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アロハに注目 静かに広がるハワイブーム

2010年8月19日10時41分

写真:ランド・オブ・ハワイ展の会場ランド・オブ・ハワイ展の会場

写真:日本の節句柄のアロハ日本の節句柄のアロハ

写真:写真刷りのように見えるピクチャープリント柄写真刷りのように見えるピクチャープリント柄

写真:多色染めで最も代表的とされるランド・オブ・ハワイ柄多色染めで最も代表的とされるランド・オブ・ハワイ柄

写真:人気のサーフ・ライダー柄人気のサーフ・ライダー柄

 前々回に、アメリカで人気急上昇中のアメリカ西海岸発のカジュアルブランドのことを書いた。「ゆるくておしゃれ」が人気の原因のようだが、日本ではもっと西でもっと南の「ハワイ」が数年前から静かなブームとなっている。こちらもやはり「ゆるさ」がキーワードのようだが、服だけに限らず食や音楽などの生活文化やスピリチュアルな感覚にまで関心が広がっていて、ゆるさの意味はもっと深いようだ。

 ファッションの関連でいえば、ハワイの服でまず思い浮かぶのがアロハシャツだ。ファッショントレンドにハワイやアロハが登場した記憶はないが、この夏のストリートでは色んなタイプのアロハをよく見かける。浴衣などと違って百貨店や有名セレクトショップなどに特設コーナーがあるわけでもないのに、どうしてこんなに多いのか? その理由は、アロハはそれに特価した専門店や仕立て店、通販サイトなどがたくさんあって、それぞれの好みで選ぶ人が多いからだ。

 そういう訳で、アロハはよく見ると素材や色柄がとても多様で、着こなしもなかなか個性的でこだわりを感じさせられるのだ。それは多分、アロハを単に夏のアイテムの一つとしてではなくて、アロハが象徴する「ハワイ的」なものへのそれぞれのなにがしかの思いが込められているからなのだろう。では、アロハはなぜ着る人の特別な思いを誘うのか?

 玉川高島屋で開催中の「ランド・オブ・アロハ展」(8月22日まで)は、そんなアロハの秘密を考えるヒントをいくつも与えてくれる。この展覧会では、1960年以前に作られたヴィンテージアロハ約150点を中心に、ハワイアンフードや、土を工夫して日本でも育つようにしたハワイ独自の植物などの店舗コーナーなども設けられている。歴史的なアロハが、そのパターンや年代によってハワイそのものの歴史や文化と対比して展示されている。

 アロハシャツの起源についてはいくつかの説があるようだが、それができたのは日本からの移民が始まった1868年(明治元年)以後のことで、日本人が深くかかわっていたことは事実らしい。実際に、南の異国情緒のイメージがあるはずのアロハには、和柄のモチーフや日本の風景を盛り込んだものが多いことには改めて驚かされる。解説によると、アロハの生地は日本で作られたものが多かったのだという。そしてヴィンテージアロハの生産・販売業者も日系人が多かったとのこと。

 しかし、だからといってアロハが日本的かといえば、決してそうではない。それが醸し出すのは、南太平洋の風土やポリネシアの伝統文化を基盤に日本や中国などの移民文化や入植した欧米の文化が混ぜ合わされたあくまでハワイ独自の形なのだ。とはいえ、アロハは成り立ちのころはハワイの衣装というよりは、異国情緒を求める観光客のハワイへのイメージに迎合するような色彩が強かった。アロハがハワイの生活文化を体現する生活着になるためには長い時間が必要だった。

 ハワイはいつも常夏の楽園だったわけではない。カメハメハ大王が王国を統一してから今年で200年になるが、その歴史は白人による侵略から始まる戦火にも満ちた苦難の連続でもあった。日本からの真珠湾攻撃もあった。そんな受難にも耐えて生き残ってきた、ゆったりとした生活感覚や美しい自然、それが生み出すスピリチャルな力というのがアロハの歴史の中に宿っているのだろう。

 日本では、ハワイはかつて一番近いアメリカであり、海外製品の買い物場所だったり、スノッブでエキゾチックなレジャーの場所だったりした。しかしいま静かに広がるハワイ人気は、経済や社会、自然環境などへの先行き不安が強まる中で、もっと深いハワイ的なものを求める気分が底にあるのではないかと思う。フラダンスやハワイアン音楽、ハワイアンフードへの関心の高まりも同じ気分だろう。

 プランタン銀座の地下フーズフロアに先月オープンした、ハワイのテッズ・ベーカリー製ハウピアクリームパイの店では、パイが一日1000個売れる日もあるほどの人気だという。ココナツミルクが成分でさっぱりとした甘さがあるが、その人気は単に物珍しいからというわけではないに違いない。

  • 上間常正氏は「朝日新聞社広告局ウェブサイト @ADV」でもコラムを執筆しています。

プロフィール

上間常正

上間 常正(うえま・つねまさ)

1947年東京生まれ。72年東京大学文学部社会学科卒後、朝日新聞社入社。事件や文化などを取材し、88年から学芸部記者としてファッションを主に担当し、海外のコレクションなどを取材。07年から文化女子大学客員教授としてメディア論、表象文化論など講義。ジャーナリストとしての活動も続けている。

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