「11月23日からの3連休が勝負」。ファッションや百貨店関係者の何人もから、同じせりふを聞いた。冬のボーナス商戦のスタートとなるこの週末の売り上げは、今期の業績を左右するほど大事な位置づけなのだという。
翻ってこの時期に消費者の声を聞くと、コートが欲しいという意見が多い。大手マーケティング会社を通じて丸の内ビジネスマン100人に行ったアンケートでは、「今年の冬にビジネス用に購入したいアイテムは何ですか」(複数回答)という問いに、40%がコートと答えている。これは、スーツ57%、シューズ56%に次ぐ高い数字であり、暖冬でコートが売れないといわれたここ数年の傾向と確実に一線を画している。
さらに欲しいコートのデザインを問うと、意外にも47%がチェスターフィールドコートを選択した。おそらく、これには二つの理由が考えられる。第一の理由としては、機能性を重視したコートの人気が一段落して、クラシックなデザインのコートに再び注目が集まっていること。第二の理由としては、以前は「重い」と敬遠されてきたウールのコートが、素材や縫製の進化によって格段に「軽く」なったことである。
現在発売中のアエラスタイルマガジン最新号では、丸の内で働くビジネスマンに仕事でのニーズやパーソナルな好みを聞きながら、それぞれにおすすめのコートをコンサルティングしている。
三菱商事に勤める林賢治さん(写真1)の希望は、「25歳で部署いちばんの若手なので、目立ちすぎないように落ち着いたスタイルを心がけたい」というもの。そこで編集部では、ビジネスマンアンケートでも最も人気の高かったチェスターフィールドコートをおすすめした。グレーのヘリンボーン柄で、大人っぽい雰囲気をまとうことに成功している。最近では、肩パッドや裏地を排除した一枚仕立てのチェスターフィールドコート(写真3)もあり、スーツに羽織ったときの軽い着心地はお墨付き。
外資系PR会社ホフマン ジャパンの野村信吾さん(写真4)は出張が多いお仕事柄、「取り扱いに気をつかわなくて済むコート」を希望された。その条件にこたえるべく編集部が用意したのは、軽量ナイロン素材のトレンチコート。「着ている感覚がないくらい」と、その軽さに驚きの表情。ナイロン素材なら、しわもそれほど気にならない。折りたたんで持ち運びできる専用袋がついたナイロンのバルカラーコート(写真5)も、候補に挙がった。
せっかく購入するなら、寒いシーズンに加えて梅雨時にも着られるものを選びたい。そんなリアルな希望を持つビジネスマンも多いだろう。そんなときにおすすめしたいのが、コートの内側についたライニングの取り外しができるタイプ(写真6、写真7)。保温性を調節して、3シーズン活躍してくれる。
先に述べた丸の内ビジネスマン100人アンケートによると、「コートやバッグで着こなしがランクアップすると思いますか?」という問いに対して、81%がYESと答えている。コートは、防寒のためだけにあるのではない。男のビジネスウエアに品と格をもたらせる、大切な役割を担っているのである。
朝日新聞出版・カスタム出版チームeditor at large兼 アエラスタイルマガジン編集長。
男性ファッション誌「MEN’S CLUB」や「GQ JAPAN」などの編集を手掛けた後、2008年4月の会社設立と同時に朝日新聞出版に入社。ニッポンのビジネスマンに着こなしを提案する季刊誌「アエラスタイルマガジン」を、クロスメディアで展開している。
2012年冬号 Vol.17