現在位置:asahi.com>ファッション&スタイル>08年秋冬パリ・コレクション> 記事 質素で安定の中にも、新たな造形への試み 秋冬パリコレ2008年03月17日 この秋の傾向は地味? それとも新しいシェイプ? 2月23日から3月2日まで開かれた08年秋冬パリ・コレクションは、経済不安などを背景に、質素で安定感のある服が数々見られた半面、新たに建築的な造形を試みた服も多かった。物余りが定着した中で、これまでの物づくりで突き当たった壁を、打ち破ろうとした姿勢の表れとも見える。
1900年のパリ万国博の時に建ったグランパレ。その壮麗な建築内部の会場を、イヴ・サンローランは白い布で囲ってしまった。 理由は、服の形だけを浮き彫りにするため。今回は、カッティングとシルエットにこだわった。黒やグレーなど無彩色で、髪形は無機質な80年代風テクノカット、黒のサングラスで表情を隠した。 服は一見シンプルでクラシックな感じもするが、ちょっと見たことがない形。ツイードの上にフェルトを張ってジャケットの前身頃や腰を膨らませた。特殊なカッティングのフレアスカートは不思議な角度で揺れる。このブランドの伝統であるメンズ風の服作りを継承しながら、次の形を探る新しさで群を抜いた。 いつになくこざっぱりとした、砂漠を思わせる会場で、ルイ・ヴィトンも幾何学的なシルエットの服を並べた。腰に大きなタックを取ったウールコート。抽象アートのような髪飾り。デザイナーのマーク・ジェイコブスはテーマを「シェイプ、そして、グラフィック」と説明した。 ◆腰や背中に膨らみ 建築的 最も注目されているデザイナーのひとり、ジャンバティスタ・ヴァリの新作には度肝を抜かれた。前から見ると可愛らしいドレスやダウンコートの背中が、巨大な甲虫のようにふくらんでいたからだ。「建築的な形が作りたかった。高級ブランドの服は今後、アートに近づかないと生き残れない」とヴァリは語る。 アレキサンダー・マックイーンは腰の部分を石膏(せっこう)で固めたような量感を造形した。ヨウジヤマモトは一枚革で、縫製もしないのに体をなぞる美しいドレスを見せた。ジュンヤ・ワタナベは「ジオメトリック・スカルプチャー(幾何学的彫刻)」をテーマに、単純な円と四角の布だけで構成しているのに複雑で優美なドレープが流れる服を作った。 非日常的な日常着、というテーマで新しいリアルクローズを目指したのがアンダーカバー。革ジャンなどを、これまであまり使われなかった素材を複雑な切り替えで再構成し、過去に出合ったことのないような日常着に仕立てた。 コムデギャルソンは、「悪趣味」をテーマに、あえてけばけばしく、あくの強い服を発表。「無個性より、悪趣味でも個性がある方がいい」とデザイナーの川久保玲。 ◆貴族的スタイル・「貧乏ルック」も ニューヨークやミラノに続いて、質素な感じだが、組み合わせなどで粋に見せるスタイルも多かった。地味でも物が良くて長く着られるとの意味で、「アリストクラティック(貴族的)」という形容詞がよく聞こえてきた。 筆頭がエルメス。何ひとつ過剰さのないジャケットに、ほんの少しペイズリー柄を合わせるだけで、今季らしいボヘミアンスタイルを作ってみせた。 ぼろぼろのデニムスカートに、だらりとしたセーターという「貧乏ルック」で観客を驚かせたのはシャネル。ツイードのシャネルスーツも豪華な飾りはなく、糸がほつれて垂れている。 クリスチャン・ディオールは、60人のモデルに60年代前半風の服を着せて、上品だった時代のスタイルの貴重さを強調した。 今シーズンは、自分の得意技を突き詰め、さらに一歩踏み出したブランドが魅力的に見えた。経済や地球環境への不安が増す中でも、希望を感じさせるシーズンだった。 ◇写真はすべて大原広和氏撮影 この記事の関連情報注目アイテムPick UP - ゆとりのあるライフスタイル asahi.com SHOPPING
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