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ANAファーストクラスのワイン選定会

2008年9月14日

  • 筆者・亜樹 直

漫画

(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第17巻(週刊モーニング連載中)

 この夏、航空キャリアの全日空さんから、「ファーストクラスで出すワインを選ぶ試飲会に、亜樹直さんも参加しませんか?」という思いがけないオファーが舞い込んだ。

 恥ずかしながらこの私、ファーストクラスに乗ったことは、まだない。若い頃は雑誌の取材で海外にはよく行ったが、エコノミーしか乗せてもらえなかった。最近では、年も取ったし腰痛持ちなので、海外取材はビジネスクラスで行っているが、ファーストはいまだに雲の上の存在。あの応接間のように広々とした座席でくつろぐ人々は、一体どのようなワインを飲むのであろう。そんな興味もあって、選定会に参加させてもらうことにした。

 さて、試飲会当日。朝10時に会場に到着すると、大テーブルに黒い紙で目隠しされたワインと試飲グラスが並べられていた。試飲対象は、日・仏・米の三カ国の候補ワイン1200本のうち、最終選考に残ったワイン77本。「日本産・白ワイン」「フランスのボルドー産・赤ワイン」といった具合に、カテゴリーごとに選ばれた7〜9本のワインを目隠しで試飲して、おいしい方から上位6つまでをランク付けしていく運びである。

 試飲会の参加者はおよそ30人で、年齢、性別もさまざま。ソムリエなど有資格者もいれば、ワインの素人もいるという。担当者によれば「ファーストクラスの客層と同年代で、普段はワインを飲まない当社社員も含まれています」とのこと。確かに、ファーストの乗客全員がワイン好きというわけでもないので、ワインを飲まない人の意見は重要である。

 試飲は、午前に4カテゴリー、お昼と休憩をはさんで午後は6カテゴリーを消化する。いちカテゴリーでランク付けの作業が終わると、ワインの目隠しを外し、銘柄が公表される。目隠しをとってみると、フランスや日本産は何度か飲んだことのある銘柄が多かったが、以前「うまい」と思ったものに低い点をつけていたり、その逆もあった。ワインは、飲む時の状態や、ビンテージによってもレベルが全然変わってしまうものなのだ。

 この日、私がランク付けのポイントにしたのは、まず「抜栓してすぐおいしく飲めること」。飛行機の中で「開くまで待つ」なんていうのはナンセンスだから、これが一番重要だ。次に「産地の特徴が表れているもの」。限られたリストの中では、シャブリならシャブリの「らしさ」を求めて注文する客が多いだろうと予想したからである。

 ちなみにこういう試飲会では、ワインは口に含むだけで、飲まずに吐き出す。それから水で口の中をきれいにして、また次のワインを口に含む。最初は、試飲するたびに水を飲み下していたが、2カテゴリー目あたりから胃がパンパンに膨れてきた。おまけに水と一緒に微量のアルコールが体内に入るのか、飲んでもいないのに微妙に酔いが回ってきた。このまま77本を試飲し続けると酩酊するかもしれないので、水はもう飲まず、うがいだけに留めることにした。フーッ……。

 およそ7時間にも及ぶ選定試飲会が終わる頃には、赤ワインのタンニンで舌はしびれ、唇も無感覚になった。大好きなワインもさすがにこの日はもう飲む気がせず、試飲後のお疲れさま会では思わずビールに手が伸びた。

 なかなか大変な経験だったけれど、我々が試飲をお手伝いしたワインが来春からファーストに登場すると思うと、なんだかワクワクする。乗客の反響が、今から楽しみだ。

プロフィール

亜樹直(あぎ・ただし)

講談社週刊モーニングでワイン漫画『神の雫』を執筆。これは姉弟共通のペンネームで、2人でユニットを組んで原作を描いている。時に、亜樹直A(姉)、亜樹直B(弟)と名乗ることも。このコラムを担当するのは姉の亜樹直A。2人で飲んだワインや神の雫の取材秘話など、ワインにまつわるさまざまなこぼれ話を披露していく予定。

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