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コラム「おいしさ発見」

水茄子のいため煮〜エビと油、豊かな風味に〜

2007年07月04日

 大阪・堺の特産品、泉州水茄子(みずなす)は数年前からぬか漬けとして大変人気が出てきました。この漬けものをひとかみした時、皮も身も歯に触らぬ一体感のある食感に、だれもが驚かれたことでしょう。そして最近は、ぬか漬けだけでなく、生のものが八百屋の店頭に並ぶようになりました。

水茄子のいため煮 撮影・越田悟全

 この水茄子は「香りも少なく、味も素っ気もない。茄子本来の個性があまりない」と思う方もいるかもしれません。焼き茄子にするには頼りなく、天ぷらにするには水分が多くて扱いにくい。しかし反対に、皮が大変薄く、水分に富んでおり、香りの少ないぶん「癖もないので好みの味にしやすい」ととらえることもできます。そこで茄子と相性のよい油でいためてから、煮てみました。

 多めの油に干しエビと唐辛子を入れ、あまり高温にならないように火を加減します。そこに食べやすいように皮に包丁を入れた水茄子を加え、転がすようにゆっくりといためます。ここで、中まで火を通す必要はありません。茄子に油がなじんだら、かぶるくらいの出汁(だし)を注ぎ、煮立ったら余分な油をすくい取り、砂糖としょうゆを加え、落としぶたか紙ぶたをして、ことことと30分ほど煮ます。火を落としてから、煮汁が冷めるぐらいまでそのままにしておくと、よくなじみます。

 多めに作って、すぐに食べない分は冷蔵庫で冷やしておくと、夏の涼しげな一品になります。お好みで、青ユズをすりおろしてふっても、おろしショウガをのせて食べてもよろしいかと思います。もちろん、水茄子が手に入らなければ、ほかの茄子でも同様に油でいためてから煮てみてください。

(「重よし」主人)


レシピ

 【材料】(3、4人前)

水茄子3本、油大さじ2〜3、唐辛子半本、干しエビ5グラム、出汁600cc、砂糖小さじ1、しょうゆ大さじ1、好みでおろしユズ、またはおろしショウガ適宜

(1)茄子はへたを落として、食べやすいように皮に切り目を入れる。あく抜きするため、塩水にさらしておく。

(2)鍋に油を入れて弱火にかけ、エビと唐辛子を入れてじっくりと香りを出す。このとき強火にすると、焦げてしまうので気をつける。

(3)鍋に水を切った茄子を加え、鍋を揺らしながら茄子全体に油を回すように転がしていく。中まで火を通す必要はなく、皮全体を油膜で包むような感覚で。

(4)出汁を入れ、浮いてくる余分な油をすくい取り、砂糖、しょうゆを加える。落としぶたをしてことことと30分煮る。

(5)火を落としたら煮汁が冷めるまでそのままに。しんなりしたら、半分に切って盛りつける。

〈もう一品〉

 信州などで作られる夏の一品に、蒸し茄子があります。それにならって水茄子を蒸してみました。へたを落とした水茄子を20分ほど蒸し、冷蔵庫で冷やすだけ。ショウガじょうゆやからしじょうゆ、和風ドレッシングなどお好みの味でどうぞ。皮の軟らかさがおいしさです。



プロフィール

佐藤憲三(さとう・けんぞう)
1944年、東京生まれ。22歳で日本料理の道へ。27歳のとき、修業先の名古屋の店の名前をもらい、東京・原宿に「東京・重よし」を開店。

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