2008年9月25日
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(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第14巻(週刊モーニング連載中) |
前回このコラムでも書いた全日空のワイン選定試飲会で、実はちょっとした「発見」があった。この日は、フランスやアメリカなど地域ごとに7〜9種類のワインを試飲していったのだが、驚くべきことにワイン大国フランスにも負けないほど、日本産のワインのレベルが高かったのである。
もちろん、日本産ワインの品質が年々向上しているのは知っていたし、試飲会には厳選された銘柄が並べられていたとも思う。しかしこの日の試飲で、白も赤も、日本の高いレベルのワインは、フランスの並レベルのワインをすでに凌駕している、と私は思った。
試飲会に出品した日本のワイナリーは10社ほどだったが、とりわけ驚かされたのは中央葡萄酒の『グレイス』銘柄である。私は2年ほど前、この『グレイス甲州』(白ワイン)を初めて試飲し、香りの高さ、味わいの優雅さに感心した記憶があるが、今回出品されたグレイス甲州も非常にポテンシャルが高かった。勝沼に本拠を置く中央葡萄酒は、大正12年創業と歴史は古いが、決して大規模なワイナリーではない。しかし、ここではフランス流の垣根仕立てで葡萄を育ており(日本では葡萄狩りでおなじみの棚仕立てが一般的)、1本の葡萄の木につける房数も厳しく制限している。美神を意味する「グレイス」ブランドのワインは、赤も白も、内外のコンクールでも高い実績を上げており、08年度は『グレイス甲州07年』が「国産ワインコンクール」で、栄えある金賞を獲得している。
試飲会を終えた後で、弟は「赤(メルロー)も白(甲州)も、中央葡萄酒が最も印象に残った」と言っていた。私もナンバーワンではなかったが、赤も白も9種類中、2番目にランク付けしていた。年商3億超の中規模ワイナリーが、大資本にも勝る味わいのワインを造り上げたことは、称賛に値すると思う。
振り返れば、これまで『神の雫』で取り上げた国産ワインは数えるほどだ。フランスが圧倒的多数のなかで、14巻目で初めて登場させた国産ワインがサントリー・登美の丘ワイナリーのトップキュベ『登美』の赤と白。日本の土壌では栽培しにくいといわれるカベルネ・ソービニヨンを中心にブレンドされた『登美』(赤)は、我々が初めて感動した国産ワインでもある。フランスの高級ワインに通底する複雑さ、エレガントさを兼ね備えていて、それだけに値段も高めだが、ボルドーの有名シャトーと比べても遜色ない味わいだ。
16巻では長野産シャルドネで造られたマンズワインの『ソラリス』をちらりと紹介した。ラベルに「樽仕込み」と記してあるだけに、バニラっぽい樽の香りが特徴的に感じられるが、果実味とのバランスもよく、シャルドネのワインとしては成功していると思う。
さらに、これから発売される18巻では、シャトー・メルシャンの『甲州きいろ香』という白ワインを紹介する。このワインは柑橘系のような独特の香りがあり、きいろ香という不思議な名前の由来とともに、我々の想像力をかき立てた。こういうドラマを感じさせるワインも、漫画のいい素材になるのである。
輸入ワインは船で揺られてくるぶん、どうしても年を取ってしまうが、国産ワインなら若くてイキのいい状態のものが飲める。そういう意味でも国産はオススメ。我々もこれからは「ニッポンの美味しいワイン」をもっともっと発掘しなくては、と考えている。
■今回のコラムに登場したワイン
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