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コラム「おいしさ発見」

蛤大根〜蛤さっと煮 食感生かす〜

2008年02月20日

 時に、著名な作家の方々が、食べるものにまつわる随筆を書かれることがあります。家に代々伝わるもの、郷土の料理、自分で作ることが好きな人の話など、大変興味深く読んでいます。

写真

蛤大根 撮影・越田悟全

 この中に、私には宝物のようなヒントがたくさん埋まっているように思います。池波正太郎氏の本の中で、あさりのむき身と千切り大根を煮るというくだりを読んだ時、すぐ作ることにしました。あいにく、あさりがなかったので蛤(はまぐり)をむき身にしてやってみると、想像以上の味と食感に驚きました。以来、蛤大根として献立にのせています。

 東京湾の蛤は非常に質の高いものです。35年ほど前から姿を消してしまいましたが、昨年ぐらいから再び少しずつ市場に出回り始めました。肉質軟らかく、貝臭さがなくツルンとしたぬめりのある蛤と、大根の千切り、浅草のりと来れば江戸前料理そのものです。

 まず煮立った煮汁に千切り大根を入れ、再び沸騰したところで蛤のむき身を加え、火の通ったところで盛りつけ、汁を張って、もみのりをかける。大切なのは、決して煮すぎてはいけない、ということだけです。お好みで七味、柚子(ゆず)などを利用するとよいでしょう。

 またゆっくりお酒を飲みながらという人は、小鍋立てにするのも良いと思います。小鍋に煮汁を入れ、大根と蛤を交互に寄せ鍋のように少しずつ入れて召し上がれば、これこそ真の大人のぜいたくというものでしょうか。

 大根の皮は決して捨てません。油揚げと一緒に煮る、漬けもの、干して切り干しにと用途はたくさんあります。

(原宿「重よし」主人)


レシピ

【材料】(4人前)

 蛤600グラム(1個30グラムで20個)、大根1キロ(約半本)、だし1800cc、しょうゆ90cc、のり適宜

(1)蛤を貝から外してむき身にする。生で難しいなら、鍋に入れ少量の酒(分量外)をかけて火にかけると、口を開けるのですぐに火をとめて身を外す。

(2)大根は千切りにする。だしを沸騰させてしょうゆを落とし、煮汁を作る。

(3)鍋に煮汁を入れて火にかけ煮立て、大根を入れる。再び沸騰したら蛤を加え、身に火が通ったらすぐ器に盛りつける。食べる直前にのりを散らす。

 11月から3月まではイカのワタが大きくおいしい。スルメイカで塩辛を。

【材料】

 スルメイカ2、3杯、塩適宜、柚子の皮5センチ分

(1)イカの足とワタを胴から外す。

(2)墨袋を除き、足を切り、薄皮がついたままワタを水洗いした後、塩を広げたバットの上に置き、塩をまぶしつける。ざるに並べ冷蔵庫で2時間ほど置く。

(3)胴は耳を外し皮をむき、共に塩焼きぐらいの塩を両面にふり約1時間置く。水洗いし水気をふき、ざるなどに並べ約2時間干す。水気が手につかない程度に乾いたら、短冊に切る。

(4)ワタを冷蔵庫から出し、水洗いをして水気をふき、裏ごしする。

(5)(3)と(4)を合わせ、柚子の皮を加え冷蔵庫へ。翌日柚子を除き味をみて塩を足す。時々混ぜて1週間後が食べごろ。

※足は吸盤を取り、胴と同様に下処理して使うか、別の料理にしてもよい。



プロフィール

佐藤憲三(さとう・けんぞう)
1944年、東京生まれ。22歳で日本料理の道へ。27歳のとき、修業先の名古屋の店の名前をもらい、東京・原宿に「東京・重よし」を開店。

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