な草花の柄という難度の高い組み合わせに挑んだのはソマルタ(廣川玉枝)。「和服を研究するうちに、柄と柄を合わせる技術は日本が世界一ではないかと思った」と廣川。上半身は黄、下は青といった色合わせも繊細にまとめた。
2005年のデビュー以来、日本の美意識を探求してきたまとふ(堀畑裕之、関口真希子)は今回、「転用の美」を表現した。カーテンやテーブルクロスのイメージで服の生地を作り、凝った重ね着スタイルに。堀畑は「物を使い捨てないという日本人本来のありようも示したかった」。
■服に骨があれば
「和」の要素を離れても、深い思索が見られた。アンリアレイジは、「もし洋服に骨格があるとしたら」と自問した答えを形に。レーザーで切ったポリエステルの「骨」にUV加工を施し、暗闇の中にブラックライトで浮かび上がらせた。「服を支えるのに必要なものを残し、線だけで構成した」とデザイナーの森永邦彦。
その「骨」が細く、間隔が小さくなり、ニットになる演出は、見る者をハッとさせ、拍手は際立って大きく、長かった。
また、服の「内側」を外に出したかったというのが、モトナリ・オノ(小野原誠)。裏の縫い目を表に出すイメージで、シースルーの生地に黒いラインを載せた。下に重ねて花柄のワンピースを見せたのも新鮮。意図を持ったデザインは、少女のはかなさをたたえていた。
■共通する手堅さ
ミントデザインズ(勝井北斗、八木奈央)は独特な形のワンピース。締まった前身頃で女性の意志の強さを、膨らみのある後ろ身頃で情感の豊かさを表現したという。端正なスーツの下に着た、透けるレースのブラウスなどにエロスを漂わせたヤストシ・エズミ(江角泰俊)も緊張感のあるコレクションだった。
紹介したブランドは、個性を発揮しながらも現実的でカッコイイ服ばかり。底流に手堅さを感じた。現代日本のデザイナーたちが、厳しい時代を見据えて模索を続けた結果なのだろう。(中島耕太郎)
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写真はすべて大原広和氏撮影