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コラム「おいしさ発見」

牛肉のビール煮〜「ほほえみ」加減で軟らかく〜

2007年10月24日

 牛肉をビールで煮込むのは、フランス最北端、ベルギーと国境を接するフランドル地方の郷土料理です。

写真

牛肉のビール煮 撮影・越田悟全

 鶏の赤ワイン煮を以前、紹介しましたが、この地方はブドウ栽培の北限を越えており、ワインよりはビールの土地柄です。そこで肉を煮る際もビールを使ったのでしょう。ノルマンディー地方ならば、シードル(リンゴ酒)で煮る料理が登場します。酒を使い、肉を煮込む発想は共通でも、どんな酒が身近だったかで違いがある。面白いことだと感じます。

 ベルギービールのこくがあるタイプを使ってください。ホップの苦みとタマネギの甘みが一体となり、おいしさを生み出します。一度日本のビールで試したこともあるのですが、苦すぎる仕上がりで、うまくいきませんでした。

 肉とタマネギのシンプルな料理ですから、タマネギをいためる手順が肝心です。オニオンスープの要領で、茶褐色になるまで30分ほど根気よく。鍋の底や周囲に焼けた汁が茶色くついてきたら、水を少量加えてへらでかき落としながら混ぜ続けます。

 肉を加えた後、小麦粉をふるのは、よく煮込みで使う手法です。ソースにとろみをつけ、肉をぱさつかせない効果があります。

 肉がやわらかくなるまで約2時間。とろ火でポツポツと表面に空気が上がってくる程度の火加減で。「ほほえむように煮る」と表現します。水分が減り、肉がソースから顔を出し始めると、焦げやすくなるので注意を。煮くずれしないよう、へらを鍋底にあてゆっくりと中心へ動かし、焦げを防ぎます。

(「ル・マンジュ・トゥー」オーナーシェフ)


レシピ

【材料】(4人前)

牛肉1キロ(かたまりか角切り、部位は問わない)、タマネギ700グラム(3個分程度)、ベルギービール1.5リットル、無塩バター80グラム、小麦粉15グラム

(1)牛肉に軽く塩をふり、一晩おく。

(2)フライパンに植物油を適宜敷き、牛肉においしそうな焼き色がつくよう焼く。かたまり肉の場合は、焼いた後に適当な大きさに切り分ける。

(3)タマネギは皮をむき、繊維と平行に薄切りにする。

(4)深い鍋にバターを溶かし、タマネギを茶褐色になるまでいためる。

(5)牛肉を鍋に加え、小麦粉をふり、ざっくりと合わせる。

(6)ビールを注ぎ、肉がやわらかくなるまで2時間ほど煮込む。

〈もう一品〉

 フランドル地方やベルギーでよく作られている野菜、アンディーブのサラダ。アンディーブは2株用意し、葉をはがして3センチほどに大きくカットする。ボウルにマスタード20グラムと酢10ccを入れて合わせ、オリーブ油20ccを少しずつ加えながら泡立て器でしっかり混ぜ合わせ、塩、コショウで味を調える。このドレッシングで、アンディーブをあえる。あれば香りづけにクルミ油を数滴かけるか、からいりしたクルミを振る。



プロフィール

谷 昇(たに・のぼる)
1952年、東京生まれ。18歳から料理の道へ。37歳で2度目の渡仏。アルザス地方の三つ星店「クロコディル」で修業。96年から東京都新宿区の「ル・マンジュ・トゥー」のオーナーシェフに。

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