現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 食と料理
  4. コラム
  5. おやじの昼めし
  6. 記事

おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

巨大なから揚げ 日本橋「南ばん」

2010年7月6日

  • 筆者 京橋玉次郎

写真   写真   写真   写真   

カラリとした逸品

 自分の握りこぶしをならべてみた。さすがに私のそれよりわずかに小さいが、カツのようにでかい。食べやすいように2箇所切れ目が入っている。外側はカラリとしているが、中のモモ肉は柔らかくジューシー。紛れもなくから揚げだ。あちこちでから揚げを食すことがあるが、ここのそれは迷わず三指に入る逸品だ。

 「ニコサンコ」、「イッコラーメン」などと、暗号のように注文する客が多い。ニコサンコとはから揚げ2個と揚げ餃子3個の定食、イッコラーメンとは推察の通りから揚げ1個とラーメンのこと。一番人気の「ニコテイ」はから揚げ2個の定食らしい。から揚げは1個250円、揚げ餃子は3個で180円。

2個と餃子は無理だったか

 から揚げが大きいということは覚えており、ニコテイを食して満足した記憶もあるが、どの程度までだったか細部は忘れてしまった。とりあえず店長おすすめと書いてあったので今回はニコサンコを頼んでみる。おばちゃんは貧相な体躯を懸念してか、「イッコサンコでも出来ますよ」と、確認してきたが、初志を貫いた。

 とにかくから揚げは量が多いので、終わりのほうは正直飽きてきた。胡椒をかけて刺激をしたがやはり物足りない。かといってソースやしょうゆをかけるのも気がすすまない。ついてきた漬物や小鉢のポン酢をかけたモヤシなどで口直しをしつつそのまま食べ続けた。漬物とスープと小鉢もつき、ここの定食のCPは抜群だ。

郷愁の狭い路地

 日本橋高島屋の裏側の路地。表通りは華やかで明るいが、ちょっと裏へ回ると昭和の香りを詰め込んだような、味わい深い地味な風景が残っている。こうした路地に入ると、なぜか心和み、そこはかとない郷愁すら覚える。南ばんはそんな狭い路地にある、厨房のおやじさんと給仕のおばちゃんの二人だけの小さな食堂だ。いかにも庶民的。

 カウンター6、テーブル席8。油や湯気が飛ばないようにか、カウンターの向こうの厨房は透明のビニールで仕切ってある。Tシャツにエプロン、タオルで鉢巻をした大柄なおやじさんは見たところ結構な年配だ。四捨五入すれば70歳か。一人で揚げ物からラーメンまで作っている。

7個のタイマーを駆使

 みていると一人でいかにも急がしいのだが、どっこいこのおやじさん意外に手際がよい。壁にかけてある7個のデジタルタイマーを駆使してよどみなく注文をこなしてゆく。ピッピッ、プップッと時折合図の電子音が鳴る。すっと手を伸ばしてタイマーを止め、何事もなかったように仕事を続ける。

 親の店をそのまま続け、厨房に立ち続けてきたそうだ。気難しそうだが話しかけると「ハハ、もう定年だよ」と気さくに笑った。かたや鶏を揚げ続けて40余年、一方は活字相手に苦闘30余年。それも人生これも人生。おやじさんがいなくなったらこの店どうなるのだろう、などと一瞬思う。しかしすぐに思い返した。そんな明日のことを心配するより、人生の先輩が平然と頑張っている今を応援しよう。

【お店データ】

南ばん

中央区日本橋2−6−11 〈地図〉 03−3271−9283

営業:〔平日〕午前11時〜午後4時

日祝休み

<本日食したランチ>

2個3個定食 800円

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 週2、3回のジム通いで運動不足を解消中。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀中心の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。元大手マスコミに勤務、不規則・不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。1946年生まれ身長175センチ、A型。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介
  • 大人のためのグルメガイド 豊富な店舗情報やたくさんの料理写真で行きたいお店がよくわかる。

フード・ドリンク

写真

夏にピッタリのさわやか冷酒(7/6)

「夏はビール」だけじゃない! 今年の夏は、伝統の吟醸酒や新感覚の発泡酒など、全国の冷酒を極めてみてはいかが? 食前、食後、そしてデザートに…。日本酒ツウも初心者も、さわやかな冷酒を味わって、日本の味を再発見してみよう。

写真

暑い夏に食べたい、ひんやりおいしいこだわりゼリー(6/29)

ひんやり、ぷるるん!! 大人も子どもも大好きな、ゼリーの涼しい口当たり。いつもの味にちょっと飽きてきたら、こだわりの極上ゼリーをお取り寄せしてみてはいかが? うだるような暑い夏も、こだわり果汁や極上コーヒーがぎゅっと詰まったゼリーたちを食べれば、うっとり幸せな気分で忘れられそう…。