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流行の服やコスメに頼らなくても……

2010年5月27日10時31分

写真:「フードマターズ」を制作したジェームス・コルフーンさんと妻のローレンティン・テン・ボッシュさん拡大「フードマターズ」を制作したジェームス・コルフーンさんと妻のローレンティン・テン・ボッシュさん

写真:荒れる農地の土壌(DVD「フードマターズ」より)拡大荒れる農地の土壌(DVD「フードマターズ」より)

 人には病を治す力、美しくなる力が備わっている。それを損なっているのが、栄養価の低い食べ物や食品添加物、薬品への依存だ。ファッション界でも痩せ過ぎの不健康なモデルが問題になっている。そんな現代社会に広がる「豊かさの中の栄養失調」の現状と適切な食べ物の取り方を、オーストラリアの若い栄養士夫婦が最先端の栄養学者や医師、自然療法医らにインタビューしてまとめたDVD映画が日本でも発売された。欧米では発売後の3カ月で6万部も売れる反響ぶりだが、来日した夫妻は「私たちが訴えたいのはとてもシンプルなことです」と話している。

 DVDのタイトルは「フードマターズ(FOOD MATTERS)」。この映画を作ったきっかけは、作者のジェームス・コルフーンさんが父親に食餌療法を薦めるためだったそうだ。父親は長年のストレスの多い仕事と典型的な西洋スタイルの食事のためか、慢性的な疲労症、うつ病などの重症になり、医師が処方する薬を大量にのんでも悪化する一方。食事の改善を説得しても「医者でも直せないのに」と聞き入れてもらえず、「世界の第一人者の人たちの言うことなら聞くのでは」と思いついたという。

 そうして始めたインタビューの結果は、彼らにとっても、現代の食生活や農業、医療の深刻な危機を示す驚きと発見に満ちたものだった。先進国のスーパーマーケットに並ぶ野菜や果物は、採れてから平均して1週間以上、中には1カ月を超すものも少なくないのに、中に含まれる栄養素は5日で4割以上も減ってしまう。そのうえ、見た目の鮮度を保つための防腐剤やワックスなどもかなり含まれていて、その成分が体の中に蓄積されていく。

 大量の化学肥料や除草剤、殺虫剤を使う現代の農法がもたらしている土壌の低下も深刻だ。食餌療法で有名なゲルソン協会の創始者で米カルフォルニア在住のシャルロット・ゲルソンさんは「人間の体にとって必要な51の栄養素のうち、今のアメリカなどの畑の土にはたった数種類しか含まれていない。これでは野菜や果物をいくら食べても必要な栄養がとれない」と語る。

 映画では9人の専門家たちが、こうした食べ物をめぐる現状や薬品と手術による対症療法に偏る現代医学の問題について語り、望ましい食べ物で十分な栄養をとることで人間の自然治癒力を高めることが必要だと主張している。

 では、どんな食べ物がよいのか? 映画では個別の病気や症状についての具体的な方法も挙げられているが、コルフーンさんは「基本は、なるべく有機栽培のもので、近くで採れた季節物の新鮮な食材を、できれば生で食べること。そしてきれいな水をたくさん飲むこと」だという。当たり前のことのようだが、現代の都市生活の中では相当自覚しないとなかなか難しいし、コストもかかる。「でも薬や診療にかかる費用と比べたら、もっとずっと安くできるのです」

 コルフーンさんの父親は数カ月のうちに体調が回復し始め、今では元気なハッピーリタイアメントを謳歌しているという。体重も20キロ減った。栄養がきちんと補えれば、体や余分な量の食べ物を必要としなくなるからだ。

 コルフーンさんの妻ローレンティンさんは、その食生活がもたらす美容効果についても強調した。「人には、流行の服やコスメに頼らなくてもその人なりの美しさを実現できる力が備わっています。高価な美容クリームを塗るくらいなら、どうして栄養たっぷりの自然食品を食べないのでしょうか」。そう語る彼女は、ほっそりとした魅力的な女性で、輝くように健康的な肌が印象的だった。

  • 上間常正氏は「朝日新聞社広告局ウェブサイト @ADV」でもコラムを執筆しています。

プロフィール

上間常正

上間 常正(うえま・つねまさ)

1947年東京生まれ。72年東京大学文学部社会学科卒後、朝日新聞社入社。事件や文化などを取材し、88年から学芸部記者としてファッションを主に担当し、海外のコレクションなどを取材。07年から文化女子大学客員教授としてメディア論、表象文化論など講義。ジャーナリストとしての活動も続けている。

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