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いま注目の小規模生産者シャンパーニュ

2010年10月13日

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イラスト:(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第25巻(週刊モーニング連載中)(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第25巻(週刊モーニング連載中)

 さん然と輝く金色のコーティングが施されたボトル。その中央にはラベルの代わりに、美しい細工が施されたスペードのエースマークが刻み込まれている……。一度見たら忘れられられない鮮烈な印象のこのボトル、なんと職人が1本1本手作りしているもので、1時間に30本しか造れないのだそうだ。

「アルマン・ド・ブリニャック」というこのシャンパーニュは、世界中のセレブの御用達。数年前の発売当初は確か10万円近い値がついていたはずだが、今は円高メリットで値下がりしつつあり(それでも高いが)、3万円台後半〜5万円で買える。弟と私はこのキラキラ輝くボトルに惹きつけられ、5万円だった時期にワリカンで購入。あまりに高いのでなかなか飲めないでいたのを、あるワイン会の席で思い切って開けてみた。

 庶民の性で、飲みながらつい値段のことが頭をよぎってしまう。5万円だから、だいたいグラス一杯ぶんが5千円。華やかな香りがあり、果実味も豊かで泡もきめ細かく、美味いことは美味い。が、値段に見合う感動が得られたかといえば、正直言って微妙である。細長いグラスに立ちのぼる繊細な泡を見つめながら、私は内心、「この1杯分で、小規模生産者の美味しいシャンパーニュが1本買える……」と、考えずにはいられなかった。

 ちなみにシャンパーニュの世界には、ふたつの製造業態がある。ひとつは大手企業が中心となっているネゴシアン・マニピュラン。大手メゾンという言い方をする人もいる。このアルマン・ド・ブリニャックや、ドン・ペリニヨン、サロン、クリスタルなど、有名な高級シャンパーニュは、ほとんど大手メゾンと呼ばれる生産者の手になるものだ。

 これに対して、自家栽培の葡萄でシャンパーニュを自家醸造している小規模生産者を、RM(レコルタン・マニピュラン)と呼ぶ。RMは、大手メゾンでは人件費がかかりすぎて難しいといわれる自然栽培を行ったり、自分なりのワイン哲学を実践しているところが多い。そして近年は、このRMに注目が集まり始めている。世界的な自然志向の影響、少量生産でレア度が高く購買意欲をそそることなど、理由はいくつかあると思うが、とりわけ値段の問題が大きい。大手メゾンと違って広告を打たないRMは広告費が売価に反映されないし、家族経営が多いため人件費がかからないぶん、安く供給できる。RMのスター生産者、ジャック・セロスのシャンパーニュは、世界中の愛好家が奪い合うようにして買うので1万〜4万円ほどの高値で取引されているが、これは例外中の例外で、ほとんどは大手メゾンよりも割安なはずだ。

 近頃では見たこともないようなRM生産者のシャンパーニュを「掘り出し物!」とお手頃価格で売りだすネット酒屋も増えてきた。もちろん中にはハズレもあるが、3〜4千円なのに1万円級のシャンパーニュのような味わいという「大アタリ」も少なくない。まぁ、残念ながら千円台のものはないが、シャンパーニュはワインを瓶詰めしてから発酵させ、さらにそれを数種類ブレンドしたりするので、手間とコストがかかる。だから三千円という値段はやむを得ないと思う。

 さて私が今年飲んで「大アタリ」と感じたRMのシャンパーニュ。例えばリシャール・シュルランの「ブリュット・アッシュNV(ノンビンテージ)」。4500円くらいだったが、味わいは1万円以上だった。無農薬栽培、古典的製法で造られたこのワインは、二千円台で買えるキュベもあり、こちらもお薦め。また、三千円台の「ポワスネ・アスカ・ブリュット・グラン・レゼルヴ」も非常に良かった。香りが複雑で華やか、口当たりは柔和で優しく、バランスがともかく良い。

 市場の要請に沿う形で、今後も知られざるRMは次々と発掘されていくことだろう。その中から自分なりの“宝探し”をするのも、RMの楽しみ方のひとつである。

■今回のコラムに登場したワイン関連商品

  • アルマン・ド・ブリニャック

  • ブリュット・アッシュNV

  • ポワスネ・アスカ・ブリュット・グラン・レゼルヴ

プロフィール

亜樹直(あぎ・ただし)

講談社週刊モーニングでワイン漫画『神の雫』を執筆。これは姉弟共通のペンネームで、2人でユニットを組んで原作を描いている。時に、亜樹直A(姉)、亜樹直B(弟)と名乗ることも。このコラムを担当するのは姉の亜樹直A。2人で飲んだワインや神の雫の取材秘話など、ワインにまつわるさまざまなこぼれ話を披露していく予定。

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