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コラム「おいしさ発見」

冬瓜の貝柱スープ煮〜貝柱のスープで青臭さ消す〜

2007年08月29日

 子どもの時分に、母親に体に良いからといわれた食べ物で、おいしいものはなかった気がします。その中に冬瓜(とうがん)がありました。いつもそぼろあんかけで、「夏に食べると中風にならない」といわれたものです。夏の多摩川のほとりに、真っ白く粉をふいた冬瓜がゴロゴロと転がるようにあったのを思い出します。

写真

冬瓜の貝柱スープ煮 撮影・越田悟全

 冬瓜は、和食では定番のかつお節と昆布の出汁(だし)で料理すると、どうしても皮肌に近い部分の青臭さが気になります。そこでショウガやユズ、七味などを補いますが、それでもたくさん食べたいという気になりません。

 ところが、この仕事に入った名古屋で、干しシイタケと冬瓜のお椀(わん)をいただいた時のおいしさは忘れられません。以来、冬瓜に興味を持つようになりました。乾物、または鶏など肉の濃厚なスープの力を借りると、冬瓜の癖を感じさせないことに気がついたのです。

 私どもでは、干し貝柱のスープを使っています。油でいためた冬瓜に酒をふり、スープを注ぎます。しょうゆで味を付け、揚げた生麩(なまふ)を加え、葛(くず)をひいてできあがりです。おそらく、干し貝柱を使うのは中華料理の手法なのでしょう。青臭さは気になりません。さらには、この冬瓜と揚げ生麩との食感の妙もまた、おいしさでしょうか。

 生麩でなくても、干しシイタケや油揚げ、岩手や宮城に古くから伝わる油麩、さつま揚げのような弾力ある食感のものなど、相性の良い食材が日本にはたくさんあります。

 もちろん、ご家庭で作るときは、戻した貝柱を加えることもお忘れなく。ぜひ一度、お作りになってはいかがでしょう。

(「重よし」主人)


レシピ

 【材料】(4人前)

冬瓜4分の1個(約600グラム)、生麩1本、貝柱のスープ500cc、日本酒50cc、しょうゆ大さじ1、油適宜、くず粉小さじ2

(1)冬瓜の種部分と皮を切り落とし、厚さ1センチほどに切りそろえる。

(2)生麩は一口大に切り、中温の油で素揚げしておく。

(3)フライパンまたは鍋を熱し、油を加え、中火で冬瓜をいためる。全体に油を回すような要領でよく、完全に火を通す必要はない。

(4)日本酒をじゅっとふってから、貝柱のスープを注ぐ。しょうゆを加えたら、中火のまま冬瓜に火が入るまで煮詰めていく。途中で揚げた生麩を加える。

(5)冬瓜が透明になって火が入ったら、味をみて、足りなければしょうゆを加える。甘みがほしければ少量の砂糖(分量外)を加え、水溶きしたくず粉を全体に回しかけて、火をとめる。

<貝柱のスープ>

ホタテの干し貝柱50グラムを水600〜700ccに漬け、一晩おく。翌日、そのまま弱火でひと沸かしして、冷めるまでおいておく。店では貝柱をこして、スープだけを使っているが、ぜひ、貝柱も一緒に使ってください。



プロフィール

佐藤憲三(さとう・けんぞう)
1944年、東京生まれ。22歳で日本料理の道へ。27歳のとき、修業先の名古屋の店の名前をもらい、東京・原宿に「東京・重よし」を開店。

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