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北海道に広がるワインの輪

2008年5月30日

  • 筆者・亜樹 直

イラスト

(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第8巻(週刊モーニング連載中)

 『神の雫』がらみで、我々姉弟は時々、ワインをお題にした講演会の依頼を受ける。講演会といってもいつもの軽いノリでしゃべくるだけなのだが、「掛け合い漫才みたいで面白い」と、割合にウケがいい。だから依頼も次第に多くなり、都内の百貨店やソウルなどでは、何度もしゃべってきた。ところがこの5月、珍しくも北海道の釧路から依頼が来た。

 我々にお声をかけてくれたのは、北海道の大手書店「コーチャンフォー」さんである。釧路では、まずは阿寒湖に面した人気の温泉旅館「あかん遊久の里鶴雅」で、講演会を行う。夜はメーンダイニングでワインパーティーに出席し、ファンと交流してほしいとのことだった。ちなみにこの旅館の経営者・大西さんは名誉ソムリエでもあり、道内きってのワイン好き。かたや「コーチャンフォー」のオーナー・佐藤社長も、ブルゴーニュにはまり、マニアの泥沼に足を踏み入れてしまった御方。このお二人、道内のワイン好きを集めて、ワイン会をしばしば開いているという。

 パーティーには、そんな佐藤さんと大西さんのワイン仲間(全員『神の雫』の愛読者だそうだ)、そしてホテルのソムリエや神の雫ファンの皆さんが、釧路内外から200人も集まってくれた。ちなみに、パーティー会場で出されたワインはルー・デュモンのシャンボール・ミュジニー04年やCHブラネール・デュクリュ99年など、我々の大好きなフランスワインばかり。さらにアンヌ・グロのクロ・ド・ヴージョ95年や『第二使徒』のCHパルメ99年など、レア度の高い高級ワインも有料で追加試飲できる。ワインマニアにとっては、まさに夢のようにぜいたくなパーティーである。

 ワイン会の翌日は、空港ロビーと見まがうばかりの広さを誇る、コーチャンフォー釧路店の一角でサイン会を行った。大型書店ならではの宣伝力が奏功してか、30分間のサイン会には神の雫ファンが整理券を片手に行列してくれていた。『神の雫』がブームになっている韓国でのサイン会では必ず長蛇の列ができるが、人口の少ない釧路でもこんなに長い列ができるんだな、とちょっとうれしかった。

 サイン会のあとは、ラジオ局「FM釧路」にお邪魔した。FM釧路には『ワインな時間』というマニアックな番組があり、有名ホテルの現役ソムリエ三人がパーソナリティーを務めている。我々はその番組にゲスト出演した。実は、ソムリエが司会をすると聞いて私はいささか驚いたのだが、彼らのトークのうまさには舌を巻いた。さすが接客業、会話の運び方が素人離れしている。

 ところでこの番組の最後に、司会者から「北海道のワインファンに向けて一言」と水を向けられ、我々はすかさず「北海道はワイン好きが多い。北海道発のワインブームを作ってほしい」と答えた。実際、講演会やサイン会で、我々は北海道のワイン好きの皆さんの並みならぬ熱気を肌で感じたのである。

 1泊2日の慌ただしい日程を終え、羽田に向かう飛行機の中、「どうして北海道にワインの輪が広がっているのか」と2人して考えた。「ブドウの産地だからかな」と、私。だが弟は言う。「それもそうだけど、夏でも涼しくてワインの保管がラクだからかもよ? 北海道なら、セラーなんて必要ないでしょ」

 確かに北海道でなら、東京と違って、真夏でも家の中の涼しいところで保管ができそうだ。まさしくワインマニアにとって、冷涼な環境ほどありがたいものはない。ローコスト管理が可能な北海道では、今後ますます“ワインの輪”が広がっていくことだろう。

■今回のコラムに登場したワイン

  • ルー・デュモンのシャンボール・ミュジニー04年
  • CHブラネール・デュクリュ99年
  • CHパルメ99年

プロフィール

亜樹直(あぎ・ただし)

講談社週刊モーニングでワイン漫画『神の雫』を執筆。これは姉弟共通のペンネームで、2人でユニットを組んで原作を描いている。時に、亜樹直A(姉)、亜樹直B(弟)と名乗ることも。このコラムを担当するのは姉の亜樹直A。2人で飲んだワインや神の雫の取材秘話など、ワインにまつわるさまざまなこぼれ話を披露していく予定。

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