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ミラノ・サローネ2011(2) 400超える場外イベント

2011年4月18日12時8分

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写真:ミラノ大学のインテルニ展。構内の回廊や庭には有名デザイナーによる作品が数多く展示されている。手前下はアート・コンテナ社製移動野外家具。拡大ミラノ大学のインテルニ展。構内の回廊や庭には有名デザイナーによる作品が数多く展示されている。手前下はアート・コンテナ社製移動野外家具。

写真:「COSMIT50周年記念特別展」。コットン・ベースの液体を人体に吹き付けて作った服。拡大「COSMIT50周年記念特別展」。コットン・ベースの液体を人体に吹き付けて作った服。

写真:トリエンナーレ会場で発表されていたJTイタリアのデザイン・コンペ授賞展。拡大トリエンナーレ会場で発表されていたJTイタリアのデザイン・コンペ授賞展。

写真:キヤノン「NEOREAL」展。無数の建築用つぼ糸を張って、あたかもプロジェクションの光線が放たれているかのような効果を生んでいる。拡大キヤノン「NEOREAL」展。無数の建築用つぼ糸を張って、あたかもプロジェクションの光線が放たれているかのような効果を生んでいる。

写真:デュポンのトロン展。写真は伊藤節&志信デザインで、寝椅子はデュポン・コーリアン、照明はデュポン・タイベック製の和紙と見間違える新素材を用いている。拡大デュポンのトロン展。写真は伊藤節&志信デザインで、寝椅子はデュポン・コーリアン、照明はデュポン・タイベック製の和紙と見間違える新素材を用いている。

写真:鄭秀和による三菱化学の有機ELインスタレーションは、昼光色と電球色が入り交じる日本の都市風景を表現。拡大鄭秀和による三菱化学の有機ELインスタレーションは、昼光色と電球色が入り交じる日本の都市風景を表現。

写真:エルメスがフォーリ・サローネでは初めて、本格的なイベントを行っていた。坂茂設計の紙管による館を作り、エルメスの皮革技術を存分に発揮した家具を展示。拡大エルメスがフォーリ・サローネでは初めて、本格的なイベントを行っていた。坂茂設計の紙管による館を作り、エルメスの皮革技術を存分に発揮した家具を展示。

 ミラノ・サローネとは、本来は見本市会場で行われる家具フェアのことですが、ここまでミラノ・サローネが世界的なイベントとなったのは、90年代に「インテルニ」誌の編集長になったジルダ・ボイヤルディが、フォーリ・サローネ(=サローネ場外)で開催されるデザイン・イベントの数々を小冊子にまとめて紹介するようになってからだと思います。それまでは家具見本市に世界から集まるデザイン関係者を狙って、市内でゲリラ的に開催されていたイベントが、それ以降は広く認知されるようになり、今やその数はインテルニに載っているだけでも400近くになっています。今回はその中からミラノ大学、COSMIT(サローネの主催社)、トリエンナーレの3会場と、トルトーナ地区を中心に報告します。

 雑誌付録のガイドブックを成功させたボイヤルディは、次にミラノ市と組んだ一大デザイン・イベントを企画するようになりました。ここ4年ほどはミラノ大学のキャンパスを借りて、スポンサー企業とデザイナーを結びつけた作品の数々を展示しています。今年は「ミュータント・アーキテクチャー(変異する建築)」というテーマで、サステナブル・デザインの観点から簡単に解体、移動できて、かつ様々な機能にリユースできる作品を、世界的な建築家やデザイナー達に制作を依頼して発表しています。中でも伊藤節&志信がコンテナの壁材料(端材)を利用してデザインした移動家具は、野外ベンチ、移動屋台、インフォメーション・スタンドともなって、キャンパス中で使われていました。

 「本家本元」を名乗るCOSMITの市内キャンペーン展は、「PRINCIPIA(原理)」がテーマで、デニス・サンタキアラがキュレーションした8つの部屋で次世代アートの実体を捉えようとしていました。いずれもサイエンスとアートの合体を強く意識したもので、ロボットや3Dからナノテクノロジーまで斬新な構想のデザイン・アートが並んでいます。サンタキアラは「アーティスト(デザイナー)はトリックを見せないマジシャンのようなものだ」と語っていて、テクノロジーをあらわにしないで効果を生み出すのがデザインというコンセプトは明解です。仮設テントが市の中心部にあるDUOMO広場に設けられており、新しもの好きで未来志向が強いミラノ市民は子供連れで来場し、熱狂していました。

 センピオーネ公園内にあり、市の第三セクターが運営するトリエンナーレ会場は、毎年複数の重要なデザイン・イベントに貸し出されており、必見。今年も、深澤直人の椅子を展示するマルニ木工を始めとして、日本たばこ産業(JT)、イタリア最大の照明会社イ・グッチーニ、デザイン・タイルのビザッツァなどがそれぞれ趣向を凝らした展示を行っていました。なぜ日本たばこが?と不思議に思ったのですが、JTが買収したイタリアのたばこ会社が、若いデザイナー達を対象に行った「吸い殻捨て防止キャンペーン」のデザインコンペ展だったことが分かりました。展示方法が回転仕掛けになっていることもあって、多くの若い来場者に狭い部屋が占領されるほどにぎわっていました。

 最後にフォーリ・サローネの代表格ともなるトルトーナ地区を紹介します。もともとは運河沿いの倉庫街だったのが、この十数年でデザイン・エリアに様変わりしたもので、安藤忠雄が設計したアルマーニ・テアトロもここにあります。ここだけでも50を超えるデザイン展が開催され、見本市に来た客が立ち寄れるように毎夜8時頃まで開いているので、夜は狭い街路に人があふれて一層にぎわいます。

 中でも話題を集めていたのがキヤノンとデュポンでした。今年で4年目のキヤノンは昨年もプロジェクション効果満点のインスタレーションでしたが、今回はより幻想的でかつブランド・イメージをアピールした秀逸なものでした。デュポンはディズニーとタイアップした「トロン:レガシー」展で多くの来場者を集め、こちらも開発した新素材をフューチャリスティックな展示の中にきちんと生かしています。例年トルトーナ地区には日本企業も数多く出展するのですが、今年はキヤノンの他は東芝、INAXと三菱化学を見ることができました。私が注目したのは三菱化学が英国子会社の名で発表していたOLED(有機EL)照明展です。照明と音響の融合など高い技術を「WHY?」と思わせる製品に仕上げていて、デザインの奥行きの深さを感じさせてくれました。

 次号は世界のデザイナー達がなぜミラノを目指すのかを語りたいと思います。(船曳鴻紅=ふなびき・こうこ)

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