2009年7月23日
(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第9巻(週刊モーニング連載中)
週刊連載中の『神の雫』では、いま「新世界」のワインを中心に物語が展開している。新世界とは、15世紀以降にワイン造りを始めた、比較的その歴史の浅い国々アメリカ、オーストラリア、チリなどのことだ。フランスワインのマニアである我々は新世界ワインについては正直、まだまだ「飲み」が足りない。だからこの半年ばかりは、新世界ワインを買っては飲み、飲んでは買っている。レアものはレストランの在庫を譲ってもらったり、コレクターの方にお願いして試飲させてもらったり……。日本での流通量がフランス産に比べるとやっぱり少ないので、取材もなかなか大変なのである。フーッ……。
ところで新世界のワイン、とくにオーストラリアは、コルク栓でなくスクリューキャップが使われているものが多い。スクリューキャップとは、きゅっとひねっただけで空けられる金属のふたである。フランスではあまり見かけないが、オーストラリアでは、けっこうな高級品にも使われていたりするのだ。
実は私はこれまで、スクリューキャップに対してあまり良い印象をもっていなかった。ワインはコルクを通して酸素が行き来するから熟成するという説があり、スクリューキャップ=熟成の必要がない安ワイン=あまりおいしくない、というイメージがあったためである。だがオーストラリアでは、例えば「トルブレック・ウッドカッターズ・レッド」という、パーカー先生が毎年90点以上の高得点を献上している有名ワインも、スクリューキャップだ(ちなみに価格は2千円台)。ロンドンインターナショナル・ワイン・チャレンジのシャルドネ部門で優勝するなど数々の賞に輝くオーストラリア・シャルドネの最高峰、ルーウィン・エステートの「アートシリーズ・シャルドネ」に至っては、市価1万円近い高級ワインなのに、これまたコルクではなくスクリューキャップを使っている。アートシリーズのような高級ワインは熟成を前提に造られていると思うが、どうやら、「コルク栓でないとワインは酸素が行き来しないので熟成しない」というのがそもそも誤りらしい。メルシャン社のサイトにも「ワインは熟成に新たな酸素を必要とせず、ワイン自体の還元酸化によって熟成をする」とある。もしこれが事実なら、ワインにコルク栓をする必要性はなくなる。そもそも、コルク臭がワインに移る「ブショネ」のような事故が起きたり、抜くのに失敗してワインの中にボロボロになって落っこちたり、コルク栓のデメリットは少なくないのだから……。
反対に、スクリューキャップを使うメリットは多い。まず何よりも抜くのが簡単なこと。第二に、コルク栓は乾燥すると縮んですき間ができるので、湿度を保つべく瓶を横に寝かせて保存するが、スクリューキャップなら立てたままで問題ない。また、保存場所の湿度にもあまり影響されない。さらに、私がなによりも評価するのは、飲み残した場合の保存が楽チンなことだ。寝酒にワインをちょっとだけ飲みたい時など、スクリューキャップは実に重宝する。実は今もスクリューキャップのオーストラリア「ピーターレーマン・貴腐セミヨン」(2100円)を毎日寝酒にチビチビやっているのだが、甘口だから軽く1杯飲めば十分だし、密封できるから1週間たってもほとんど酸化しないのがうれしい。
このように、新世界ワインの取材をきっかけに、私はスクリューキャップに対するイメージが百八十度変わった。今では「フランスももっとスクリューキャップのワインを増やせばいいのに」と思うほどだ。
もっともひねるだけでカンタンに栓が開けられると、今よりもっと酒量が増えてしまいそうで、ちょっと恐ろしいのだが……。
■今回のコラムに登場したワイン
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