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〈堅固な手作り鞄・1〉グローブ・トロッター こだわりの技

2010年9月6日10時22分

写真:グローブ・トロッター本社と工場の入り口拡大グローブ・トロッター本社と工場の入り口

写真:クリエーティブディレクターのギャリー・ボット氏と新旧の作品拡大クリエーティブディレクターのギャリー・ボット氏と新旧の作品

写真:19世紀から使う機械でスーツケースの角の革をプレスする職人=写真はすべてColin Roy氏撮影拡大19世紀から使う機械でスーツケースの角の革をプレスする職人=写真はすべてColin Roy氏撮影

 工程の一つひとつにこだわりがある、手作業の少量生産品は、時代を越えて生き抜く例がある。スーツケース作りなら英国の老舗(しにせ)グローブ・トロッター。19世紀の創業時の機械を今も使い、週200個しか生産しない。工場にベルトコンベヤーはなく、職人たちが楽しそうに物作りに励む姿があった。

    ◇

 グローブ・トロッターのスーツケースは1897年創業以来、軽くて堅固と評判だ。本社と工場はロンドンから北に車で40分、ブロックスボーンという緑豊かな小さな町に立つ。働く職人は驚いたことにたった二十数人しかいない。

 年産約9千個。クリエーティブディレクターのギャリー・ボット氏は「創業時の素材や製法を守って、この土地で作る。すると大量生産は無理。一人の人が一生に1個持ち続ける品を目指しているんです」と言う。

 ゾウが踏んでも壊れないという広告でも知られる強さの秘密は、特殊な紙を何層も重ね、樹脂をコーティングしたバルカンファイバー。たわんで力を逃し、割れやゆがみを防ぐのだ。工程は意外にシンプルだが、独自の手技が生かされている。

 例えばスーツケースの角の部分は、硬い、牛の肩の革の小片を湿らせ、型に手で押し付けては乾かす作業を反復し、プレス機械で安定させる。機械はビクトリア朝時代から使っていて、第2次大戦終了時の喜びを表したものか、「戦争が終わった」という落書きもそのままだ。

 ケースの外側を形作るバルカンファイバーは、約200度の熱をかけ、手で角度をつけて折り曲げていく。季節や天候によって微妙に温度を変える。たわむ素材を枠にはめ込む職人は「手が覚えている感触がすべて」と話した。

 勤めて34年だという品質管理の担当者は「仕事は集中が必要だけれど、ライナー(内張り)にセクシーな女性の絵を描いたケースを作る時なんかは工場に活気が満ちるんだ」と豪快に笑う。皆とそろいのポロシャツを着た工場長は勤続25年。「朝7時半から夕方6時まで、みんなで世界にたった一つのカバンを手作りする楽しさは他にない」

 質実剛健のイメージのグローブ・トロッターだが、最近はエルメスやリバティ、日本のアンダーカバーなどと一緒に限定商品も作る。その場合も色とライナー、革のトリミングしか変えないという。日本法人の田窪寿保社長は「伝統に新しさをクロスオーバーしても、譲れない部分を大事にしたい」と話す。(編集委員・高橋牧子)

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