現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. ファッション&スタイル
  4. コラム
  5. 川上未映子 おめかしの引力
  6. 記事

求む、ブラジャー革命

2011年8月5日

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

 夏である。みんなは水着とかお召しになって、海や恋人と戯れたり、プールサイドにうふんなんて言って寝そべったりするのだろうか。わたしそんなのしたことない。そして今年ももちろんしない。

 わたしにとって夏といえばひたすらにブラジャーとの闘いだ。や、正しくは乳首とともに世間と闘う、という構図が正しいのだが、なぜ日本では乳首が透けた状態で外出することにこれほど強力な抑圧がかかっているのだろう。理由も解除の方法もよくわからないままに、わたしも何となく乳首の存在を感じさせない方向で生きてしまっているのが情けない。

 猛暑のブラジャーは苦しい。もちろん下着の楽しみや、形の維持のために好んでつける女子もおられようが、つけずに生活したいときもある。ちょっとコンビニへ、ってなときにちっと舌打ちしてブラジャーを装着せねばならぬ忌々(いまいま)しさ。何かに遠慮している感じ。自己規制の可能性もさることながら、やっぱり何かに気を遣(つか)ってる。誰に?世間に。世間て?男性?そんなもん見てないよ!とおっしゃる男性もおられるだろうが、そこに乳首が浮かんであれば、やっぱり見る人も多いだろう。

 どうすれば諸外国のように全方位に「乳首耐性」がつくのだろう。隗(かい)より始めよってことで、まずわたしが透け透けの状態で堂々と講演とかサイン会とかするべきだろうか。しかし「あの作家頭おかしいね」で終わりな予感も。何より人が去ってゆく。問題はこんな懸念が生まれることじたいであって、なんでこんなところでつまずいているのか、謎である。

 象徴としてのブラジャーではなく、実存としてのブラジャーの気まぐれ撤廃を求むる気持ち。日本同時多発ブラジャー革命とか起きないかなー。着物からミニスカートまでやってきたのだから、やればできると思うのだけれど。あと3回くらいこの話したいよ!(作家)

プロフィール

川上未映子(かわかみ・みえこ)

作家。76年生まれ。08年「乳と卵」で芥川賞受賞。歌手としても活動する。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介