2010年1月7日
(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第4巻(週刊モーニング連載中)
昨年末、例によってワイン持ち込みOKの店に自分のコレクションをじゃんじゃん運び込んで、ワイン忘年会を何度となく繰り返した。いやぁ、飲んだ、飲んだ……。
しかし、こういう席では毎度、厄介な状況に遭遇する。そう――持ってきたワインが、開けてみたら岩のように閉じて硬く、飲めたもんじゃない状態になっている、のだ。
例えば、2000年産の硬派ボルドーワイン「シャトー・グリュオ・ラローズ」を開けた時のこと。そろそろ10年熟成になるのだから、さすがに飲み頃にさしかかっていると思いきや、硬くて渋くてピクリとも動かない。デキャンタしても、ほぼ変化ナシ。開いていれば素晴らしい味わいなのに、友人たちは皆、「この渋いワインのどこが美味いわけ?」という顔をしている。「これかなり渋いけど、閉じてるからで、本当はポテンシャルの高いワインで……」などと言い訳する自分が悲しい。まったく、固く閉じた赤ワインほど始末に負えないものはない。
そんな出来事の反動か、正月休みはワインを開かせるための道具がやけに気になり、いろいろと試してみた。面白かったのは、ドイツのガラスメーカー、アイシュ社のワイングラス。これはボウル部分の内側が特殊加工によって突起状になっているハイテクグラスで、ワインが空気と触れる面積が非常に多いため、デキャンタと同じ効果が得られるそうだ。グラスは一見しただけではデコボコがあるようには見えないが、渋めのワインを注ぐと、何分か後には硬さが徐々に解きほぐされ、まろやかな味に変わる。どのような加工が施されているのかは企業秘密で、メーカーHPにも明らかにされていないが、これならデキャンタの手間ひまもいらない。ただ、残念なのはネットでも売っている店がかなり少ないことと、値段がいささか高い(2脚で9千円超)という点だろうか。グラスは割ってしまえば終わりなので、もう少し安いとうれしい。
さて私は普段、グラスの注ぎ口に差し込むタイプのデキャンティングポアラーで固いワインを開かせている。手のひらサイズなので持ち歩きもラクで愛用してはいるのだが、開き加減がややマイルドな気がする。渋くて手ごわいワインに対峙した時は、もっと大胆に開かせる道具がほしい。そこで注目したのが、「スピンワイン」という注ぎ口差し込みタイプの道具。これをセットしてワインを注ぐと、ワインがくるくると渦巻き状に回転(スピン)して空気を巻き込むため、デキャンタ効果が得られる。試しに、イタリアの自然派ダリオ・プリンチッチが造る渋めの「カベルネ・ソーヴィニヨン97」を、開かせてみることにした。13年目をむかえたこのワインは、試飲したところまだまだ硬い。で、スピンワインを注ぎ口にセットしてグラスに注ぐと……。うーん、開いたという確証はないが、まろやかになったのは確かだ。さらに強力に開かせるべく少し高い位置から注いでみたが、くるくる回りながら落ちる赤ワインが、はねてグラスの外に飛び散ってしまう。赤ワインでこの道具を使う場合は、低い位置から注ぐほうが無難だろう。
その後時間があったので、プリンチッチのカベルネ97を、スピンワインを使いつつ腰を据えてじっくり飲んでみた。結果、やはり強靱なカベルネをきれいに開かせ、その本質にある優美さを引き出すためには、どのような道具を使おうとも、一定時間、空気にさらしておく方がいいように思えた。
人類の英知により、ワインを開かせる新兵器は、日に日にハイテク化してきている。が、硬くて渋いワインを本当の意味で美しく開かせるには、飲む人の“辛抱”が一番、効き目があるのかもしれない。
■今回のコラムに登場したワイン
肉まん、あんまん、餃子にシューマイ、春巻きにスイーツまで、人気の点心をお取り寄せ。こだわり厳選素材を使用した伝統の味が盛りだくさん。香りを楽しみながら蒸すもよし、レンジで手軽に楽しむもよし、家族みんなで飲茶タイムを過ごしてみては?
ふわふわのスポンジにたっぷりのクリーム、みんなが大好きな「ロールケーキ」。厳選した素材を使い、スポンジとクリームのみで勝負するもの、さまざまなアレンジやトッピングで華やかさを添えたもの、どれもこれも食べてみたくなる魅力的なものばかりだ。人気ロールケーキのこだわりの味を堪能しよう。