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「フツーがステキ!」 読者モデル考

2011年2月2日

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写真:最近は、ジュエリーやTシャツのデザインなども手がけている。アレキサンダー・ワンや、ヴァネッサ・ブリューノなどのブランドを、手頃な服と組み合わせるスタイリングが好き。拡大最近は、ジュエリーやTシャツのデザインなども手がけている。アレキサンダー・ワンや、ヴァネッサ・ブリューノなどのブランドを、手頃な服と組み合わせるスタイリングが好き。

写真:ブログを更新する度、読者からの書き込みが100を超えるという人気ぶり。著名ブロガーのブライアン・ボーイらとも、密に連絡を取り合う拡大ブログを更新する度、読者からの書き込みが100を超えるという人気ぶり。著名ブロガーのブライアン・ボーイらとも、密に連絡を取り合う

 昨今のファッション関連イベントで欠かせないのが「読者モデル」という存在。東京ガールズ・コレクションなどのギャル系イベントでは、小森純、益若つばさ、舟山久美子といった「読者モデル」またはその「出身者」らがランウエーを席巻しているし、化粧品や衣料ブランドの新作発表会などでもイメージガールに起用されている。

 テレビのバラエティー番組でも「読モ」たちを目にする機会が増えたなあと思っていたら、昨年秋からはとうとう日本テレビ系でレギュラー番組「読モ!」まで始まった。深夜の30分枠ながら、30人ほどの読者モデルたちが、ファッションやグルメ情報をきままにトークする「女子会」という設定。彼女たちの時々の服装は、「ファッション・チェック」と題して、靴下からヘアクリップに至るまで、実に細かく紹介される。

 「Cancam」「Popteen」「25ans(ヴァンサンカン)」など、ギャル系、お嬢様系を問わず様々なファッション雑誌で「一般読者」として登場するモデルたち。「素人」としてくくられてはいるが、そこから専属モデル契約に至ったり芸能界へデビューしたりするのはもちろん、既に芸能事務所やエージェンシーと契約しているいわば「プロ」も、素人っぽさや親しみやすさを売りに、あえて「読モ」と名乗る逆転現象もおきているという。自身のブログで、身の回りの出来事を発信しているのも特徴だ。

 「なぜ私が有名になったのか、全然分からないの」。いま、全米で最も有名な読者モデルともいわれるルミ・ニーリー(RUMI NEELY)に昨年末、取材した時、彼女が最初に発したのはこの言葉だった。着こなしなどを提案する読者モデルとして、日米のファッション雑誌に多く登場。彼女のブログ「fashiontoast」へは一日あたり4万ものアクセスがあり、ツイッターのフォロワー数も3万人を超えるほどになった。

 2007年8月のブログ開設から3年余り。サンディエゴ在住だが、ニューヨークやLA、母親のルーツのある日本など、今では各地を飛び回る。日常のファッション、旅先での思い出、ブログ仲間とのやりとりなどを気ままにつづる。「住んでいるのがニューヨークのような大都会ではないので、周囲にファッション好きな人があまりいなかった。だから個人的日記みたいに始めたブログが、ここまでみんなに読んでもらえるようになるなんて」

 自身でタイマー撮影したり、ボーイフレンドに撮ってもらったりした写真をアップしていたが、今では「ELLE」「VOGUE」といったモード系雑誌も、プロカメラマンが彼女を撮影した写真を掲載するようになった。「Forever21」の広告モデルなども務める。

 「私自身の個人的趣味を気ままブログに書いているだけ。決して激しくはないし、ナチュラルで親しみやすく、まるで友達としゃべっているかのよう。私の世界観への招待状みたいな感じかな」

 確かに、話し方もそのしぐさからも、タレントやいわゆるファッションモデルの取材などで感じる独特の「隔たり」というか、「距離」を全く感じさせない。この日の装いも至ってラフ。もちろん洗練されてはいるが、ローゲージのニットをレザーのパンツにサラッと合わせた姿に気負いはない。3台のPCを操ってネットサーフィンやSNSに興じる様子はカリスマモデルというより、友人を通り越しルームメートぐらいの身近な存在に思えてくる。

 自然体でリアル。超高級ブランドのバッグも時折は買うが、普段はファストファッションを着回し、新しい靴を履けば鏡の前で、庭で路地裏で、こっそりポーズを取ってしまう。それを、友達に「見て見て」とちょこっと送ってみるという感覚。今風に言えば「フツーに(ツーにアクセント!)」我々の生活圏内に存在している人が、「カリスマ」なのである。

 読者モデルそれ自体は、「ヴァンサンカン」からブレークした叶姉妹のように、以前からあった。その彼女たちに美しさや憧れを見る時、自分たちとの間には決然とした「溝」があった。胸を強調したドレス、きらびやかな毛皮に宝石と、「別世界の人」「選ばれた人」と感じさせるために、あえて様々な演出を施し「特別感」を醸し出していた。

 だが、その溝や垣根を全く取り払った昨今の「読モ」は、逆に「フツーである」ことが最大の価値になっているのだから、世の中分からないものである。フツーがステキ、フツーにキレイ。そこからは飛び抜けた存在にはならずとも、今の自分、等身大の自分をちょっぴりキレイにしたいという「ささやかな」願望が見てとれる。

 前衛的、突き抜けた感、または他人とは違う自分を演出するために存在してきたファッションの歴史に、新たな一ページが加わりつつあるのを感じずにはいられない。

プロフィール

柏木友紀(かしわぎ・ゆき)

asahi.comファッション&スタイルページのエディター。

朝日新聞社入社から10ウン年、社会部、アエラ編集部、文化部を経て、09年10月より現職。メディアとファッションなどを主に担当してきた。

3度の食事と4歳になる息子、の次ぐらいにファッションは気にかかるが、生来の面倒くさがりのため、ラクして美しくなれる方法はないものかと思案中。

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