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2011年9月15日10時47分
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上間常正のアッと@モード

一流モデルたちが表現したファッションと時代

上間常正

写真:リリー・コール(C)Lily Takes a Trip' Lily Cole July 2005 by Tim Walker Fashion by Stella McCartney拡大リリー・コール(C)Lily Takes a Trip' Lily Cole July 2005 by Tim Walker Fashion by Stella McCartney

写真:ジェマ・ワード(C)Good Sport' Gemma Ward April 2006 by Mario Testino Fashion by Future Classics, Lacoste and Sonia by Sonia Rykiel拡大ジェマ・ワード(C)Good Sport' Gemma Ward April 2006 by Mario Testino Fashion by Future Classics, Lacoste and Sonia by Sonia Rykiel

写真:「ヴォーグ・モデル」の表紙拡大「ヴォーグ・モデル」の表紙

 コレクションの記事では、メークには触れても個々のモデルについて書くことはほとんどなかった。時には、一人のモデルの個性や表現力が服と溶け合ってドキっとさせられることもあったが、服についてのスペースを削ってまでも書く必要があるとは思わなかったからだ。先月出版された「ヴォーグ・モデル」(Pヴァイン・ブックス、定価2940円)には、そんな記憶を呼び起こすモデルたちが何人も出ていて、何だか済まないような懐かしいような思いにかられてしまった。

 この本は、1892年に創刊されたヴォーグ誌を彩ったモデルたち97人を集めた写真図鑑で、撮影はアーヴィング・ペンやハーブ・リッツといったこちらも伝説的な一流フォトグラファーによるもの。各モデルのバラエティーに富んだ経歴や個性についての解説が写真と共にアルファベット順に編集されている。あえて時代順やタイプ別にしなかったことで、モデル一人ひとりの個人としてのあり方と時代との関わりがくっきりと浮かんでくる。

 一流モデルといえば、華やか・高収入で羨望を集める存在である一方で、虚飾と自惚れにも満ちた若いうちだけのあまり知的ではない職業だとの見方も根強い。しかし、本のページを繰っていて分かることは、モデルたちの生い立ちはまちまちだがみんなとても個性的で、それぞれなりに挫折や苦労をしながらも努力を重ねていることだ。そして興味深いのは、多くのモデルが自分の容貌についてもコンプレックスを抱いていたことだ。

 シャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドに「世界で最も美しいモデル」と言われた英国生まれのエリン・オコナーは「私はいわゆる美人じゃないから、魅力とかセクシーさを自分なりにアピールする努力が必要なの」と語っているし、国際美容形成外科学会の人気投票で最も理想的なバストと髪の持ち主とされたブラジル生まれのジゼル・ブンチェンは、身長180センチ、体重43キロの「醜いアヒルの子みたいだった」と語り、バレーボールの選手にでもなろうかと思っていたという。

 ロシアの皇帝アレキサンドル2世の孫娘だったナタリー・パレや故ダイアナ妃の親戚のステラ・テナントといった大貴族の出もあれば、ゴーリキーがロシアの悲惨な生活を描いた町で母と障害者の姉を抱えて幼いころから露天で果物を売り「朝起きてその日一日をとにかく生き延びるという生活だった」というナタリア・ヴォディアノヴァや、英国の恵まれない層から身を起こしたケイト・モスやナオミ・キャンベルもいる。

 彼女らに共通しているのは、経歴や容貌は異なっていてもそれを客観的に見つめて克服すべき条件として生かす努力を続けたことではないかと思う。たとえばナオミは、少女のころのダンスの訓練と母親との強い精神的な絆が彼女の傑出した表現力や躍動感の支えだった。以前にインタビューした時にそんな話をしたら、不機嫌でなげやりな態度で現れたのにたちまち目が輝いてきて、素直で繊細な感情に満ちた魅力的な女性に変身してしまったことを思い出した。

 この本では、一流のフォトグラファーたちがカメラを通してモデルたちのそんな魅力的な内面や個性を際立出せた瞬間をとらえている。文章を書くジャーナリストは服そのものやデザイナーの意図に関心の重点を置くのだが、フォトグラファーの眼差しはモデルもまたファッションの大事な表現者でもあることを改めて分からせてくれる。そしてそこに表現されたイメージは、一つの時代の美意識や社会的背景をも描き出しているのだ。

 同じ出版社から以前に刊行された「ヴォーグ・ファッション100年史」(リンダ・ワトソン著)は、この雑誌に掲載されたファッションのスタイルの変遷を年代別、時代別に解説している。合わせて読むと、ヴォーグというメディアの鏡に映った現代ファッションの、決して全体とはいえないとしても、その主要な側面がとてもよく整理された形で理解できる。

  • 上間常正氏は「朝日新聞社広告局ウェブサイト @ADV」でもコラムを執筆しています。

プロフィール

上間常正

上間 常正(うえま・つねまさ)

1947年東京生まれ。72年東京大学文学部社会学科卒後、朝日新聞社入社。事件や文化などを取材し、88年から学芸部記者としてファッションを主に担当し、海外のコレクションなどを取材。07年から文化女子大学客員教授としてメディア論、表象文化論など講義。ジャーナリストとしての活動も続けている。

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