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人を笑顔にする仕事を

2011年4月1日

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 高層ビルの中層階で仮縫い中、一瞬めまいか?と感じた。それが東日本大震災の瞬間だった。ビルの外へ出るための狭い避難用階段で再び大きな余震を感じた時、被害が最小であることを祈りながら様々な思いが浮かんだ。

 大自然の力の前に人間は無力だった。しかし、再生の時に集結される人の創造の力には限りがない。その時、自分はどんな役割を果たすことができるか。今、日本人全員が思っていることだろう。

 先輩方は日本のものづくりの環境が整っていない時代の中、今を築き上げてこられた。最近、現場から、気がつけば言い訳と嘆きの言葉ばかりが聞こえる。自分自身もつい愚痴る。つくづく甘いと思う。クリエーターが楽なものづくりの環境を求め、相手から歩み寄ってくることを期待するような気持ちでは再生の道は遠い。

 厳しい状況におかれた時こそ出てくるアイデアもある。以前海外の記者から「あなたの服はどんな人たちのために作っているの?」と質問された。「世界の都市で生活している人」と答えた。すると「都市以外にも、様々な環境に住む人々が地球に住んでいます。なぜより多くの人たちのために服をつくろうとしないのですか?」。その問いに答えられなかった時のことを今も鮮明に覚えている。

 私の師である三宅一生氏はデザインを通じて人々に笑顔を、そして生活をよりよくしたいという思いで、日本のものづくりの環境を切り開いてこられている。覚悟なくしてできる仕事ではないと思う。この欄で2年間書かせていただいたことも、三宅氏からの学びなくして得られた視点ではない。

 これからの時代がどんなに厳しい環境になろうと、先輩たちが築いた今日をさらに前に進め、多くの人の生活を豊かに、そして笑顔にする仕事をしていくという覚悟ができているか? 自分に問う。

(ファッションデザイナー)

◆「ものづくりのテーブル」は今回で終わります。

プロフィール

滝沢直己(たきざわ・なおき)

60年東京生まれ。イッセイミヤケのデザイナーを経て06年に独立。

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