2010年7月5日
(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第23巻(週刊モーニング連載中)
イヤーな季節がやってきた。自宅の湿度計も70%台を指しており、汗と湿気で額や首筋がベットリする。
こんな日のワイン選びはとても悩ましい。焦げつくような真夏日は冷やした発泡ワインで気分爽快になれるが、ジトッとした梅雨の夜は、セラーを開けて「きょうは何飲もうか…」と考え込んでしまうのである。
さてそんな鬱陶しい季節のさなか、亜熱帯の国・台湾に出張してきた。台湾でもワインはかなりブームになっているようで、「神の雫」台湾語版はよく売れている。私と弟は新聞などのメディアやワイン専門誌のインタビューを受けたり、ワインの売り上げを福祉機関に寄付するチャリティオークション・ワイン会にメインゲストとして参加させてもらった。そのほか台湾料理とのマリアージュを楽しむ特別試飲会にも招いてもらった。
一連のイベントでワイン選びを担当したのは、フランスに外交官として滞在し、現在は台湾の輔仁大学でフランス史を教えているという台湾きってのワイン通、楊子葆(ヤン・ズバオ)教授である。台湾料理は突出した辛味や酸味などがあまりなく、柔和で万人好みの味わいだが、蟹やフカヒレなどの海産物が多いので、ワインとのマリアージュは意外と難しい。にもかかわらず、楊教授はカラスミの大根巻きをリースリングに合わせたり、スイス国境近くのジュラ地方の「ジュラ・ヴァン・ジョーヌ・レトワール」という、ほとんど日本でも見かけない超レアなフランスワインをフカヒレスープに合わせるなど、高等技術で見事なマリアージュを披露してくれた。いやはや、楊教授のワインに対する造詣の深さは相当なもので、本当に舌を巻いた。ちなみにこのジュラ・ヴァン・ジョーヌは紹興酒にそっくりの味わいなのだが、「面白さを知ってほしい」ということで、楊教授はヴァン・ジョーヌと台湾特産の陳年紹興酒をわざわざ並べて試飲させてくれたりもした。
チャリティ・ワイン会の席上で、「今回のマリアージュはお見事でしたね」と楊教授に話しかけると、教授は「今回のイベントでは私は何度もワインを選び直しました」と、苦笑いをする。というのも、じつは今回のイベントは、当初は2月ごろに開催される予定だった。それが諸事情で7月になったわけだが、冬と夏ではおいしいと感じるワインがまるで違う。教授はその時点でワインを選び直したそうだが、「このところ雨が多く湿度が高くなっているので、ワインも濃すぎるものは飲み疲れする。だからもう一度ボツにして、湿度を意識して選び直しました」という。
その話を聞いて、ワイン選びには湿度が大事なのだと初めて知った。そういえば湿度が低くなると鼻や舌の粘膜が乾き、渋味や酸味を感じやすくなるという話を聞いたことがある。だから乾燥した飛行機の中などでは、酸味の少ない甘味のあるワインを美味しく感じる。逆に、湿度の高いジメジメした日は、酸味の効いたドライなワインが美味しい。チャリティ・ワイン会で楊教授が選んだのは、カベルネ・フラン主体のフレッシュな酸と果実味があるロワール地方の「サン・ニコラス・ド・ブルグイユ」や、ローヌ川右岸の人気生産者ペランの造る辛口の「タヴェル・ロゼ」など。いずれも鬱陶しい湿気を吹き飛ばす、軽快できりっと引き締まったワインだった。
私はこの辛口でボディの強いタヴェル・ロゼが大いに気に入り、日本に帰ってから、さっそくネットで購入した。価格も二千円ちょっとで、コスパは◎である。
あと少しで梅雨も終わり。暑気払いならぬ“湿気払い”に、今夜はこの辛口のロゼを寝酒に飲むとしよう。
■今回のコラムに登場したワイン関連商品
ひんやり、ぷるるん!! 大人も子どもも大好きな、ゼリーの涼しい口当たり。いつもの味にちょっと飽きてきたら、こだわりの極上ゼリーをお取り寄せしてみてはいかが? うだるような暑い夏も、こだわり果汁や極上コーヒーがぎゅっと詰まったゼリーたちを食べれば、うっとり幸せな気分で忘れられそう…。
シュワーっとしたのどごしで、暑い日でもさわやかな気分! 定番のスパークリングワインをはじめとして、発泡性の日本酒や果実酒など、この季節にピッタリのスパークリングドリンクをピックアップ。夕食でも、パーティーでも、灼熱の浜辺でも、夏気分をもっと盛り上げてくれること間違いなし!