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レディー・ガガに思う ファッションは芸術か否か… 

2010年4月22日16時37分

写真:成田空港に到着したレディー・ガガ=13日、AP拡大成田空港に到着したレディー・ガガ=13日、AP

写真:パリの装飾美術館で展示されたマドレーヌ・ヴィオネの作品。ドレープが美しい=09年7月、AP拡大パリの装飾美術館で展示されたマドレーヌ・ヴィオネの作品。ドレープが美しい=09年7月、AP

写真:マドレーヌ・ヴィオネ展から=09年7月、AP拡大マドレーヌ・ヴィオネ展から=09年7月、AP

写真:「SOMARTA」。2010年秋冬・東京コレクションから=大原広和氏撮影拡大「SOMARTA」。2010年秋冬・東京コレクションから=大原広和氏撮影

写真:提携するバンタンデザイン研究所の招きで来日した、パーソンズ大のパメラ・クライン学部長(左)。同大の小川吉三郎教授とともに=今年1月、東京都渋谷区で拡大提携するバンタンデザイン研究所の招きで来日した、パーソンズ大のパメラ・クライン学部長(左)。同大の小川吉三郎教授とともに=今年1月、東京都渋谷区で

 レディー・ガガが来日した。長時間フライトの疲れも見せず、成田に降り立った瞬間から裃(かみしも)を連想させる構築的なスーツでポーズ、エルメスの白いバーキンには、黒マジックで「東京ラブ」の落書き……と、期待を裏切らない登場ぶりだった。

祝来日! レディ・ガガの最新ファッション速報!

 アレクサンダー・マックイーンやマーク・ジェイコブスなど、前衛的なブランドを着こなすだけでなく、奇抜なアレンジでも知られるファッションアイコン。最近のいでたちは、当ページの企画コーナー「asahi.com×VOGUE 祝来日! レディー・ガガの最新ファッション速報!」に譲るとして、今回もコンサートでは、もはや本人とは見分けがつかない、衣装というより舞台装置(?)を背負って歌っていたと聞く。歌番組には身長の3分の1はあろうかというクモの足のようなヘッドドレスをかぶって出演していた。あの髪形で、いったいどうやって車に乗るのだろう?

 ちまたでは、彼女そのものがアートの域と評される。ファッションを超えた存在とも。と、ここで突き当たるのが、ファッションとは、もともとアート=芸術ではなかったのか、という長年の疑問だ。確かに、ファッション=「衣服」と思えば、生活必需品であるし、大量生産される商業品といえる。ユニクロなどの「ファストファッション」に度々長蛇の列ができる現象も、商業的側面を強調する。

 だが、デザイナーやコレクションなどの取材を通じて、その成り立ちや完成までの工程を知れば知るほど、単なる必需品を超えた、独創的で芸術的なクリエーティビティーに感じ入ること多々なのである。最近、「やはり芸術なのでは」と、しみじみ思い至った事例がある。

 今年1月末まで、パリの装飾美術館で開かれていたマドレーヌ・ヴィオネの展覧会。バイアス・カットの技法を開発し、ドレープの美しさと相まって20世紀モードの巨星と呼ばれたが、薄明かりの中に浮かぶドレスは、ひとつひとつが芸術作品と呼ぶに値する華麗さだった。

 豪華さや洗練を追究しつつ体に見事にフィットし、身体のラインを美しく見せるための細かな工夫が施されている。細密な刺繍(ししゅう)やレースなどは気の遠くなるような針仕事だ。それでいて、日本のキモノに着想を得たという「一枚の布」からパターンをおこした平面的なドレスなど、「アイデアの宝庫」と呼ばれるほど、斬新さも忘れていない。

 後世のデザイナーたちに及ぼした影響は計り知れない。ジョン・ガリアーノ(現ディオールのデザイナー)、カール・ラガーフェルド(同シャネル)をはじめ、日本でも三宅一生が「一枚の布」をヒントにしたブランドを立ち上げている。その余波たるや、絵画の世界でいえば、まるで20世紀美術におけるピカソ(!)、といえるほどなのだ。

 絵画に勝るとも劣らないデザイナーの斬新なコンセプトや手仕事は、なにも大ブランドに限らない。3月末の東京コレクションでも、若手デザイナーのクリエーティブ性と精密な技術にファッションへの思いを新たにした。

 蝶(ちょう)が飛び立つ瞬間の躍動感や刹那(せつな)的な美を表現したいと、撮りためた蝶の写真をレザーなどにプリントでコーティングした鷺森アグリはまだ24歳。日本の美意識をカラー、シェイプ、織りと様々なアプローチで現代の衣服へと昇華させている「まとふ」。そして伸縮自在の無縫製のニットと毎回凝ったテーマで身体の美を追究しているソマルタ。今回の来日では、ガガもここのドレスをまとったという。

 「ファッションをアートと見ない向きがあるのは、受容する側、つまり買う方に目が行き過ぎているのではないか」

 そういえば今年1月の取材で、ニューヨークのファッション大学パーソンズのパメラ・クライン学部長が、こんなことを語っていたのを思い出す。ファッションを大学教育と位置付け、ダナ・キャランにマーク・ジェイコブスと数々の人気デザイナーが輩出した名門なのだが、時にこんな不満を覚えるのだという。

 NYといえば、ガガを生んだのもこの街。ファッションが金融に次ぐ主要産業というファッションビジネスのメッカである。コレクションも商業主義との批判を受けることもあるが、「ビジネスとして成り立っているからといって、クリエーティブ性が減ずるとは全く思わない」と反論していた。

 テレビやネットのエンタメ情報でガガの奇抜なスタイルを目にする度に、ファッションの物思いにふけった1週間だった。

プロフィール

柏木友紀(かしわぎ・ゆき)

asahi.comファッション&スタイルページのエディター。

朝日新聞社入社から10ウン年、社会部、アエラ編集部、文化部を経て、09年10月より現職。メディアとファッションなどを主に担当してきた。

3度の食事と4歳になる息子、の次ぐらいにファッションは気にかかるが、生来の面倒くさがりのため、ラクして美しくなれる方法はないものかと思案中。

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