パリコレも終わって、そろそろNYでは来シーズンの撮影が忙しくなる頃。そのために僕も先週、マンハッタンに戻って来ました。暖秋の東京と違ってすでに肌寒く、街ではファッショナブルな秋が進行中です。女性たちは秋物のファッションや化粧品のショッピングも落ち着いて、お洒落モードにスイッチオン! という感じ。
そんなNYの女性たちですが、グローバルな流行は世界共通でも「ところ変われば……」で、トレンドファッションやメイクも東京とはひと味違うようです。そのメイクの秋冬トレンド、ご紹介したいと思います。
■トレンド1 リップがメイクの主役
ここ、ニューヨークでは、少し前から印象の強い「鮮やかリップ」が人気です。いろんなブランドから秋の新色として鮮やかな色が登場しました。その中で、人気の色はなんといっても赤! 好みによって、セクシー、フェミニン風を目指すなら艶レッド、モードっぽく仕上げるなら艶消しレッド。明るい赤から深い赤まで個性とファッションに合わせたいろんな赤のリップの女性たちを見かけます。
この赤いリップのトレンドは、日本でも注目されているようですが、NYほどの盛り上がりは、まだないようですね。日本の女性に赤のリップは、どうしても「和風」や「きもの」の印象とかぶりがち。ファッショナブルでさりげないモダンなニューヨーク風を目指すのはハードルが高いから、なかなか手が出ないのでしょうか……。そんな日本の女性たちに僕がお勧めしたいのが半透明な赤! みんなが目指すべきお洒落な赤は、本当の唇が半分透けて見えるような透明感とさりげなさが大切なのです。
もともと唇には赤みがあるのでそれを生かしつつ、ほんの少し赤みを足す程度の発色のリップカラーを選ぶのがポイント。そしてシャープなリップラインもNG! 輪郭は補正程度にソフトにさりげなく。これで、艶たっぷりのセクシーレッドも、艶を抑えたステインっぽい赤みをのせるモード風レッドも、バッチリきまるはず!
■トレンド2 メヂカラがメイクの主役
今年の秋冬ファッションは、黒をメインに色や素材を組み合わせるのが主流。だから当然メイクでも“黒”は欠かせないキーカラー。ニューヨークでも最近、黒いアイラインとマスカラだけで60’Sっぽい印象のアイメイクを今っぽくキメてる女性を見かけます。ファッションとの相性もバッチリで、かっこいいです。こういった黒いラインのメヂカラメイクは、今シーズン絶対お勧めです! さりげなく仕上げて今風に、というのがポイント。作り込んだレトロな感じになったら、絶対ダメですよ。
だけどこんなにさりげなく、黒のラインが似合って、睫毛も長い人なんて少ないと思いませんか? それに「黒だけじゃ、ちょっとキツ過ぎて?」とか、もう少しソフトでフェミニンなアイメイクをしたいという女性たちも多いはず。そういう方々には、「ニュアンス・アイメイク」がお勧め! 黒っぽいニュアンスのアイカラーは今年のトレンドにぴったりですし、黒だけのアイメイクよりもソフトな印象なので、多くの女性に似合うのです。
コツは黒だけでアイメイクを仕上げないこと。黒は好みのメヂカラをつけるラインとマスカラだけにしてみましょう。そして目元に深みを出す影色は、ファッションコーディネートに使われた黒以外の色を使ってみて下さい。例えばアクセサリーの色の紫だったりベルトのゴールド、ハイヒールのボルドー…等々。好きな色一つをそこから選んで、それを思いっきりグレイッシュにしたアイシャドーの色、そんな「ニュアンスのあるグレイ」を使うとトレンディーな「見た目はほとんど黒。だけど黒くない、ソフトな印象で、ほんのり色を感じるアイメイク」が出来るのです。是非、試してみて下さい!
二つのメイクのトレンドは、相性もバッチリ。だから組み合わせも自由。
ミニマムなメヂカラメイク派はニュアンス−アイメイクや黒いラインメイクをナチュラルリップと合わせてメヂカラを強調するのも良いですし、フェミニンなリップ派は、ニュアンス−アイメイクを少しソフトに調節して、赤いリップをもっと目立たせることも……。そしてもちろん、二つ一緒にフルメイクで仕上げてもバッチリなのです。
これで秋冬トレンドメイク、おおよそマスター出来たでしょうか?
「流行」はファッション業界が作り出す、めまぐるしく変わるお洒落のしきたりです。めんどうに思う時もあるでしょうが、楽しめるのも女心。新しい流行をトライするのは、新鮮な自分の魅力に気がつく良い機会です。だから自分らしさを生かしつつ、トレンドメイク、楽しんで下さいね!
メークアップアーティスト
1959年、新潟県生まれ。1983年から活動を開始し、ファッション誌や広告制作で活躍後、1995年に渡米。各国のVOGUEなどの表紙をはじめ、著名ブランドの広告、コレクション、セレブリティのポートレイト用メークなど、幅広く活躍中。ヒラリー・クリントン国務長官や、カトリーヌ・ドヌーブらセレブリティも多く手がけている。
2008年3月からはカネボウのプレステージブランド「CHICCA」のブランドクリエイターを務め、毎シーズン、日本の大人の女性に向けたメークを提案している。
世界を飛び回る毎日だが、休日はNYの自宅で妻と娘と過ごす。