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ワインの可能性は“未知数”2007年09月27日 ロバート・パーカー・jrの評価には時折「90〜93点+」などというように、幅のある数字が記載されている。昔、この数字を初めて見たときは不思議な評価の方法だ、と首をひねったものだ。点数の最後にくっつけられた「+」というのが、ますますこの評価をわかりにくくしている。
しかしワインをちゃんと飲むようになって、この数字の幅の意味をちょっとずつ理解できるようになった。パーカーさんの評価は、必ずしも我々の好みとは一致しないのだが、このやり方を評価にとり入れた感性は、さすがというほかない。 私がこの『数字の幅』の真意を理解したエピソードを披露しよう。去年の春のこと、とあるワインバーで某編集者と打ち合わせをすることになった。彼は「ワインに興味を持ち始めた」といっていたので、私は気合を入れて、極上のワインを店に持ち込んだ。例によっておいしいワインを飲ませてショックを与え、ワインの魅力にはめようとしたのである。持ち込んだのはドメーヌ・ジャック・プリュール「クロ・ド・ヴージョ」02年。パーカーさんが執筆するワイン評価誌「ワインアドヴォケイト」が96〜99点という高得点を与えた“夢のワイン”だ。 当然、まだ若いから硬いだろうとは思っていたが、ブルゴーニュだから開くかな、と考えていた。しかしそれは甘かった。以前、ローラン・ルーミエの「クロ・ド・ヴージョ」をリリース直後に飲んで、ビクともしない硬さに閉口した経験があったのに、懲りもせず同じことをやってしまった。プリュールのクロブジョ、一口テイスティングをして思わず「硬い!」と叫んでしまった。ブルゴーニュ通で知られる店のオーナー氏も「うーむ、一度のデキャンタでは難しいかも……」と言う。とりあえず一度デキャンタして編集者氏に飲ませたところ「すごく濃いボルドーワインみたいです」とのたまう。「あまりおいしくない」と、目が語っている。 しかし、このワインは変化しそうな気配がぷんぷん漂っている。言ってみれば、しっかり閉じているが、大きな花を咲かせそうな薔薇(ばら)の蕾(つぼみ)である。ただかたくなに閉じているので花の大きさや色合いがはっきりわからない。私は「別の軽いワインを飲みながら、ちょっと待ってみましょう」と提案した。そして、サンテミリオン郊外の、メルローでできた柔和で軽めのワインを飲みながら、放置すること2時間。再度飲んでみると、まるで魔法をかけたように、薔薇の蕾が大きな花を咲かせていた。クロブジョというテロワールの特徴である黒い芳醇(ほうじゅん)な土の香り、赤身の上質な肉、スパイス、そして薔薇の香り。件の編集者も「いやー、うまいですね!」と驚いていた。 このワインにつけられた96〜99点という高得点は、96点レベルの美しい薔薇が咲くが、予想を超えるほど見事な大輪の花かもしれない、という意味なのだと思う。彼のつける点数に時として幅があるのは「蕾は開くまでどんな花になるかわからない」という意味が隠れている。つまり天下のパーカーさんといえども、ワインの可能性のすべてを掌握できるわけではないのだ。ワインは未知なもの。それもまた、魅力のひとつなのだろう。
■今回のコラムに登場したワイン
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