現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 食と料理
  4. コラム
  5. 「神の雫」作者のノムリエ日記
  6. 記事

一流生産者が集う注目の産地「ラングドック」

2010年11月28日

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

イラスト:(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第10巻(週刊モーニング連載中)(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第10巻(週刊モーニング連載中)

 ボジョレーのお祭騒ぎに明け暮れた11月が、ようやく終わろうとしている。いやぁ、いつもながら忙しいひと月であった。今年のボジョレーはグレート・ビンテージだった去年と異なり、ワイナリーによる出来ばえの差があって、全体に淡い味わいだったと思う。でも、濃厚で骨格がガッチリしているよりも、爽やかでジュースのように飲めるヌーヴォーのほうが、新酒っぽくて私は好きである。

 さて、葡萄ジュースのようなヌーヴォーを飲んだ反動で今週末は輪郭のはっきりしたワインが飲みたくなり、最近個人的にハマっているラングドック・ルーションのワインをセラーから出してきた。ブルゴーニュの超一流生産者のアンヌ・グロとトロ・ボーのペアがつくる「ミネルヴァ」シリーズの人気キュベ「ラ・サンカント・サンカント」だ。ラベルには50/50と記されてある。2人の生産者がフィフティ・フィフティで造っています、という意味らしい。

 アンヌ・グロがブルゴーニュで造るワインは慢性品薄だし、値段もすごく高い。格下の村名ワインでも7〜8千円。一番人気の特級「リシュブール」などは、3万円以上する上に、ネット酒屋では「他のワインとセットで買ってください」などという注釈がつけられ単独で買うことすらままならない。それなのにこの50/50は、なんと2千円台で買えてしまう。味わいはブルゴーニュのように格調高くはないが、柔和で活力があって喉越しがスムースで、天才アンヌ・グロが手がけたという有り難みも手伝ってか、なかなかに美味。生産量が多いため在庫が豊富で、欲しいと思ったらすぐ手に入るのも嬉しい。

 南仏ラングドックは、かつてはテーブルワインの産地として低くみられていたが、最近では急激に状況が変わってきている。ブルゴーニュの一流生産者たちや、ムートン・ロートシルトを始めとするボルドーの有名シャトーが続々とラングドックに進出し、手頃な価格でポテンシャルの高いワインを造り始めているのだ。彼らがラングドックの地を目指すのは、気候温暖で土壌にも恵まれているのに、地価がフランスの他の葡萄産地に比べて割安だからだろう。フランスも不況の昨今、生産コストが安いことは重要である。

 そんなわけで、近頃のラングドックはワイン界のスター生産者が集う、注目の生産地となりつつある。例えば私の偏愛するブルゴーニュ生産者のひとり、ドメーヌ・フーリエもラングドックに乗り込んで『フォジェール・アダージョ・デ・テロワール』というキュベを造っている。これはアンヌのワイン以上の超人気で、やすやすとは手に入らない。私もネット酒屋のメルマガを日々チェックして狙っているが、なかなか買えないでいる。

 また、今一番飲むのを楽しみにしているのが、ブルゴーニュの白の巨匠・ジャン・マルク・ボワイヨが造る『ドメーヌ・レ・ロケ』のブラン(白)。ボワイヨは150年の歴史を持つブルゴーニュの重鎮・エティエンヌ・ソゼの孫で、ピュリニー・モンラッシェ村の有力畑をソゼから相続で引き継いでいる。彼の看板ワイン、特級のバタール・モンラッシェは2万円近くするが、このレ・ロケは2千円台。ミネラルの背骨がビシッと入った筋肉質で重厚な白ワインを造るボワイヨのラングドック白ワイン、さぞかし美味いに違いない…と思う人が多いためか、ロケは赤と白とあるが、白の方が圧倒的に品薄だ。ワインマニアの考えることは、似たりよったりらしい。 庶民の懐にも寒い風が吹きこんでくる今日この頃。3万円のリシュブールを造る生産者のワインが「お小遣い価格」で美味しく飲めたなら、きっと心もサイフもホンワカ暖かくなることだろう。

■今回のコラムに登場したワイン関連商品

  • ラ・サンカント・サンカント

  • ドメーヌ・レ・ロケ

プロフィール

亜樹直(あぎ・ただし)

講談社週刊モーニングでワイン漫画『神の雫』を執筆。これは姉弟共通のペンネームで、2人でユニットを組んで原作を描いている。時に、亜樹直A(姉)、亜樹直B(弟)と名乗ることも。このコラムを担当するのは姉の亜樹直A。2人で飲んだワインや神の雫の取材秘話など、ワインにまつわるさまざまなこぼれ話を披露していく予定。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介
  • 大人のためのグルメガイド 豊富な店舗情報やたくさんの料理写真で行きたいお店がよくわかる。

フード・ドリンク

写真

あつあつのお取り寄せラーメン(11/23)

寒くなると恋しくなるあつあつのラーメン。でも人気のお店はいつも大行列! そこで今回は、寒い中並ばなくても名店の味を楽しめる、極上お取り寄せラーメンをご紹介。自宅で全国の味を食べ比べてみてはいかが?

写真

今年はおせちもお取り寄せ!(11/16)

近年人気を呼んでいる、高級食材を詰め込んだお取り寄せのぜいたくおせち。和風、洋風、田舎風など、今年も各店が趣向を凝らした自慢の逸品が勢ぞろい。おもちと雑煮を用意して正統派に楽しむのもよし、ワインと一緒にわいわいとパーティーをするのもよし。プレゼントやお歳暮にも喜ばれること受け合いだ。