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日本のヘアサロンは世界一?

2010年5月20日14時2分

写真:グリーンをテーマにした「ロッソ」(Rosso)のショー=渋谷区のベルエポック美容専門学校で拡大グリーンをテーマにした「ロッソ」(Rosso)のショー=渋谷区のベルエポック美容専門学校で

写真:ドライカットの手さばきは芸術的=同拡大ドライカットの手さばきは芸術的=同

 「髪を切らせてもらえませんか?」

 表参道あたりを歩いていると、時折こう呼び止められることがある。暖かくなってきたからか、先日久しぶりに声をかけられた。美容師を目指しているという。実は何かのキャッチセールスかもしれないし、本当に美容師の卵だとしても、若くもないオーディナリーな人間にまで声をかけるなんて、「実験台」がいなくて苦労しているのね、と少し気の毒になる。

 残念ながらカットモデルになったことはないが、思えばこの表参道・原宿周辺、本当にヘアサロンが多い。エステティックやネイルも合わせれば、美容サロンの数は飲食店数に届くのではないかと思われるほどだ。その中から、人気の五つのヘアサロンによる合同ヘアショーが先日、原宿で開かれた。

 場所はベルエポック美容専門学校。同校OBの美容師も少なくないことから、「BEAUTRIUM(ビュートリアム)」、「boy(ボウイ)」、「HEAVENS(ヘブンズ)、「MINX(ミンクス)」、「ROSSO(ロッソ)」の5サロンから、若手のスタイリストらが集合し、学生向けに開いているもので、今年で3回目という。今回、たまたま行きつけのサロンのスタイリストが登場することから、お誘いを受けた。

 その場でモデルの髪をカットしたり,セットで仕上げたり。その様子をただ見せるだけでなく、ランウエーさながらの舞台やBGM、照明などで、過程そのものを「ショー」にしてしまおうという演出だった。即興でチョキチョキとハサミを入れ、髪形をキメていく様子は、まるでマジックかパントマイムを見ているよう。完成後はファッションショーにもなっていて、なかなか工夫されている。

 世話人であるヘブンズの関上潤さんは「年に1度のお祭りみたいなもの」という。企画やヘアスタイルはもちろん、装置から照明まで、すべて手作りだ。「若手美容師に、自分で動いてまずはやってみることを伝えたい。サロンワークは下積みも長いし、実は地味な仕事が多い。華やかな場をたまには経験させたいですし」。日頃は競合しているサロンが一堂に会し、他社の手法やアイデアに触れることは、いい刺激にもなる。

 学生たちの高揚したまなざしも印象的だった。目指す仕事の理想形がここにある…と言わんばかり。この先、一人前にハサミを握るまでに長い年月が待っていようと、シャンプーやパーマ液でしびれるほど手が荒れようとも、ここでこうしてハレの場を目にしたことは、将来の原動力になることだろう。

 関上さんはいう。「ここ原宿・表参道・青山はファッションやヘアメークの街。ここで働くものとして、元気を発信していきたいとの思いもある」

 日本のヘアスタイルの技術は、こんな所からボトムアップされているのだなあ。実際、日本のヘアサロンの水準は世界的にも非常に高いとはよく聞く。海外の友人の話や、自らの少ない経験でも、技術はもちろん接客や施設の充実も含め、この日本に慣れてしまうと、他国ではなかなかヘアサロンには行けない。

 思い出されるのは以前、ロンドンに住んでいた時の苦い経験。世界的に名の通ったサロンに出かけたが、カットは散切り、強過ぎるパーマ液で髪はチリチリ、地肌も荒れた。日本では水平になるまで倒してくれるシャンプー台も、背筋を伸ばしてほぼ直立のまま首だけ90度後ろに倒され、あやうく攣(つ)りそうに。極めつきは、ドライヤーでのブロー時は、自ら腰を追って頭を下向きにし、自分で頭をかきむしるように言われたこと。

 西欧人の毛はもともと猫っ毛で、ボリュームを出すためにはこうしてブローするのが普通、散切りも軟らかいブロンドならサマになるのだ、と後から分かるのだが、毛質が違うのだから違う対応をしてもらわないとねえ。

 これで料金は表参道辺りのサロンのザッと2倍以上。もちろん肩や首のマッサージもなし。しかも飛び散った髪の毛で服は毛だらけになった。ケープがタオル程度なのである。その後、ロンドンだけかと思い、懲りずにパリやNYでも有名サロンで試してみたが(パーマは怖くてやっていない)、似たりよったりだった。

 表参道で修業中の若き美容師の卵たち。この持ち前の器用さと、サービス精神は、そのうち世界への立派な輸出産業となります。がんばれ!。

プロフィール

柏木友紀(かしわぎ・ゆき)

asahi.comファッション&スタイルページのエディター。

朝日新聞社入社から10ウン年、社会部、アエラ編集部、文化部を経て、09年10月より現職。メディアとファッションなどを主に担当してきた。

3度の食事と4歳になる息子、の次ぐらいにファッションは気にかかるが、生来の面倒くさがりのため、ラクして美しくなれる方法はないものかと思案中。

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