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コラム「おいしさ発見」

ねぎま2種〜マグロのうまみを汁に〜

2007年12月26日

 冬から春にかけ、築地市場でカジキマグロの腹身に出合うと、一人でねぎま鍋を肴(さかな)にビールを飲んでいた父を思い出します。

写真

ねぎま2種 撮影・越田悟全

 私が店を始めてまもなく、静岡県の清水からおみえの網元から、おかずで食べなさいと、インド洋のモーリシャス周辺で取れた冷凍の赤身をたくさんいただきました。メバチ、キハダ、ビンチョウマグロなど。刺し身で食べるのはもちろん、思いついたのがねぎま鍋でした。

 まず、マグロをたっぷり入れ、ネギと豆腐を煮て堪能しました。次の日は、ネギを鍋に敷き、薄めに切った赤身をたっぷりとのせ、濃いめのしょうゆ味の出汁(だし)をはり、火にかけて卵を溶いたねぎま鍋にしました。その時、マグロの赤身は生、冷凍に限らず、淡泊でありながら、使い勝手のよいものと知りました。脂肪のない分、少々煮立っても生臭さが出ないという利点があるからです。

 ある時に赤身をたっぷり使い、さいころに切り熱湯で霜降りをしてスープを取ってみました。それは想像を超えた品のよい香り、上質のコンソメのような豊かなスープに仕上がったのです。淡い塩味に少量のしょうゆを加え、このスープだけをお客様にお出ししたところ、何であるかわかる人はいませんでした。

 これが後々の私の献立のヒントになりました。具を何も入れないスッポンのスープ、秋には山のシメジでとったスープに卵を溶き、具は何も入れない茶碗(ちゃわん)蒸し。これらの料理には、口にした方が何だろうかと想像をかきたてる楽しさがあり、それがわかった時には喜びにもなるような気がするのです。

(原宿「重よし」主人)


レシピ

〈ねぎま鍋〉

【材料】(4人前)

マグロ(さく)200グラム、長ネギ1〜2本、卵2個、煮汁(酒360cc、しょうゆ25cc)

(1)マグロは厚さ1センチ弱にそぎ切りする。長ネギは、鍋が深ければぶつ切りに、浅ければすき焼きのように斜めに切る。卵は溶いておく。

(2)鍋に長ネギを敷き詰め、その上にマグロを並べる。煮汁をひたひたに注いで中火にかけ、煮立ってきたらあくをすくう。

(3)アルコール分が飛んで火が通ったら、溶き卵をまわしかけ、ふたをして火をとめ、余熱で蒸らす。粉サンショウ、七味、一味をお好みで。

〈ねぎま汁〉

【材料】(4人前)

まぐろ赤身200グラム、長ネギ1本、豆腐1丁、水720cc

(1)マグロはサイコロに切り、熱湯にくぐらせて冷水に落とす。長ネギは2センチ程度のぶつ切りにする。

(2)鍋にマグロを入れ、ひたひたより多めに水をはる。強火にかけ、ふつふつとしてきたら火を弱める。スープが濁るので、煮立たせない。

(3)魚のよい香りがしてきたらスープが出ている。塩小さじ1、しょうゆ15ccを加えて吸い物の加減に調味し、長ネギと奴(やっこ)に切った豆腐を加える。

〈追記〉マグロは種類を問わず、生、冷凍いずれでも構わない。冷凍物は解凍したらすぐ使うこと。



プロフィール

佐藤憲三(さとう・けんぞう)
1944年、東京生まれ。22歳で日本料理の道へ。27歳のとき、修業先の名古屋の店の名前をもらい、東京・原宿に「東京・重よし」を開店。

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