2008年7月26日
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(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第4巻(週刊モーニング連載中) |
ただいま、亜樹直姉弟は「イタリアワイン」をちょっとがんばって研究中である。
我々はそもそもフランスワインのマニアであり、イタリアワインについてはそれほどマニアックに飲んでいたわけではない。『神の雫』の連載開始からまもなくの頃、「イタリア対フランスの安ワイン対決」というネタをやるにはやったが、この時は意外とすんなりいい安ワインがそろったので、イタリアワインをとことん追求するには至らなかった。
だが、イタリアはフランスと比肩するワインの名産地。『神の雫』の連載もすでに4年半を越えたし、「ここらでしっかりイタリアを紹介しないといけない」という使命感が、近頃ムラ〜とわいてきたのである。
イタリアという国は、面白いことに他国からワインをほとんど輸入していない。フランスでさえイタリアからワインを輸入しているのに、イタリア人はフランスワインを買わないのである。またイタリアワインの生産量は時としてフランスを上回るほど多いが、なんとその8割は自国で消費される。つまりイタリアは「地酒としてのワイン」がさまざまな都市で作られ、地元の人々によって完全消費されているのだ(ちなみに、グローバル化する世界の中で、これはかなりすごいことだと私は思う)。イタリア土着のブドウ品種は数百種に及び、ラベルの種類は20万に及ぶともいわれる。その豊富な種類の中には、鮪のブツ切り料理や、にんにくプンプン料理や、香辛料の強い料理にも合う、個性的な地ワインもある。かつて神の雫でも「キムチと合うワイン」として、唐辛子のニュアンスがある『グラベッロ』を紹介したが、イタリアの土着ワインは、やはりその町の風土、土着料理に合うように作られているらしい。町の数だけワインがあり、ワインの数だけ郷土料理がある――そんなカンジである。
だがこのように種類も数も多いイタリアワインを片っ端から飲んで美味しいものを読者に紹介するのは、かなりホネである。とりあえず今は、ワインおたくの経験とカンで「これはいける」と感じたものを、ネット酒屋で買いまくり、飲みまくっている。そのおかげで、掘り出し物もいくつか見つけた。まあ、それがなんであるかは本編を読んでもらうとして、イタリアワインを毎日のように飲み続けていると、その本質的な魅力が次第にわかってくる。暑さでボーッとしている時、濃厚でパンチのきいた超フルボディのブルネッロ・ディ・モンタルチーノを飲むと、「目を覚ませ!」といわれているようで、カツが入る。マスカットの香り漂うモスカート種のスプマンテ(スパークリング)を飲むと、仕事で煮詰まっている時も、気分が開放され、楽しくなってくる。そう、イタリアワインの魅力の本質は、「根アカ」なんだと思う。
人生、いい時もあれば悪い時もある。私はこれまで、元気な時には「陽」のワインを、湿っぽい気分の時には「陰」のワインを、無意識にマリアージュさせていた。確かにワインと料理のマリアージュは似た者同士を合わせるのが原則だが、「気分とワインのマリアージュ」に、原則なんかない。
最高気温40度の東京にウンザリした時、仕事や人間関係が息苦しくなった時、わけもなく鬱な気分になった時そんな時は「根アカ」なイタリアワインを飲んで、ぱーっと憂さ晴らししたくなる今日このごろである。
■今回のコラムに登場したワイン
ピリ辛では物足りない激辛党に! インドカレーや韓国料理など、辛くておいしい料理をセレクト。
夏の夜には、果実酒のさわやかな風味が涼をもたらしてくれる。いろいろな種類をじっくり楽しんでみては?