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おやじの昼めし 京橋玉次郎のお品書き

清流が香る鮎 上州「利根川・綾戸簗」

2010年7月13日

  • 筆者 京橋玉次郎

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期間限定の風流

 所要で出かけたついでに利根川上流の簗(やな)に寄った。正確に言うと、用事があったらついでに綾戸の簗に寄ってみようと、数年前から思っていた。坂東太郎と呼ばれる大河・利根川も、河口の銚子から250kmほどさかのぼったここ渋川市と沼田市の境目あたりでは、水も冷たい渓谷の清流となる。この清流に仕掛けた簗でとれる鮎を食せるのが綾戸簗だ。

 営業するのが6月末から落ち鮎のとれる9月下旬までという期間限定3ヶ月。人里から遠く離れ、緑に囲まれた秘境の趣。建物は周囲をよしずで張っただけの、海の家のような素朴な作り。そんな川風が吹きぬけるつくりは、京の鴨川などの川床ほど洗練されてはいないものの、風流の点においては似たものがある。

ほろ苦い女王

 食したのは塩焼き2尾、田楽1尾、漬物、鮎こく、ご飯がセットの竹定食3400円。単品で活き造り1尾1100円を追加した。安くはない。しかし、ロケーションと期間限定を考慮すれば安いか高いかは簡単には結論は出せない。ちなみに塩焼きは単品だと2尾1700円。定食は特5000、松4200、梅2700円。

 やはり鮎は塩焼きだ。頭からがぶりと噛み付く。海魚の焼き物とは違った素朴なさっぱりとした味わいがある。とりわけ、ほの甘いようなワタの苦味がなんとも言えずうまい。秋刀魚などもうまいが、コケだけを食べて大きくなるゆえか、鮎は苦味にすら気品があり、川魚の女王といわれるのも納得。田楽もうまいし活き造りも悪くない。

強烈な珍味うるか

 鮎のワタを塩辛様にしたものを「うるか」と呼ぶらしい。品書きにあったので500円というそれを頼んでみた。小鉢に親指の頭ほど出てきた。熟成3年だそうだが、さてこの味をどう表現するか。苦い。苦いのは好物だから驚かないが、加えてひどく渋い。渋柿の3倍くらいの渋さで、口中全体に2ミリくらいのコケが生えた感じがする。なかなか味わうことの出来ない珍味らしいが、再訪があっても多分次は注文しないだろう。

 全てをしっかり堪能して、座布団を枕にゴザの上に大の字になる。目を閉じる。座っているときは気がつかなかった川面の涼風が、赤松の枝越しに渡ってくる。この瞬間こそが簗以外では味わえない至福の一瞬だ。うっとうしい人との関係も雑事も財布のことも、つかの間別世界の出来事となる。

利根川水系では1番か

 帰りがけ、ちょっと奥を見学する。おじさんが真っ赤におこった炭を相手に鮎を焼いている。生きたまま手早に串を打ち、まな板にならべて一塩を振り、炭の周りに串をぐるりと立ててゆく。胸ビレがぴんと張っているのは「生きたまま焼いた証拠」だそうだ。今度観光地の塩焼きを注意して観察してみよう。

 簗も見物したが、漁は夜や朝に限られるらしく、魚は上がっていなかった。心和む風景の中で、心行くまでうまい鮎を食すのはなかなか得がたい機会だ。利根川は下流の渋川市内に2箇所ほど簗があり、それらはタクシー等も利用でき便利だが、風情の点では最上流の綾戸に軍配が上がりそうだ。

【お店データ】

綾戸簗

群馬県渋川市赤城町棚下492 〈地図〉 0279−56−3339

営業:6月26日〜9月23日頃。

午前11時〜午後7時30分。LO午後7時。

    期間中は無休

<本日食したランチ>

竹定食 3400円と活き造り 1100円。

プロフィール

京橋 玉次郎(きょうばし・たまじろう)

 週2、3回のジム通いで運動不足を解消中。京橋・銀座・日本橋・八重洲・八丁堀中心の雑食的な昼めし散策のほか、天気のよい日に肩の力を抜いてサイクリングに出かけるのも楽しみ。元大手マスコミに勤務、不規則・不健康な記者生活36年だった。好奇心強く少し天邪鬼。1946年生まれ身長175センチ、A型。

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