2010年10月7日
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腕時計を着けないビジネスマンが増えている。彼らは「携帯電話で事足りる」と口をそろえるだろう。しかし、クライアントとのミーティング中に、時間をチェックするためにポケットの携帯電話をチラリと見るさまは、相手に不快感を与える可能性もあるといっていい。
スイスの都市バーゼルで毎年春に行われる世界的な時計見本市を取材していると、日本のブランドが海外のバイヤーやプレスに注目されていることがよくわかる。“クールジャパン”を象徴するアイテムとして、腕時計をとらえているのだ。
セイコーは主要部品を自社内で一貫生産できるマニュファクチュールとして、海外での評価も高い。「セイコー ブライツアナンタ」は、日本刀をモチーフとしたシャープなデザインに高性能ムーブメントを搭載したシリーズ。2009年9月に発売開始以来、世界中の約40カ国で販売されている。今年9月に発売された新商品では、ケースとベルトにブライトチタン素材を採用し、約40%の軽量化を実現した。
シチズンのここ数年のデザインの進化は、特筆に値する。2009年バーゼル時計見本市のシチズン会場では、TOKYOをテーマにしたフューチャリスティックな映像で、そうしたブランドの方向性を伝えていた。モニターに群がって凝視していた多くの外国人は、大友克洋の『AKIRA』や士郎正宗の『攻殻機動隊』を見ているような気分になっていたはずだ。その会場でコンセプトモデルとして発表された「エコ・ドライブ ドーム」は、発表から1年の歳月を経て2010年6月に発売。そして11月には、世界限定250個でカーボン素材を使ったモデルが発売される予定だ。独自の研磨で仕上げたケースは、まさにフューチャリスティック。コンセプトの提示だけにとどまらず、発売にまで到達したことは、評価されていい。
カシオのGショックもまた、海外ではPOPアイコンとして人気が高い。外国人のなかには、“ガンダムウオッチ”といった呼び方でGショックを語るひともいるほど。実はそのカシオもバーゼルに出展し、機械式時計とはひと味違う独自の世界観を提示している。10月に発売される「スカイコックピット」シリーズの新モデルは、最高時速370kmで飛行して旋回する、エアレースのパイロットにかかる約12Gの遠心重力でも使用できる強靱さを確保。アナログとデジタルを組み合わせた文字盤は視認性がよく、世界6局の電波を受信する正確な時刻表示もくわえて、普段使いにも申し分ない機能を持つ。
このように9月から11月にかけては、春先に行われる国際的な時計見本市で発表されたモデルを中心に新商品が次々と発売される、実りの秋といっていい季節。冬のボーナスで腕時計の購入を考えているビジネスマンには、いまから選定を始めることをおすすめしたい。
朝日新聞出版・新事業開発チームeditor at large兼 アエラスタイルマガジン編集長。
男性ファッション誌「MEN’S CLUB」や「GQ JAPAN」などの編集を手掛けた後、2008年4月の会社設立と同時に朝日新聞出版に入社。ニッポンのビジネスマンに着こなしを提案する季刊誌「アエラスタイルマガジン」を、クロスメディアで展開している。
2010年秋号 Vol.8
「The HANBOOK of BUSINESS STYLE」 2010年版 着こなしの教科書