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ニッポンの聖夜は“チョコとシャンパーニュ”が定番?

2009年2月18日

  • 筆者・亜樹 直

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(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第2巻(週刊モーニング連載中)

 もう過ぎた話になってしまったが、今年のバレンタイン商戦で配信されたネット酒屋のメルマガには、やたらと「チョコレートにはシャンパーニュ」といううたい文句が目についた。「聖夜に飲みかわす二人の酒はやっぱり泡」などといったキャッチフレーズで、炭酸ガスを添加した安いスパークリングワインから高級シャンパーニュまでが、時にはチョコレートとセット販売されたりしている。本家フランスでは、甘いデザートには甘いワインを組み合わせるが、日本ではなぜか“チョコに泡ワイン”が定番となりつつあるらしい。

「それって、チョコレートと甘口ワインの組み合わせを喜ぶ男が日本人にはほとんどいないからじゃない?チョコレートの濃厚な味を泡でサッパリと洗い流すほうが、日本男子の好みなんだよ」と、弟は言う。

 なるほど、それは一理ある。加えていえば、甘口ワインは生産量が少なく、あまり一般的ではない。それになんといっても、泡のワインはイベントやお祭り事によく似合う。あれやこれやの複合要素で、チョコと泡ワインの組み合わせが誕生したのだろう。

 さてバレンタインデーをさかのぼること数日、我々姉弟は、某デパートに講演会を頼まれた。講演のお題はまさに、チョコとシャンパーニュのマリアージュ。テタンジェの「ブリュット・レゼルヴ」、「ノクターン・セック」「キュベプレステージ・ブリュット・ロゼ」の3種類のシャンパーニュに似合うチョコをデパートの売れ筋から選び、その相性について語る、といった内容だ。

 ちなみに伝統的な生産者であるテタンジェのシャンパーニュは、クセのない上品な味わいが特徴である。白い花や蜂蜜の香りが特徴的なブリュット・レゼルヴは非常にスタンダードな正統派シャンパーニュで、夜想曲を意味するノクターンは、個性的な香りでほんのり甘口。そしてエレガントで繊細な香りと味わいをもつブリュット・ロゼ……。

 じつは、講演会にむけて試飲するまでは、「チョコと泡は、どんな組み合わせでも大差ないだろう」と思っていた。ところが、実際にこれらをさまざまなチョコと合わせてみると意外と「合う、合わない」が存在した。まず、ノクターン・セックのような香りの高い個性的な甘口には、同じように個性の強いチョコが合う。チョコにフルーツの味や香りがあっても、負けたりはしない。一方、ロゼのように繊細なワインに強い個性のチョコをもってくると、味も香りも負けてしまう。いろいろ試してみて、ロゼと一番相性がよかったのは、フランス会席レストランが展開する菓子ブランド「メゾン・ドゥ・イッテー」のトリュフ・オー・ショコラだった。このチョコレートは濃厚だが上品な味わいで、とろけるような優しい後味があり、ロゼの繊細で上品な味や香りと、素晴らしくマリアージュした。

 やはり、ワインの世界は奥深い。シャンパーニュとチョコレートにも取り合わせの妙が存在することは、新鮮な発見だった。ただ、チョコの味は食べてみないとわからないのが困りもの。無難なセンを狙うなら、果物など余計な味がついていないトリュフ型チョコの高級品がお薦めだ。これならどんなタイプのシャンパーニュでも、外れはなかろう。

 ……えっ? そんなこと、バレンタインデーが終わってから言われても困るって?

 ウーム、おっしゃる通り。では来月のホワイトデーに向けて、今度はクッキーとワインのマリアージュでも考えてみますか。

■今回のコラムに登場したワイン

  • テタンジェ「ブリュット・レゼルヴ」
  • テタンジェ「ノクターン・セック」
  • テタンジェ「キュベプレステージ・ブリュット・ロゼ」

プロフィール

亜樹直(あぎ・ただし)

講談社週刊モーニングでワイン漫画『神の雫』を執筆。これは姉弟共通のペンネームで、2人でユニットを組んで原作を描いている。時に、亜樹直A(姉)、亜樹直B(弟)と名乗ることも。このコラムを担当するのは姉の亜樹直A。2人で飲んだワインや神の雫の取材秘話など、ワインにまつわるさまざまなこぼれ話を披露していく予定。

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