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素晴らしきワインとの「運命の出会い」2007年07月19日 『神の雫』を書きながら、我々は少なくとも週に2回は2人でワインを飲んでいる。ただ作品の性格上、次々と新しいワインを紹介しなくてはならないし、十二使徒を紹介するというテーマも抱えているので、週2回程度の試飲ではインプットがアウトプットに追いつかない。だから輸入代理店が開催するワインの試飲会に出掛けたり、同好の士を集めて「ワイン会」を主催したりして、一気に十種類以上のワインを試飲する機会を設け、せっせとインプットに努めている。
ワインの銘柄は世界に何万種類とあり、我々がどんなに頑張ってもすべてを知り尽くすことはできないが、こうした努力を続けていれば、夢のようなワインに巡り合う確率は高まる。運命の出会いは、すべて偶然から始まるのだ。もはやカネと肝臓が続く限り、出会いを求めて飲み続けるしかない、と我々は覚悟を決めている。 「第三の使徒」つまりローヌ地方の銘酒ドメーヌ・デュ・ペゴーの『シャトーヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ダ・カポ00年』との出会いも、奇跡のような偶然だった。04年のボルドー取材で、ジャーナリストのムッシュ・スドウお薦めのサンテミリオンのワインショップに立ち寄った時である。店員が我々にダ・カポ00年を見せて「これは高価だが偉大なワインだ」と、我々に懸命に薦めた。実はその当時、我々はもっぱらブルゴーニュとボルドーワインに熱中していて、ローヌ・ワインについてはいささか後回しにしていた。だからダ・カポを見ても「確かパーカーポイント(注)が高かったな」と思ったくらいで、さして期待はしていなかった(パーカーポイントが高くても、おいしいと感じないワインはいくらでもあるのだ)。ところが、横にいたムッシュも「オークションでも手に入らないのに、これを店で売っているなんて、奇跡だ。買っても後悔しないよ」と言う。それほど珍しい品ならと、姉弟で1本ずつ買うことにした。 さてその後、ボルドー取材から戻った我々は、仲間を集めてワイン会を開いた。我々のワイン会では、参加者はおのおの1本ずつ手土産のワインを持参してくる決まりである。この日も20本以上のグレート・ワインが集まった。我々は、ダ・カポも含め、フランスで買ってきた数本のワインを土産代わりに提供した。 その席で、初めてダ・カポを飲んだときの驚き。期待していなかっただけに、アッパーカットをいきなり食らったような衝撃を受けた。最高級のマロングラッセを食べた時のような、うっとりする甘さ。作りたてのカスタード・クリームのようなふんわりとした優しさ、そして母の温もりに似た懐かしさ……。 このダ・カポの印象が強烈すぎて、同じ席で他にも素晴らしいワインをたくさん試飲したにもかかわらず、印象に残っていない。聞けば弟も「俺も他のワインを思い出せない」と言っていた。要するに、2人して頭が真っ白になってしまったわけである。 このように素晴らしいワインと運命の出会いを果たすと、同時に飲んだその他のワインの印象が消えてしまう。これは、パーティーで異性に一目ぼれすると、他の異性の印象が消えてしまうのと似たようなものだろう。 偶然に素晴らしい相手と出会い、頭が真っ白になり、その人が忘れられなくなる……人間同士もワインも「運命の出会い」というのは、どこかしら共通点があるようだ。 (注)パーカーポイント 世界的ワイン評論家・ロバート・パーカーJr.がワインを評価する際、目安としてつける得点のこと。
■今回のコラムに登場したワイン
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