2010年4月29日
(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第2巻(週刊モーニング連載中)
「ネットショップで優れモノを発見! 俺はすでに買った。アンタも早く買いなさい」
という押しつけがましいメールが弟から来たのは、2週間前のことだった。掘り出し物ワインの話かと思い、メールに張り付けられたURLをクリックすると、アクリル扉付きの、ワイン収納庫のような商品が掲載されていた。小型セラーのようだが、どうもそれとは違うらしい。
「ユーロカーブ・ホームワインバー」というこの商品、飲みかけのワインを極力酸化させない状態で、適温保存するワインセーバーだという。2つある扉つきボックスは独立しており、それぞれがボタン操作で温度調節できるようになっている。赤ワインモードというボタンを押すと約16℃〜18℃に保たれ、白ワインモードだと8℃〜10℃になる。要するに、赤も白もちょうど飲み頃の温度でサーブできるように保存してくれるわけだ。
赤用と白用に分かれた温度調整もなかなか良いが、もっとすごいのは「空気抜き」のシステム。アクリルの扉を閉め、箱の上部についたピストンを押し込むと自動的に空気をガーッと抜き始めるが、なんとこの吸引はボトル内が真空状態になるまで続くのである。
ボトル内部が真空になれば、ワインはほぼ酸化しない。飲みかけのワインをそのように完璧な状態で保存するというのはマニアにとって、ひとつの夢である。
例えば仕事が終わった夜、ひとりで寝酒を飲んで一息つきたい時などに、ワインは意外と厄介なしろものだ。寝酒はせいぜいグラス1、2杯だが、そのために750ミリリットル1本を抜栓することになる。開けたらなるべく早く飲み切らなくてはならないのが、ワインの宿命。高いワインは勿体ないから寝酒は大体、安いワインを開けることになるが、これがあまりに不味いと、口直しをしたくなり、つい高級ワインに手が伸びる。で、開けた以上は勿体ないからトコトン飲んでしまう。これがよくある「寝酒ワインで二日酔い」の最悪パターンだ。
「そういう最悪パターンとは、俺は縁を切った。この機械を買ってからは、高級ワインでも安心して抜栓できるようになったしね」
と、弟は鼻高々に、この最新兵器を披露した。確かに、2日前に抜栓したというローヌワイン「ドメーヌ・デュ・ペゴー・シャトー・ヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ローレンス」04年は、ほぼ抜栓したての生き生きした味わいを保っていた。
優れモノであることは確かなようだが、この機械、いかんせん約6万円とお値段も張る。果してこの代金に見合った幸福感を、私に与えてくれるのであろうか?
「この機械より高いワインを衝動買いすることだってあるくせに」と弟はいう。ま、そういわれればそうなんだけど……。
その後我々はいつものように『神の雫』の打ち合わせをしながらワインを飲み始め、空気を抜いて適温でしまってあるワインボトルを何度も出し入れして、結局は1本まるごと飲んでしまった。こうなると、優れた酸化防止機能も無用の長物のような……。というか、やはりこれは週末にほんの少量、ワインを飲む人のためのものではないのか?
「いいや、これさえあればシャトー・マルゴーを寝酒にするのも怖くない。俺はこの機械を使いこなすぞ」と、弟は鼻息も荒い。シャトー・マルゴーを抜栓して、2日以上残っていたことなんて、あったっけ?
しかし結局、弟の勢いに負けて私も同じものを買ってしまった。いささか出費ではあったが、これでもう、寝酒を飲み切ろうとして二日酔いになることはない……はずだ。
■今回のコラムに登場したワイン関連商品
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