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2011年10月27日10時35分
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「男の服飾モノ語り 山本晃弘」

スコット・シューマン流「おしゃれスナップ」の極意

山本晃弘

写真:東京でのスナップのために来日したスコット・シューマン。被写体を探して街を歩き
撮影する模様をおさめたムービー映像が、特設サイトから見ることができる。拡大東京でのスナップのために来日したスコット・シューマン。被写体を探して街を歩き 撮影する模様をおさめたムービー映像が、特設サイトから見ることができる。〈ムービーはこちら〉

写真:スコットのブログ「サルトリアリスト」に掲載された、ストライプスーツの洒落男のスナップ。白シャツにネイビーのソリッドタイとストイックな着こなしながら、胸元に刺したプリントのチーフがチャーミングなキャラクターをよく表している。(2010.11.17ローマにて)拡大スコットのブログ「サルトリアリスト」に掲載された、ストライプスーツの洒落男のスナップ。白シャツにネイビーのソリッドタイとストイックな着こなしながら、胸元に刺したプリントのチーフがチャーミングなキャラクターをよく表している。(2010.11.17ローマにて)

写真:同じく、ブログ「サルトリアリスト」より。赤いギンガムチェックのタイ、ブラウン×ベージュ二色のメッシュベルトと、かなりのスーツ上級者。ビジネスウエアの着こなしにもユーモアを加えることができる好例といえる。(2011.8.12 フィレンツェにて)拡大同じく、ブログ「サルトリアリスト」より。赤いギンガムチェックのタイ、ブラウン×ベージュ二色のメッシュベルトと、かなりのスーツ上級者。ビジネスウエアの着こなしにもユーモアを加えることができる好例といえる。(2011.8.12 フィレンツェにて)

写真:スコット・シューマン、夏の裏原宿でスナップ中。お眼鏡に適う被写体が現われるまで待ち続ける彼だが、いったんターゲットを見つけると機敏に追いかけて、素早く撮影を開始する。彼によると、「立ち姿だけで絵になる人は直感的に撮りたくなる」のだという。拡大スコット・シューマン、夏の裏原宿でスナップ中。お眼鏡に適う被写体が現われるまで待ち続ける彼だが、いったんターゲットを見つけると機敏に追いかけて、素早く撮影を開始する。彼によると、「立ち姿だけで絵になる人は直感的に撮りたくなる」のだという。

写真:原宿の裏通りで撮影した、タンクトップのおとこ。アイテムがシンプルでも、ここまでスタイリッシュになる。これを見ると、「ファッションではなく、その人そのものを撮っている」というスコットの言葉が納得できる。(2011.8月 東京にて)拡大原宿の裏通りで撮影した、タンクトップのおとこ。アイテムがシンプルでも、ここまでスタイリッシュになる。これを見ると、「ファッションではなく、その人そのものを撮っている」というスコットの言葉が納得できる。(2011.8月 東京にて)

写真:ファッションディレクターの赤峰幸生氏は、フィレンツェのピッティ会場でスナップ撮影したときからの知り合いだという。今回の東京でも、夏にダブルスーツを着こなす伊達な姿を撮影。(2011.8月 東京にて)拡大ファッションディレクターの赤峰幸生氏は、フィレンツェのピッティ会場でスナップ撮影したときからの知り合いだという。今回の東京でも、夏にダブルスーツを着こなす伊達な姿を撮影。(2011.8月 東京にて)

 通称、おしゃスナ。男性誌でも女性誌でも、ファッション雑誌の人気企画といえば「おしゃれスナップ」である。自分の体型から程遠いスーパーモデルが着るファッションよりも、街角のおしゃれさんの着こなしに興味が湧く読者の心理はよく理解できる。ファッションマーケットのメインストリームがモードからリアルクロージングに軸足を移していることも、スナップ企画の人気が高い理由の一つといえる。

 そんな時代の寵児となっているのが、写真家スコット・シューマンである。本拠地であるニューヨークをはじめ、パリやミラノといった世界各地で撮影したスナップを紹介する彼のブログ「サルトリアリスト」は、2005年のスタート当初から注目を集めた。その後、アメリカの雑誌TIMEから「最もデザインに影響を与えた100人」の一人として選出されるなど、高い評価を獲得。今では、世界中から毎日35万人もの人たちがブログにアクセスする文字通りのトップインフルエンサーとなっている。

 今年の夏、プリンターメーカー“ブラザー”の招聘で来日したスコット・シューマンにインタビューする機会があった。

 「私はファッションそのものを写しているわけではない。人がどんな服を選び、どう自己表現しているかに興味がある」

 こう語る彼は、日本に滞在した一週間ほどの間も、青山や原宿をくまなく歩き回って被写体を探し続けた。同行した関係者によると、平日だったこともあって、スコットの審美眼に適う人を探すのは難しかったという。ただ、見つけたときに被写体を追いかける彼の速さは相当なものだったらしい。

 「いい写真を撮るのに時間はかからない。いい人を見つけるのが大切」。これは、いつも彼が語っている持論である。

 「サルトリアリスト」のスナップを見ていて興味が湧くのは、撮影の対象が国籍、性別、年齢を問わないこと。スーツやジャケット姿のオヤジたちの写真も、頻繁に掲載されている。そこで、東京の男たちの着こなしをどう思うか、スコットに感想をたずねてみた。 「ニューヨークやパリは、女性の着こなしが目立つ街。それに比べると、東京は男たちの街といっていい」

 世界中の伊達男を撮影し続けてきた写真家の言葉だけに、日本の男性諸氏は勇気が湧くことだろう。そして、続いてこんな発言も飛び出した。

 「原宿の裏通りで多く見かけた、アウトドアのアイテムを上手に着こなした男たち。あれは、東京ならではのファッションだと思う。ただ、スーツ姿になると、いきなり硬くなり過ぎる傾向がある。スーツのストライプ柄の違いや素材の肌触りを考えることは、本来はとてもクリエイティブなこと。例えば着こなしに小物を加えるなど、ビジネスウエアにも、適度なユーモアがあっていい」

 スーツは制服の延長であると、とかくネガティブに捉えてしまう日本の男たちの特徴を、実に的確に指摘している。クールビズやウォームビズといった掛け声に乗って単にネクタイを外すだけではなく、ビジネスウエアの着こなしをもっともっと楽しめるようになりたいものである。

プロフィール

山本 晃弘(やまもと・てるひろ)

朝日新聞出版・新事業開発チームeditor at large兼 アエラスタイルマガジン編集長。

男性ファッション誌「MEN’S CLUB」や「GQ JAPAN」などの編集を手掛けた後、2008年4月の会社設立と同時に朝日新聞出版に入社。ニッポンのビジネスマンに着こなしを提案する季刊誌「アエラスタイルマガジン」を、クロスメディアで展開している。

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「一般のビジネスマンにファッションの楽しさを改めて知ってもらいたい」―― そんな思いの下、AERAの別冊として、2008年11月に季刊として創刊しました。 ハイクオリティなビジュアルと、アエラ別冊ならではの知的な読み物が共存した誌面は、 ビジネスマン読者の共感を呼んでいます。

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