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亜樹直姉弟、シャンパン騎士になる

2009年6月1日

  • 筆者・亜樹 直

マンガ拡大(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第13巻(週刊モーニング連載中)

 この5月、我々姉弟は、歴史あるシャンパーニュ・メゾン「テタンジェ」社の推薦で、ありがたくも「シャンパーニュ騎士号」を頂戴することになった。07年のボジョレーに続いて、2個めの騎士号である。

 騎士号といわれても多くの人はピンとこないだろうが、フランスにはワインの生産者が中心となった「騎士団」と呼ばれる組織がいくつも存在する。「シャンパーニュ騎士団」もそのひとつで、彼らはワインの普及・啓蒙活動の一環として、世界各地のフランスワイン愛好家や、ワインの販促に寄与した人たちに、騎士の称号を与えているのだ。まあ、平たくいえば功労賞みたいなものだろう。

 そのシャンパーニュ騎士号の叙任式が、先日、東京・日本橋のホテルで行われた。シャンパーニュ騎士団にはシュヴァリエ、オフィシエ、シャンベランの3段階の称号があり、私たちが頂いたのはシュヴァリエである。叙任のお仲間にはシャンパーニュ好きで知られる音楽家のYOSHIKIさんや、06年ミス・ユニバース2位の知花くららさん、デザイナーの小西良幸さんなどがいらした。

 ホテルの中にある教会で、ちょいと堅苦しい雰囲気の騎士号叙任式を終えた後には、恒例のシャンパーニュ一気試飲が行われた。式典の間はボーッとしていた頭も、美しい泡を見るとキーンとさえる。ペリエ・ジュエの「ベル・エポック」、テタンジェのフラッグシップ「コント・ド・シャンパーニュ」、ルイ・ロデレールの「クリスタル」、そして銘酒「サロン」の97年など綺羅星のような酒を次々と試飲したのち、騎士全員で祝賀ディナーになだれ込む。ちなみに炭酸入りスパークリングワインは、ビールと一緒でたくさん飲むとおなかがパンパンになるが、二次発酵で生まれたシャンパーニュの泡はおなかにたまらない。だから、たくさん試飲してもまだフルコースがおなかに入る。不思議なことである。

 さて、叙任式の祝賀ディナーはフランス料理のフルコース。魚料理は真鯛、肉料理は鴨だったが、おのおのの料理に添えられる酒はなんとすべてシャンパーニュだ。冷たいクリームスープやリゾットなどもあったが、それらもシャンパーニュとセットで運ばれてくる。シャンパーニュというのは実に融通の利く酒で、どんな料理にも「決定的に合わない」ということはあまりない。ブラン・ド・ブランと表示されるシャルドネ100%のものだけは、純粋でキレのいい酒質が際立っているため、合わせる料理を選ぶ。でもピノ・ノワールやピノ・ムニエを混醸したシャンパーニュは、肉にも魚にもよく合うと思う。実際、この日の料理とおのおののシャンパーニュの個性は、奇麗にマリアージュしていて、料理も酒もしっかりと堪能させてもらった。

 ただ――この日は騎士団の祭典なのでやむを得ないが、シャンパーニュだけでフルコースをこなすのは、実は結構ツライものがある。最初から最後まで赤ワインで通すのも、同じようにキツイ。料理とワインの組み合わせは、起承転結のドラマのようなものだ。入り口の「起」はシャンパーニュ、魚と白ワインで「承」に入り、肉と赤ワインで「転」のクライマックス、そして甘口ワインとデザートの「結」でシメる。ワインを飲む時、人はやはりこの一幕芝居のような食のドラマを体験したいものなのだ。と同時に、それができる酒は、赤、白、甘口、泡までがそろうワインだけなのである。

 私もまた、美しき泡に酔いしれながらも何か物足りなく、帰宅してから濃い赤ワインが飲みたくなったが……肝臓の負担を考えてやめておいた。騎士号も2個目になり、私もちょっとは成長したのかな(笑)。

■今回のコラムに登場したワイン

  • ペリエ・ジュエ「ベル・エポック」
  • テタンジェ「コント・ド・シャンパーニュ」
  • ルイ・ロデレール「クリスタル」
  • 「サロン」1997年

プロフィール

亜樹直(あぎ・ただし)

講談社週刊モーニングでワイン漫画『神の雫』を執筆。これは姉弟共通のペンネームで、2人でユニットを組んで原作を描いている。時に、亜樹直A(姉)、亜樹直B(弟)と名乗ることも。このコラムを担当するのは姉の亜樹直A。2人で飲んだワインや神の雫の取材秘話など、ワインにまつわるさまざまなこぼれ話を披露していく予定。

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