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コラム「おいしさ発見」

筑前煮〜ゴマ油で味封じ込め〜

2007年10月17日

 新米をはじめ、里のもの、野のものが次から次へと出盛る秋となりました。苦みを特徴とする春の野菜と異なり、甘みのある土の中のものがおいしくなってきます。今回は秋の筑前煮をご紹介します。

写真

筑前煮 撮影・越田悟全

 本来、筑前煮はコイ、ナマズ、コチなど魚肉と野菜をいため煮にしたものですが、最近は鶏肉を使うことが多いと思います。しかし鶏肉を加えずに野菜だけで作ったものも大変結構です。

 新の里芋は小ぶりのものを選ぶと、包丁を使わずネットなどで皮をきれいにむくことができます。またレンコンは6月ごろのはしりのものと違い、粘りが出て一段と甘さを増します。新ニンジン、ゴボウなどを好みの大きさに切り、硬い順にゆでて水にさらします。キノコ類を入れてもよいでしょう。

 香りの少ないゴマ油で焦げないようによくいためます。油を使うのは、それぞれの野菜が持つ香り、甘さといった持ち味を封じ込める良いやり方だと思うのです。

 次に、出汁(だし)は使わずに酒をひたひたに入れ、酒のにおいが取れたころ、みりん、しょうゆを加え、じっくりと煮込んでいきます。

 煮汁がなくなるまで煮詰めあげていくと、表面がきらきらとつやが出て、見るからにおいしそうな美しい筑前煮になります。盛りつけてから、塩ゆでしたギンナン、インゲン、甘く煮た栗などをパラパラと散らすと、見た目も鮮やかです。

 一鉢の料理の中に秋の訪れが感じられます。このように季節を味わえ、表現できる日本の料理のよさと楽しさを、ご家庭に生かしていただけたらと思います。

(原宿「重よし」主人)


レシピ

 【材料】(4人前)

ゴボウ半本、レンコン150グラム、ニンジン1本、里芋(小粒)10粒、コンニャク200グラム、干しシイタケ(小さめのもの)5枚、インゲン10本、ギンナン10粒、酒450cc(ひたひたになるよう、量は加減)、しょうゆ20cc強、みりん15cc、ゴマ油適宜

(1)ゴボウは皮を包丁でこそげ、レンコン、ニンジンは皮をむいてそれぞれ乱切りにする。里芋は皮をむく。

(2)鍋に湯をわかし、ゴボウ、里芋、ニンジン、レンコンと順番に入れ、下ゆでして、水にさらす。

(3)コンニャクは湯であくぬきし、縦に三つに切ってから手でちぎる。

(4)干しシイタケは水で戻し、半分に切る。

(5)インゲンとギンナンは、海水程度の濃度(3%)で塩ゆでし、ざるにあげて冷ましておく。インゲンは食べやすい大きさに切る。

(6)鍋にゴマ油を適宜敷き、野菜、コンニャク、シイタケを入れ、いためる。

(7)油が回ったら酒をひたひたに入れる。煮立ててあくをすくい、酒のにおいが飛んだら、みりん、しょうゆを加え、弱めの中火で落としぶたをして煮る。

(8)煮汁が少なくなってきたら、しゃもじでかきまぜるか鍋を動かして煮詰め、てりを出す。

(9)器に盛りつけ、インゲンとギンナンを散らす。あれば、栗の甘煮をのせてもよい。



プロフィール

佐藤憲三(さとう・けんぞう)
1944年、東京生まれ。22歳で日本料理の道へ。27歳のとき、修業先の名古屋の店の名前をもらい、東京・原宿に「東京・重よし」を開店。

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