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10代の女のコたちの間で“オジカジ”と呼ばれるファッションが流行している。ひじあて付きツイードジャケット、ちょっと大きめのレタードカーディガン、黒縁の大きな眼鏡…。そんな「オジさんっぽい」雰囲気のアイテムを、ユルく「カジュアル」に着こなすことがポイントになっているようだ。
トラッドなアイテムを自由に着こなすこうしたファッションは、“プレッピー”に端を発しているといってもいい。アイビーリーグの名門大学を目指すアメリカ東部のプレップスクールに通う学生の“プレッピー”スタイルは、1980年代初頭にメンズファッションを席巻したことがある。彼らの着こなしやライフスタイルを面白おかしく解説した「The Official Preppy Handbook」が1980年にアメリカでヒットし、日本語版も出版されたことを覚えている方もいるだろう。そして昨年の秋には、同じ作者による30年ぶりの新ルールを盛り込んだ改訂版がアメリカで出版された。家族や仲間を大切にするライフスタイルを持ちつつも、ルールにとらわれない遊び心や個性を重んじる。そんなプレッピー気質は、どうやら今の時代の気分にピタリとくるらしい。
1980年代中盤にブランドをスタートさせたトミーヒルフィガーは、プレッピースタイルを得意とするニューヨーク出身のデザイナー。今年の春夏も“Classics with a Twist”というコンセプトで、楽しい着こなしを提案している。ボートクラブのチームウエアを思わせる赤いウインドブレーカーには上品なサマーニットを合わせて、シャツの裾をあえてのぞかせてみる(写真1)。マドラスチェックのシャツにHの頭文字が印象的なレタードカーディガンをはおり、カーゴパンツは無造作にロールアップ(写真2)。ネイビージャケット、ニットタイ、ホワイトデニムといった着こなし(写真3)は、ビジネスマンにとってクールビズのお手本にもなりそう。
そして2011年秋冬のコレクションでも、トミーヒルフィガーは引き続きプレッピーなスタイルを提案。レタードカーディガンは、ハーバードレッドともいわれる秋らしいボルドー色に(写真4)。ヘリンボーン織のツイードジャケットは、アスレチックパンツでドレスダウン(写真5)。エンブレムがりりしいネイビーブレザーにはグレーのカーディガンをあわせて、リラックスした雰囲気にくずす(写真6)。
この暑さに秋冬の着こなしの話は早すぎ、というなかれ。今年は、控えめな暖房に対応したスーパーウオームビズも予想される。ジャケットの下にニットを重ねる写真6のようなコーディネートは、そんなときに役に立つはずだ。
朝日新聞出版・新事業開発チームeditor at large兼 アエラスタイルマガジン編集長。
男性ファッション誌「MEN’S CLUB」や「GQ JAPAN」などの編集を手掛けた後、2008年4月の会社設立と同時に朝日新聞出版に入社。ニッポンのビジネスマンに着こなしを提案する季刊誌「アエラスタイルマガジン」を、クロスメディアで展開している。
2011年冬号 Vol.13